異世界召喚されました。親友は第一王子に惚れられて、ぽっちゃりな私は聖女として精霊王とイケメン達に愛される!?〜聖女の座は親友に譲ります〜

あいみ

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第一章

弟、兄

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 神官長の言葉に心当たりがあるのか、神官は目を泳がせながら口を噤む。

 召喚の儀に手を貸したことを裏切りと言っているわけではない。もっと別の……。それこそ取り返しのつかないようなこと。

 時に視線は凶器となる。たった一人の神官に注がれる視線は鋭い刃となり体に突き刺さる。

 羞恥。恐怖。

 それらとは異なる感情に耐えきれなくなりその場にうずくまった。

「殿下の女癖の悪さは重々承知しています」

 言い方。

 陛下が注意しないのはそれが事実だから。問題なのは本人が悪いと思っていないこと。

 人の上に立つべき身分は何をしても許されると勘違いしている。

 婚約者がいる身で色んな女性に手を出しまくって、一発も殴られていないのが不思議。

 相手が王子あったとしても、殴っていいと思う。

 火遊びの相手に選んでいるのが気弱な女性なら、無理な話か。

 いい笑い者にされたカイザー様は顔を真っ赤にしながら不敬だと喚き、神官長に死刑を宣告。

 神官長は呆れたようにため息をついて無言で陛下を見た。陛下も長いため息をつきながら首を横に振る。

 ──気にするなということかな。

「召喚の儀に関してとやかく責めるつもりはありません。現に聖女であるコトネ様が無事に召喚されましたので。私が言っているのは、聖女の証である蓮の花の紋様を勝手に、聖女でもない人間に出現させたこと」

 神殿には加護を受けでない人にも蓮の花を出せるように裏技みたいなのがある。

 神の力とか、そんな不確かものじゃない。

 精霊樹から作り出される水を飲めば、加護を受けたように証が刻まれる。

 その地下に行くのって神官長の血が必要なんじゃなかった?

 いち神官がそんな国家機密レベルなことを知っているとも考えにくい。

 室内なのに強風が吹き、神官の顔を隠していたフードが取れた。

 目や鼻筋が神官長とそっくり。まさかの兄弟!?

 シルフが口元を抑えてクスクス笑っている。風の正体はこの子か。

「兄です」

 嫌そうに紹介してくれた。

 名前を教えてくれるつもりもなければ、兄弟で在ることに幻滅している。

 この国では兄より弟のほうが優れるシステムなの?

 兄と言っても腹違いらしく、神官長のお父さんに恋焦がれた女性が睡眠薬で眠らせ無理やり……。

 そこで出来た子供を半ば脅迫するように認知させた。

 ──生々しい!そして怖い!!

 神に仕える者として生まれてくる幼い命に罪はないとはいえ。

 その後、女性の消息は急に途絶え、どうなってしまったかは誰も知らないとか。

 ──こっちもこっちで怖っ!!

 何をしたのか、あるいはさせたのか。聞いてしまったら最後、同じ目に合わされそうで誰も触れられる空気ではない。

 空気の読めないカイザー様は神官の母親がどこで何をしているのか訪ねようとする。空気を読んだ陛下の咳払いでその話題には触れることはなかった。

 罪なき命も一応はバルク家の血を引いてるため、精霊樹の存在を教えられている。

 神官は兄で在ることから自分が神官長になるのだと思っていたらしく、その夢が砕かれた瞬間は神殿で大暴れしたそうだ。

 運良く周りに誰もいなかったけど、今こうして暴露されてるから結果としては最悪だと思う。

 神官は幼い頃より神官長には弟がなると何度も説明を受けていたはずなのに、なぜか自分がそのポストに就くと思っていたらしい。

 兄弟であろうと、神官長といち神官ならどちらが上か考えなくてもわかる。

 役職のない神官には神官長に対して敬語と最低限のマナーが求められた。

 徹底した教育のおかげで恥をかかない程度には成長し、今では人前に出ることが許されている。

「兄が不出来だと下は苦労しますね。そうは思いませんかキース様」

 本人を目の前にサラッと酷いことを言った。

「私には兄がいないのでわかりません」

 誰かこの二人を止めて。

 素直すぎるよ。

 あの神官がカイザー様に協力したのって神官長に対する当てつけ。もしくは恨み。

 または両方。

 優秀な弟の存在がコンプレックスとなり超えてはいけない一線を飛び越えた。

 腹違いとはいえ兄を殺そうとする神官長の性格も疑う。

「国王陛下。我ら神殿はコトネ様を聖女として認めます。カイザー様が国民に何と発表したかは存じ上げませんが、この事実だけは揺るぎません」

 神官長の決定は神殿の決定。聖女認定されてしまった。

 一部を除いた多くの人が私に膝をつく光景は圧巻。

 友愛はカイザー様の腕にしがみついたまま。肩が震えている。怒っているのね。

 見下してきた私が友愛よりも上の地位にいるから。

 この場を穏便に済ませ、早く帰る方法は一つ。

 私自身が聖女だと認めること。キースもそれを望んでる。

 ずっと良くしてもらっていたんだ。認めるだけで恩返しになるのなら……。

「くだらん余興にいつまでも心音を巻き込むな」
「シェイド!?来ないでってあれほど言ったのに」
「心音が困っているのに無視出来るわけないだろう」

 そんなキュンとする台詞を言いながらキスしてこないで。

 唇を重ねるだけでは物足りなかったのかぬるっと舌が絡んだ。よく漫画とかで見る大人のキス。

「私の愛し子は可愛いな」
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