仁川路朱鳥詩集

社会人(成人)

Equinoxはまだ来ない

アンタレスの味は
サクランボ、
ベテルギウスなら
サイダー、

一般的な性質として、すべての星には
味があります
一般的な性質として、すべての存在には
味があります
私たちの中には、小さな私たちがいて
それもまた同様に
味があります

あたりまえになった技術の前では
魔術はかやのそとに出されては
根拠がないと笑われては
地層へと変換された
旧きを追い出しては新しきを喜びて
延々と繰り返される所業には
ある言葉を引用します
「単純発生は、系統発生を繰り返す」

植物は自分の一部を
喉へと、血管へと変えて
意図的に枯らした部分で
地面に接地する

陸に上がらなければ
足を使わなければ
自由など手にしなければ
一位を取らなければ

新しい、
を知ったせいで苦しいなら
植物に戻してほしかった
私たちには神はいなくて
信仰とは工場的な偶像で

ねえ、私たちはどこで道を間違えたのですか
絵画的な太陽にあったものはなくなって
ねえ、私たちの真実はどこに隠れていますか
すべてが存在していないようで
すべてが有るようで
この食い違いに酔いかけて
それでも喉が乾くから
それでも水は欲しいから
天の川を飲んでいる
200色以上の血が
私を満たしています

そこに私の血を流せば
私も天の川になる
天の川は私の血を
おいしいと言うだろうか

──このように、すべての光、とりわけ恒星の星を食料に変換する試みは成功いたしましたが、それがかえって二分心の時代への退化、精神の破綻、邪神召喚へと繋がり、人類社会は破滅しかけています。
いや、これは予期されたことであるのかもしれない。植物は自分の組織……葉を枯らすことでさらに伸びようとすると言われている。
私たちは大きな時代の中にいるし、その中でもいずれ枯らされる土台かもしれない。
いまや春秋分点も痴呆の一途を辿り、きょうの季節も法則性が定まらない。よく言うものですね、「単純発生は系統発生を繰り返す」とは。

わたしの生きる世界のように
ならないためにも
イクイノックスがまた来れる
世界を築くためにも
どうか健康であってください