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第一章
魂の色
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時間になり、私達は王宮へと参じる。
いつもより出迎えが優しい。
目でキースに訴えるも、力なく首を横に振るだけ。
私は絶対に聖女に認められるから、安心して欲しいという意味らしい。
違うのよ。私は認められたくないの。
と、口には出さずに愛想笑いをしておく。
朝からカイザー様は不機嫌。友愛がずっと泣いてるから。
どうしたの?って聞いてあげるべき?
でもな。話しかけられたらカイザー様に怒鳴られそうだし。
友愛は友愛で構ってオーラが強い。
私じゃなくて隣にいるカイザー様に頼んで。お願いだから。
今日はギャラリーいるんだ。
王族派。貴族派。神殿。わかりやすく派閥別に分かれて。
前回と違い今回は陛下と王妃様も出席している。
そりゃそうだ。今まではシェイドの加護を受けている私が聖女だと言っていただけで、正式に神殿から認められていたわけではない。
それが今日、たった今から神殿によってどちらかが本当に本物だと認められる。
国のトップとしてその場に居合わせないなんてありえない。
カイザー様が不機嫌な理由って、両親揃って怒られたことも関係してる?
前回はほぼ確実にカイザー様の独断であの場は設けられていたから。
後から耳にした二人にこっぴどく叱られても自業自得。
「まず初めに」
神官長は胸に手を当て深く頭を下げた。
「コトネ様が本物の聖女であると知りながら、このような茶番に付き合わせてしまったことお詫び申し上げます」
「知っていた?」
「はい。バルク家は代々、魂の色が見えるのです。コトネ様は何色にも染まる透明色。ユア様は……目を背けたくなるような純黒」
空気がザワついた。
神官長の言葉には責任が生じる。嘘でないとわかっているからの反応。
事態がややこしくなる前に帰してもらえないだろうか。
聖女認定されたくない。
国の王子が友愛こそが聖女だと言うのだからそれでいいじゃん。
表舞台には友愛が立って、私は日の当たらない場所からこの国を支えられたらいい。
私はもう元の世界には帰れないのだ。だったらみんなが住みやすいように力ぐらいは貸す。
自主的にではなく頼まれたら。
国民が求める人こそ聖女。その辺の融通は効かせてくれてもよくないですか?
魂の色はその人間を表す。
普通はどんな人も色付けされているらしく私のように透明なのは珍しく、同様に形さえ見えないほど真っ黒なのは人としてありえないと最早言葉を失っていた。
人でなければ何なのか。
今のは言葉の表現にすぎない。
だって人じゃなかったら、それこそ度肝を抜かれる。
「お待ち下さい神官長!!ユア様には聖女の証、蓮の紋章が現れたと聞きます!!」
数いる神官の中から一人が前に出て恐れ多くも発言した。
それは私も気になっていた。
友愛はいつシェイドから加護を受けたのか。
受けていないのならあれは何だったのか。
ここにいる何人かは目にしている。神官長だって。
神官の勘違いや見間違いでは説明がつかない。
「偽物に用はない」
それだけだった。
以降、神官長は友愛にもその神官にも見向きもしない。私から目を逸らさない。
淡々と言葉を述べる神官長に私もどうするか悩んでいると、さっきの神官が諦めもせず問い詰めた。
最初から本物を見抜いていたのに二日もかけて何をしていたのかを。
それもそうだ。今回の出来事を茶番だと認めた。
──神官長には別の目的があった?
沈黙を貫く神官長に痺れを切らせた神官は、愚かにも言ってはならないことを口走った。
「ユア様とカイザー殿下を陥れるために貴族派に協力しているからですか!!?」
「私がいつ君に発言を許可した?」
声だけでも怒りが伝わってくる。
短剣を鞘から抜き素早く神官に突き立てた。
わざとらしい友愛の悲鳴にもいい加減気付く。驚いた瞬間に近くにいる男性へのさりげないボディタッチ。
ほんと、少し前までの私はあれが当たり前なのだと友愛の可愛さに心酔しきっていた。
カイザー様の鼻の下は伸びて視線はやや胸元。
──この状況でそこ見るかのかぁ。
いや、まぁ……ちょっと胸元を強調したドレスだから胸を押し付けられると自然と目がいくのかもしれないけど、時と場所は考えて。
その逆に神官長は無表情で刃先を喉に押し込んでいく。僅かに血が流れてもお構いなし。
待って。本気で殺そうとしてない!?
周りの止める声も耳に入っていなかった。
王族派や貴族派の言葉でやめたら、その派閥に加担していると誤解を招く。
陛下が止めないのはこれが神殿のやり方でもあり、神殿の領分だから。
でも、神殿の言葉なら聞いても問題ないはず。
こんなときに神官長の噂を思い出した。
生きたまま人を焼いたのはあながち嘘じゃないかも。
「神官長……ミハイル様!!剣を収めて下さい!!」
「承知致しました、コトネ様」
私に従った。つまり神殿は派閥ではなく聖女につくってこと?
やめてくれないかなそういうの。
神官長も、やっと名前を呼んでくれたとちょっと嬉しそう。呼んで欲しかったの名前。
【コトネを困らせた~!!】
サラマンダーが大きく息を吸う。炎を吐くとかじゃないよね!?
この姿は私が想像した仮の姿。本物はトカゲみたいな大きい姿じゃなかった?
そもそも人に向かって炎を吐いたらどうなるの。
丸焦げになるんじゃない?
最悪の未来が浮かぶ。
「ダメ!!」
勢いよく吐き出そうとするのを止めると、私は注目の的となった。
突然、大声出せばそうなる。
口に溜まった炎をゴクンと飲み込み、私に怒られたと勘違いして泣き出した。
他の三匹にも笑われてからかれる。ついにはこの場からいなくなってしまった。面倒事が起きなくて助かるからいいけど。
本気で悲しそうな泣き顔に罪悪感が生まれる。
後で謝ろう。
「なぜ茶番を続けたか、でしたね」
私に集まった視線が全て神官長に移った。困らないように助けてくれたのか。
目を細めて微かに笑った。それが不敵すぎるのに映画のようなワンシーンにドキっとした。
「裏切り者を炙り出すためだ」
いつもより出迎えが優しい。
目でキースに訴えるも、力なく首を横に振るだけ。
私は絶対に聖女に認められるから、安心して欲しいという意味らしい。
違うのよ。私は認められたくないの。
と、口には出さずに愛想笑いをしておく。
朝からカイザー様は不機嫌。友愛がずっと泣いてるから。
どうしたの?って聞いてあげるべき?
でもな。話しかけられたらカイザー様に怒鳴られそうだし。
友愛は友愛で構ってオーラが強い。
私じゃなくて隣にいるカイザー様に頼んで。お願いだから。
今日はギャラリーいるんだ。
王族派。貴族派。神殿。わかりやすく派閥別に分かれて。
前回と違い今回は陛下と王妃様も出席している。
そりゃそうだ。今まではシェイドの加護を受けている私が聖女だと言っていただけで、正式に神殿から認められていたわけではない。
それが今日、たった今から神殿によってどちらかが本当に本物だと認められる。
国のトップとしてその場に居合わせないなんてありえない。
カイザー様が不機嫌な理由って、両親揃って怒られたことも関係してる?
前回はほぼ確実にカイザー様の独断であの場は設けられていたから。
後から耳にした二人にこっぴどく叱られても自業自得。
「まず初めに」
神官長は胸に手を当て深く頭を下げた。
「コトネ様が本物の聖女であると知りながら、このような茶番に付き合わせてしまったことお詫び申し上げます」
「知っていた?」
「はい。バルク家は代々、魂の色が見えるのです。コトネ様は何色にも染まる透明色。ユア様は……目を背けたくなるような純黒」
空気がザワついた。
神官長の言葉には責任が生じる。嘘でないとわかっているからの反応。
事態がややこしくなる前に帰してもらえないだろうか。
聖女認定されたくない。
国の王子が友愛こそが聖女だと言うのだからそれでいいじゃん。
表舞台には友愛が立って、私は日の当たらない場所からこの国を支えられたらいい。
私はもう元の世界には帰れないのだ。だったらみんなが住みやすいように力ぐらいは貸す。
自主的にではなく頼まれたら。
国民が求める人こそ聖女。その辺の融通は効かせてくれてもよくないですか?
魂の色はその人間を表す。
普通はどんな人も色付けされているらしく私のように透明なのは珍しく、同様に形さえ見えないほど真っ黒なのは人としてありえないと最早言葉を失っていた。
人でなければ何なのか。
今のは言葉の表現にすぎない。
だって人じゃなかったら、それこそ度肝を抜かれる。
「お待ち下さい神官長!!ユア様には聖女の証、蓮の紋章が現れたと聞きます!!」
数いる神官の中から一人が前に出て恐れ多くも発言した。
それは私も気になっていた。
友愛はいつシェイドから加護を受けたのか。
受けていないのならあれは何だったのか。
ここにいる何人かは目にしている。神官長だって。
神官の勘違いや見間違いでは説明がつかない。
「偽物に用はない」
それだけだった。
以降、神官長は友愛にもその神官にも見向きもしない。私から目を逸らさない。
淡々と言葉を述べる神官長に私もどうするか悩んでいると、さっきの神官が諦めもせず問い詰めた。
最初から本物を見抜いていたのに二日もかけて何をしていたのかを。
それもそうだ。今回の出来事を茶番だと認めた。
──神官長には別の目的があった?
沈黙を貫く神官長に痺れを切らせた神官は、愚かにも言ってはならないことを口走った。
「ユア様とカイザー殿下を陥れるために貴族派に協力しているからですか!!?」
「私がいつ君に発言を許可した?」
声だけでも怒りが伝わってくる。
短剣を鞘から抜き素早く神官に突き立てた。
わざとらしい友愛の悲鳴にもいい加減気付く。驚いた瞬間に近くにいる男性へのさりげないボディタッチ。
ほんと、少し前までの私はあれが当たり前なのだと友愛の可愛さに心酔しきっていた。
カイザー様の鼻の下は伸びて視線はやや胸元。
──この状況でそこ見るかのかぁ。
いや、まぁ……ちょっと胸元を強調したドレスだから胸を押し付けられると自然と目がいくのかもしれないけど、時と場所は考えて。
その逆に神官長は無表情で刃先を喉に押し込んでいく。僅かに血が流れてもお構いなし。
待って。本気で殺そうとしてない!?
周りの止める声も耳に入っていなかった。
王族派や貴族派の言葉でやめたら、その派閥に加担していると誤解を招く。
陛下が止めないのはこれが神殿のやり方でもあり、神殿の領分だから。
でも、神殿の言葉なら聞いても問題ないはず。
こんなときに神官長の噂を思い出した。
生きたまま人を焼いたのはあながち嘘じゃないかも。
「神官長……ミハイル様!!剣を収めて下さい!!」
「承知致しました、コトネ様」
私に従った。つまり神殿は派閥ではなく聖女につくってこと?
やめてくれないかなそういうの。
神官長も、やっと名前を呼んでくれたとちょっと嬉しそう。呼んで欲しかったの名前。
【コトネを困らせた~!!】
サラマンダーが大きく息を吸う。炎を吐くとかじゃないよね!?
この姿は私が想像した仮の姿。本物はトカゲみたいな大きい姿じゃなかった?
そもそも人に向かって炎を吐いたらどうなるの。
丸焦げになるんじゃない?
最悪の未来が浮かぶ。
「ダメ!!」
勢いよく吐き出そうとするのを止めると、私は注目の的となった。
突然、大声出せばそうなる。
口に溜まった炎をゴクンと飲み込み、私に怒られたと勘違いして泣き出した。
他の三匹にも笑われてからかれる。ついにはこの場からいなくなってしまった。面倒事が起きなくて助かるからいいけど。
本気で悲しそうな泣き顔に罪悪感が生まれる。
後で謝ろう。
「なぜ茶番を続けたか、でしたね」
私に集まった視線が全て神官長に移った。困らないように助けてくれたのか。
目を細めて微かに笑った。それが不敵すぎるのに映画のようなワンシーンにドキっとした。
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