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新しい家族
愛らしい娘【リミック】
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「ふふ」
「どうしたんだ?レーゼル」
ユーリは泣き疲れてそのまま眠ってしまい、時間だけが過ぎていく。明日の朝には風呂に入れて、洗ってあげないとな。
本当は今日にでも入れたかったが、寝ている幼児を勝手に洗うのは非人道的行為。途中で目を覚まして怖いをさせたくはなかったし、起こすのも可哀想だった。
髪や体は丁寧に拭き、臭いも気にならない程度になったはずだ。
食事も食べさせないと。まずは胃に優しいスープからだな。野菜を充分に煮込めば舌で潰せるほど柔らかくなる。
胃が慣れてきたらポタージュに変えて、少しずつ固形物も食べられるようになってくれればいいのだが。
陽は落ちて夜になり、夕食の時間になっても起きてくることはなく共に食べることが出来ずに、ノルアとティアロはいつもより静かだった。
よっぽどユーリのことを気に入ったようだ。
「リミックがあんな顔で子供を連れ去ってくるなんて」
「連れ去るなんて……。そんな言い方はやめてくれ」
実際、その通りだが。事実だが、言葉にすると冷たく響く。
愚弟からの呼び出しがあまりにもしつこく、一度でも応じて釘を刺せばもう呼ぶことはないと思い、時間を割いて出向いた。
腐っても公爵家。格の違いを見せつけるかのように無駄な豪華なインテリア。
私と対等になりたいのか、新しく仕立てたスーツ。外行きのドレスと装飾品。
あそこまでいくと下品でしかない。
ミトン家に雇われ長く働いている使用人が、機嫌を取る以外のことをするはずもなく、指摘なんて以ての外。
使用人の感じから質が悪いのは一目瞭然。
最低限の仕事さえ満足にこなせないのであれば、公爵家で働く意味などない。
──私なら初日でクビにするな。
「それにしても、よく見つけたわね。魔力封じの部屋に閉じ込められていたのでしょう?」
「微かに魔力が漏れていたからな」
あの部屋は子供のためのもの。大人が入っても今回のように魔力が外に漏れる。
魔法が覚醒していない子供ではまずありえない現象。
義弟夫婦に魔力感知が出来るはずもなく、ユーリの魔力が子供にしては恐ろしく高いことに気付いてすらいない。
測ったわけではないのでまだ何とも言えないが、下手をすればあの歳で私と同等の魔力を持っていることになる。
閉じ込められることなくミトン家の令嬢として育っていれば王妃は無理でも、側室にはなれる器。
6歳になり魔法が覚醒すれば利益を得るために、他国との政略結婚の道具として嫁がされる。
ミトン家の令嬢なら、な。
テロイ家の、しかも私なら簡単に政略結婚の道具にはならない。私がそんなことをさせないからだ。
「良かったよ。今日、ユーリと出会えて」
明日には死んでいたかもしれない。
まさに運命の出会いだった。
私がいなければユーリは今頃……。
「あの子を守るのは私の役目だ」
新しい出会いに胸を喜ばせていると屋敷全体を巨大な魔力が包む。
上から押し潰さんとする圧力。屋敷が震え、魔力を持たない平民でさえ身を震わせるほど。
魔力の出処は一つ。そしてその持ち主は……。
急いで部屋に向かえば、禍々しくも冷たく悲しい魔力が放出されていた。
扉一枚挟んでいるのに、より近くにいるからだろう。心拍は上がり喉が渇く。
指も震え恐怖すら覚える。
「ユーリ!!」
密封された部屋の扉を開ければ充満していた魔力は一気に流れ出す。
魔力は感情に左右されやすく、特に負の感情は人体に影響を及ぼす場合もある。
「うぅ……あ゛ぁぁーー!!やぁーー!!」
頭を抑えたまま小さく蹲るその姿は、儚く今にも消えてしまいそうな。
夜風は冷たく体を冷やしてはいけないと思い、窓を閉めたのがいけなかった。
真っ暗ではないが暗い部屋は自分を閉じ込めていたあの場所を思い出させる。
大きな目から零れ落ちる涙は止まることはない。
「すまない。独りにさせて。配慮に欠けていた」
抱きしめた体は氷のように冷たかった。
無意識に膨大な魔力を放出しているせいで体に負担をかけているのか。
感情が爆発したせいで血よりも早く巡る魔力。
ここまで激しければ激痛さえ伴うはずなのに、ユーリは痛みを訴えることもない。
昼間、ベッドから落ちたときも泣かなかったが、まさかユーリは。
それがただの憶測であって欲しいと願わずにはいられない。
「ユーリ!大丈夫よ。落ち着いて。貴女は独りではないわ」
「ん……グス、やぁぁ」
泣き止む気配のないユーリはひたすらに魔力を放出するだけ。
このままでは命の危険さえある。
「大丈夫。大丈夫よ」
レーゼルにユーリを預けると背中をさすりながら、安心させるように繰り返す。
7つ歳下の妹がいるレーゼルは私と違って、ユーリを安心させるのが早い。
涙は止まらないものの、魔力だけは止まった。
「父上!母上!ユーリは……」
「少しは落ち着いたようだ」
「良かった」
安堵のため息。
正直、ユーリのことをこんなにもすぐ受け入れてくれるとは想像していなかった。
息子達も愚弟のことはあまり好きではなく、パーティーで顔を会わせる度に捏造された自慢話ばかりをしてくるのが原因。
子を持つ親でありながらも、未だまともに魔法を使えないのだ。
血を分けた私の弟だとしても、尊敬する要素が一つもない。
正義感が強いほうではあるが、愚弟の娘を家族に迎え入れられるかは別問題。
汚れ痩せこけてはいるものの、ユーリは可愛らしい女の子。
それを決定付けたのが笑顔。
掠れた、やっとの思いで絞り出された声で告げられた感謝。
一輪の花が咲いたかのようなはにかみ。
胸の奥に火が灯ったかのようにじんわりと温かくなり愛しさが沸いた。
「ユーリ?」
小さな手が私に向かって懸命に伸ばされる。
ひたすらに泣いて、周りは見えていない。
何度も空を切るが、声を頼りに私を探す。
「リミックはここにいるわ」
一歩近づけば私達にとってはいつもの距離。
近づいても力がないから結局のところは掴めないが。
「ユーリ。今日は私達と一緒に寝ようか」
「えーー。ズルい。俺らもユーリと寝たい」
「明日、ユーリに確認と許可を取れ。行こうか」
まだ泣き止まないユーリを抱いたレーゼルの肩に手を回す。
不満そうな視線には敢えて無視をして、何事かと駆け付けてきた使用人への説明は後日。
今はただユーリを優先したい。
「どうしたんだ?レーゼル」
ユーリは泣き疲れてそのまま眠ってしまい、時間だけが過ぎていく。明日の朝には風呂に入れて、洗ってあげないとな。
本当は今日にでも入れたかったが、寝ている幼児を勝手に洗うのは非人道的行為。途中で目を覚まして怖いをさせたくはなかったし、起こすのも可哀想だった。
髪や体は丁寧に拭き、臭いも気にならない程度になったはずだ。
食事も食べさせないと。まずは胃に優しいスープからだな。野菜を充分に煮込めば舌で潰せるほど柔らかくなる。
胃が慣れてきたらポタージュに変えて、少しずつ固形物も食べられるようになってくれればいいのだが。
陽は落ちて夜になり、夕食の時間になっても起きてくることはなく共に食べることが出来ずに、ノルアとティアロはいつもより静かだった。
よっぽどユーリのことを気に入ったようだ。
「リミックがあんな顔で子供を連れ去ってくるなんて」
「連れ去るなんて……。そんな言い方はやめてくれ」
実際、その通りだが。事実だが、言葉にすると冷たく響く。
愚弟からの呼び出しがあまりにもしつこく、一度でも応じて釘を刺せばもう呼ぶことはないと思い、時間を割いて出向いた。
腐っても公爵家。格の違いを見せつけるかのように無駄な豪華なインテリア。
私と対等になりたいのか、新しく仕立てたスーツ。外行きのドレスと装飾品。
あそこまでいくと下品でしかない。
ミトン家に雇われ長く働いている使用人が、機嫌を取る以外のことをするはずもなく、指摘なんて以ての外。
使用人の感じから質が悪いのは一目瞭然。
最低限の仕事さえ満足にこなせないのであれば、公爵家で働く意味などない。
──私なら初日でクビにするな。
「それにしても、よく見つけたわね。魔力封じの部屋に閉じ込められていたのでしょう?」
「微かに魔力が漏れていたからな」
あの部屋は子供のためのもの。大人が入っても今回のように魔力が外に漏れる。
魔法が覚醒していない子供ではまずありえない現象。
義弟夫婦に魔力感知が出来るはずもなく、ユーリの魔力が子供にしては恐ろしく高いことに気付いてすらいない。
測ったわけではないのでまだ何とも言えないが、下手をすればあの歳で私と同等の魔力を持っていることになる。
閉じ込められることなくミトン家の令嬢として育っていれば王妃は無理でも、側室にはなれる器。
6歳になり魔法が覚醒すれば利益を得るために、他国との政略結婚の道具として嫁がされる。
ミトン家の令嬢なら、な。
テロイ家の、しかも私なら簡単に政略結婚の道具にはならない。私がそんなことをさせないからだ。
「良かったよ。今日、ユーリと出会えて」
明日には死んでいたかもしれない。
まさに運命の出会いだった。
私がいなければユーリは今頃……。
「あの子を守るのは私の役目だ」
新しい出会いに胸を喜ばせていると屋敷全体を巨大な魔力が包む。
上から押し潰さんとする圧力。屋敷が震え、魔力を持たない平民でさえ身を震わせるほど。
魔力の出処は一つ。そしてその持ち主は……。
急いで部屋に向かえば、禍々しくも冷たく悲しい魔力が放出されていた。
扉一枚挟んでいるのに、より近くにいるからだろう。心拍は上がり喉が渇く。
指も震え恐怖すら覚える。
「ユーリ!!」
密封された部屋の扉を開ければ充満していた魔力は一気に流れ出す。
魔力は感情に左右されやすく、特に負の感情は人体に影響を及ぼす場合もある。
「うぅ……あ゛ぁぁーー!!やぁーー!!」
頭を抑えたまま小さく蹲るその姿は、儚く今にも消えてしまいそうな。
夜風は冷たく体を冷やしてはいけないと思い、窓を閉めたのがいけなかった。
真っ暗ではないが暗い部屋は自分を閉じ込めていたあの場所を思い出させる。
大きな目から零れ落ちる涙は止まることはない。
「すまない。独りにさせて。配慮に欠けていた」
抱きしめた体は氷のように冷たかった。
無意識に膨大な魔力を放出しているせいで体に負担をかけているのか。
感情が爆発したせいで血よりも早く巡る魔力。
ここまで激しければ激痛さえ伴うはずなのに、ユーリは痛みを訴えることもない。
昼間、ベッドから落ちたときも泣かなかったが、まさかユーリは。
それがただの憶測であって欲しいと願わずにはいられない。
「ユーリ!大丈夫よ。落ち着いて。貴女は独りではないわ」
「ん……グス、やぁぁ」
泣き止む気配のないユーリはひたすらに魔力を放出するだけ。
このままでは命の危険さえある。
「大丈夫。大丈夫よ」
レーゼルにユーリを預けると背中をさすりながら、安心させるように繰り返す。
7つ歳下の妹がいるレーゼルは私と違って、ユーリを安心させるのが早い。
涙は止まらないものの、魔力だけは止まった。
「父上!母上!ユーリは……」
「少しは落ち着いたようだ」
「良かった」
安堵のため息。
正直、ユーリのことをこんなにもすぐ受け入れてくれるとは想像していなかった。
息子達も愚弟のことはあまり好きではなく、パーティーで顔を会わせる度に捏造された自慢話ばかりをしてくるのが原因。
子を持つ親でありながらも、未だまともに魔法を使えないのだ。
血を分けた私の弟だとしても、尊敬する要素が一つもない。
正義感が強いほうではあるが、愚弟の娘を家族に迎え入れられるかは別問題。
汚れ痩せこけてはいるものの、ユーリは可愛らしい女の子。
それを決定付けたのが笑顔。
掠れた、やっとの思いで絞り出された声で告げられた感謝。
一輪の花が咲いたかのようなはにかみ。
胸の奥に火が灯ったかのようにじんわりと温かくなり愛しさが沸いた。
「ユーリ?」
小さな手が私に向かって懸命に伸ばされる。
ひたすらに泣いて、周りは見えていない。
何度も空を切るが、声を頼りに私を探す。
「リミックはここにいるわ」
一歩近づけば私達にとってはいつもの距離。
近づいても力がないから結局のところは掴めないが。
「ユーリ。今日は私達と一緒に寝ようか」
「えーー。ズルい。俺らもユーリと寝たい」
「明日、ユーリに確認と許可を取れ。行こうか」
まだ泣き止まないユーリを抱いたレーゼルの肩に手を回す。
不満そうな視線には敢えて無視をして、何事かと駆け付けてきた使用人への説明は後日。
今はただユーリを優先したい。
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