仁川路朱鳥詩集

仁川路朱鳥

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高3後半

過ぎ去った地層より

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括る両手を隠して膜を破った
新天地は風の如く
太陽が殺す 身を隠して夜
見知った風の如く

太陽に酔わされた 私は熱射され
月の光が暗くて仕方がない
人間の心臓を聞き 私は惑わされ
赤い光が怖くて仕方がない

帰りたくなんてなかった なのに
今もかかる縄が戻そうとする
このまま熱中症でありたい
このまま太陽に殺されたい

でも できれば私の半身の心を
読み取れればよかったのに生憎
私に心臓は無くて
空間だけを持て余して星のない夜
彼は今も泣いている

このまま太陽に殺されたい
このまま太陽に生かされたい
生きていたい 息をしたい
青の瑞々しさを味わいたい

幼い願いもすぐ覚める
片割れは今も泣いている
そばにいて欲しかっただけだと
気づいて私も涙した

差し出してはくれないか
死出の旅路に向かう私の
私の亡骸の目玉をどうか
片割れに捧げてはくれないか
私の夢/命もすぐ覚める
過ぎ去った地層より。

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