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新たな出会い
孤児院を救いたいのです
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孤児院とは。
親のいない子供達を引き取り、育てる場所。各街に必ず一つはある。
孤児院の生計はどうなっているのか。
決まった貴族から毎月、一定の寄付金が貰えるようになっている。
うん。ここまでは理解した。
孤児院はここ以外の街にもあり、それら全てに貴族が関わっている。
国に申請し、許可を得ることで実質、孤児院を管理して権利が全て手に入るんだとか。
運営、里親の決定権。どの子供を受け入れるか。その代わりに最低でも10万カリンの寄付が義務付けられている。
平民の物価はかなり安く、畑で野菜を育てていたら10万でも余るんだけど。
絶対に寄付されてないよね、これ。
贅沢をするわけでもなく、10万なんて大金があれば、余ったお金をコツコツ貯めて建物の修繕費にも当てられるし、みんなはご飯をお腹いっぱい食べられている。
服だって新しいのを買えるはずなのに。
ここは去年、担当貴族が代わってから一気に今の状態まで落ちた。
寄付をしてくれている貴族は街の人に、この孤児院にパンの一つも施しを与えることは許さないと脅していた。
勝手なことをして貴族の機嫌を損ねたらどうなるか。平民はそのことをよく理解しているからこそ、彼らに何もしてあげられない。
だからか。あの男性がシムにかなり暴力的だったのは。
過去には一人だけいたそうだ。そんな脅しに屈しない女性が。温かい食事を作ってくれた女性は、翌日には街から姿を消した。
誰がやったかなんて証拠はない。でも、タイミングからして……。
それ以来、この孤児院はほとんど孤立状態。
寄付自体はされているけど、微々たるもの。1週間の生活でさえままならない。
事業が成功した伯爵家なので、お金がないわけではなかった。
ではなぜ、規定の金額を寄付しないのか。
伯爵は孤児院を救うつもりなんてなく王家主催のパーティーや夜会に参加したいがため。
実績があれば目に止まる。特別扱いをされて、もっとお近づきになれると下心と欲しか持っていない。
利用している。明日には飢えてしまうかもしれない子供達の命を。
問題があるのは伯爵だけではない。いくら忙しいとはいえ、孤児院の視察に人を割いて現状を見ていない王家もだ。
王宮務めの貴族は平民を嫌う者が多く、平民街に足を踏み入れることさえ嫌悪感を示す。
お父様と数人の貴族は差別意識がないため行ってもいいと手を挙げてくれているが、抱えている仕事量がとんでもないので許可が降りない。
──平民街に行きたがらない人が仕事を代わったら?
なんて、思うだけ無駄。超優秀なお父様の代わりが務まる人はいない。
他の貴族にしてもそうだ。役職がないだけでめっっちゃ優秀だそうで。本人達が望んでいないから文官のままだけど、本来なら宰相や大臣といった立場に立っていてもおかしくはない人材。
「うーん。じゃあもう、自分達で稼ぐしかないかな」
寄付金はない。街の人は非協力的(こればっかりは仕方ない)。炊き出しだけでは追いつかない。
となると。残された道は一つ。
「稼ぐといっても我々、商売は全く……」
「バザーを開けばいいんです」
「「バザー?」」
リンシエと院長が首を傾げた。盗み聞きしていた子供達も一緒になって。
孤児院に来てお金の有無以外に気になったことがある。
「これは手作り?」
窓辺にはボロボロの布で縫われたぬいぐるみが何匹も並べられている。
まだ糸や布に余裕があった頃に作った物だろう。
出来栄えは良く、お金を払ってでも手に入れたい。だって可愛いんだもん。
猫、犬、兎。色違いの小鳥も。
外に干されている洗濯物も、買った物ではなく恐らくは手作り。
木の食器も手作り感に溢れている。
こういった物を新しく作って売ればいくらか稼げるはず。
「そんな!無理です!作るにしても材料がありませんし」
「リンシエ。うちに余ってる布や糸……綿とかあったりする?」
「ございますよ。沢山」
よし。問題は解決した。
場所は広場がいいな。あそこなら大勢集まっても混雑はしない。
あとは……鞄とか作れるなら是非とも作ってもらいたいな。
ここに来る途中で買い物している人を見かけたけど、みんなバスケットみたいに木のカゴを使っていた。
大きさは一定でいっぱい買うならいいけど、ちょっとした物を買うときは不便。
野菜を一つも二つであのカゴは使いたくないかな。スーパーの買い物カゴよりやや大きく底も深い。
エコバックのように布の鞄なら肩にかけられれて両手も塞がらない。便利だと思う。
──……いるよね、エコバック。私は欲しい。
小物入れもあったらいいかも。中に何を入れるかはその人の自由。
リュックサックもあればいいよね。ファスナーのいらない簡単に作れるタイプがあったはず。
これは頑張って思い出して設計図みたいなものを描こう。
財布!財布も作ろう。
この世界の財布は巾着袋で、紙幣と硬貨を一緒に入れている。
紙幣をくしゃくしゃに丸めて入れる人もいて、かなり気になっていた。
私はお金はきちんとしまっておきたい派。
貴族は基本、自分で買い物に行ったりしないので必要はないけど。
むしろ商人が売りに来てくれる。
その場で支払ったり、大金だったら手形を発行して銀行でお金を受け取ってもらう。
私は分かれていたほうが使い慣れているだけで、そういう財布があったら嬉しいだけ。
うん。こんなとこかな。
「ユ、ユーリ様。お気持ちは嬉しいのですが」
「材料はこちらで用意します。利益も全て孤児院が納めて下さい」
「い、いけません!!そのようなこと!!」
「院長。私は救える命を救いたいだけなんです」
見てしまった。触れ合ってしまった。私はもう知ってしまったのだ。
少なくともここに今日を生きられるかもわからない数十人がいるということを。
知ってしまったらもう他人ではいられない。
お父様が私を見つけて助けてくれたのなら、今度は私がこの子達を助ける番。
ルールがあるならそのルールを破らない方法で。
物が売れたらお金が手に入ってご飯が食べられる。
買ってくれた人が商品の良さを広めてくれたら二回目も開けて良いこと尽くし。
「そうだ、リンシエ。お金持ってる?」
「ありますよ」
「それでパン買える?」
「もちろんです。ですが、今日は買い物の予定がなく手持ちが少ないのです」
「ぁ……」
そうだ。持っていたとしてもそれはリンシエのお金。私がお願いして使わせていいお金ではない。
考えてもわかることなのに、私のバカバカ!!
私は現金の持ち合わせはないし、代わりになる物……もない。
危険回避のために高価な装飾品を身に付けることは断固として拒否。服だってなるべく地味なものを選んだ。
行くのは平民街だからね。なるべく目立たず、馴染む恰好が一番。
「これなら30個は買えますよ」
「ううん!いいの。リンシエのお金なんだから大切にして」
私が働いて、賃金ではなく食べ物を貰うのはどうだろう。
この体だ。できることはたかが知れているけど、お客さんの呼び込みや商品の受け渡しなら頑張ればできる。
──すごく良い案では?
「ユーリ様。私が買ってきますので、こちらでお待ち下さい」
密かに意気込んでいるとリンシエは肩に手を置き、力強い目で見てくる。
「でも、そのお金は……」
「私も嫌なんです。こんなにも幼い子供や善良な人が貴族の欲のために苦しむなんて」
重ねているんだ。弟と妹に。
「すぐに戻ってきますので、ここを動いたらダメですよ。いいですね?」
念を押された。それも強く。
リンシエがいないならフラフラと歩き回るつもりはないので、小さくうなづいた。
このまま座って待つことにする。
10分もせずに両手いっぱいのパンを抱えてリンシエが戻ってきた。
──やっぱりエコバックいるよね。絶対に作ってもらお。
パンだけでは味気ないので、スープでも作ろうと思ってくれていたみたいだけど、野菜を買うと重たくなるので今日は断念した。
まぁ……うん。そりゃそうだよね。
両手いっぱいとはすなわち、山盛りであることを指す。前なんて見えないほどに。
──お店の人もさぞ驚いたことだろう。
焼き立てホカホカのパンは柔らかい。
残してあった最後のミルクを院長がみんなに分けてる。
優先するのはあくまでも子供達。自分のことは後回し。
大人一食分でもそこまで量はないので、今までお腹が満たされることはなかった。
明日も来るんだ。そのときは材料とご飯を一緒に持って来よう。
街で買うと怪しまれてしまうから、料理を作ってもらえたらいいんだけど。
荷馬車に鍋を積んで運ぶのは悪目立ちする。
さて、どうしたものか。
親のいない子供達を引き取り、育てる場所。各街に必ず一つはある。
孤児院の生計はどうなっているのか。
決まった貴族から毎月、一定の寄付金が貰えるようになっている。
うん。ここまでは理解した。
孤児院はここ以外の街にもあり、それら全てに貴族が関わっている。
国に申請し、許可を得ることで実質、孤児院を管理して権利が全て手に入るんだとか。
運営、里親の決定権。どの子供を受け入れるか。その代わりに最低でも10万カリンの寄付が義務付けられている。
平民の物価はかなり安く、畑で野菜を育てていたら10万でも余るんだけど。
絶対に寄付されてないよね、これ。
贅沢をするわけでもなく、10万なんて大金があれば、余ったお金をコツコツ貯めて建物の修繕費にも当てられるし、みんなはご飯をお腹いっぱい食べられている。
服だって新しいのを買えるはずなのに。
ここは去年、担当貴族が代わってから一気に今の状態まで落ちた。
寄付をしてくれている貴族は街の人に、この孤児院にパンの一つも施しを与えることは許さないと脅していた。
勝手なことをして貴族の機嫌を損ねたらどうなるか。平民はそのことをよく理解しているからこそ、彼らに何もしてあげられない。
だからか。あの男性がシムにかなり暴力的だったのは。
過去には一人だけいたそうだ。そんな脅しに屈しない女性が。温かい食事を作ってくれた女性は、翌日には街から姿を消した。
誰がやったかなんて証拠はない。でも、タイミングからして……。
それ以来、この孤児院はほとんど孤立状態。
寄付自体はされているけど、微々たるもの。1週間の生活でさえままならない。
事業が成功した伯爵家なので、お金がないわけではなかった。
ではなぜ、規定の金額を寄付しないのか。
伯爵は孤児院を救うつもりなんてなく王家主催のパーティーや夜会に参加したいがため。
実績があれば目に止まる。特別扱いをされて、もっとお近づきになれると下心と欲しか持っていない。
利用している。明日には飢えてしまうかもしれない子供達の命を。
問題があるのは伯爵だけではない。いくら忙しいとはいえ、孤児院の視察に人を割いて現状を見ていない王家もだ。
王宮務めの貴族は平民を嫌う者が多く、平民街に足を踏み入れることさえ嫌悪感を示す。
お父様と数人の貴族は差別意識がないため行ってもいいと手を挙げてくれているが、抱えている仕事量がとんでもないので許可が降りない。
──平民街に行きたがらない人が仕事を代わったら?
なんて、思うだけ無駄。超優秀なお父様の代わりが務まる人はいない。
他の貴族にしてもそうだ。役職がないだけでめっっちゃ優秀だそうで。本人達が望んでいないから文官のままだけど、本来なら宰相や大臣といった立場に立っていてもおかしくはない人材。
「うーん。じゃあもう、自分達で稼ぐしかないかな」
寄付金はない。街の人は非協力的(こればっかりは仕方ない)。炊き出しだけでは追いつかない。
となると。残された道は一つ。
「稼ぐといっても我々、商売は全く……」
「バザーを開けばいいんです」
「「バザー?」」
リンシエと院長が首を傾げた。盗み聞きしていた子供達も一緒になって。
孤児院に来てお金の有無以外に気になったことがある。
「これは手作り?」
窓辺にはボロボロの布で縫われたぬいぐるみが何匹も並べられている。
まだ糸や布に余裕があった頃に作った物だろう。
出来栄えは良く、お金を払ってでも手に入れたい。だって可愛いんだもん。
猫、犬、兎。色違いの小鳥も。
外に干されている洗濯物も、買った物ではなく恐らくは手作り。
木の食器も手作り感に溢れている。
こういった物を新しく作って売ればいくらか稼げるはず。
「そんな!無理です!作るにしても材料がありませんし」
「リンシエ。うちに余ってる布や糸……綿とかあったりする?」
「ございますよ。沢山」
よし。問題は解決した。
場所は広場がいいな。あそこなら大勢集まっても混雑はしない。
あとは……鞄とか作れるなら是非とも作ってもらいたいな。
ここに来る途中で買い物している人を見かけたけど、みんなバスケットみたいに木のカゴを使っていた。
大きさは一定でいっぱい買うならいいけど、ちょっとした物を買うときは不便。
野菜を一つも二つであのカゴは使いたくないかな。スーパーの買い物カゴよりやや大きく底も深い。
エコバックのように布の鞄なら肩にかけられれて両手も塞がらない。便利だと思う。
──……いるよね、エコバック。私は欲しい。
小物入れもあったらいいかも。中に何を入れるかはその人の自由。
リュックサックもあればいいよね。ファスナーのいらない簡単に作れるタイプがあったはず。
これは頑張って思い出して設計図みたいなものを描こう。
財布!財布も作ろう。
この世界の財布は巾着袋で、紙幣と硬貨を一緒に入れている。
紙幣をくしゃくしゃに丸めて入れる人もいて、かなり気になっていた。
私はお金はきちんとしまっておきたい派。
貴族は基本、自分で買い物に行ったりしないので必要はないけど。
むしろ商人が売りに来てくれる。
その場で支払ったり、大金だったら手形を発行して銀行でお金を受け取ってもらう。
私は分かれていたほうが使い慣れているだけで、そういう財布があったら嬉しいだけ。
うん。こんなとこかな。
「ユ、ユーリ様。お気持ちは嬉しいのですが」
「材料はこちらで用意します。利益も全て孤児院が納めて下さい」
「い、いけません!!そのようなこと!!」
「院長。私は救える命を救いたいだけなんです」
見てしまった。触れ合ってしまった。私はもう知ってしまったのだ。
少なくともここに今日を生きられるかもわからない数十人がいるということを。
知ってしまったらもう他人ではいられない。
お父様が私を見つけて助けてくれたのなら、今度は私がこの子達を助ける番。
ルールがあるならそのルールを破らない方法で。
物が売れたらお金が手に入ってご飯が食べられる。
買ってくれた人が商品の良さを広めてくれたら二回目も開けて良いこと尽くし。
「そうだ、リンシエ。お金持ってる?」
「ありますよ」
「それでパン買える?」
「もちろんです。ですが、今日は買い物の予定がなく手持ちが少ないのです」
「ぁ……」
そうだ。持っていたとしてもそれはリンシエのお金。私がお願いして使わせていいお金ではない。
考えてもわかることなのに、私のバカバカ!!
私は現金の持ち合わせはないし、代わりになる物……もない。
危険回避のために高価な装飾品を身に付けることは断固として拒否。服だってなるべく地味なものを選んだ。
行くのは平民街だからね。なるべく目立たず、馴染む恰好が一番。
「これなら30個は買えますよ」
「ううん!いいの。リンシエのお金なんだから大切にして」
私が働いて、賃金ではなく食べ物を貰うのはどうだろう。
この体だ。できることはたかが知れているけど、お客さんの呼び込みや商品の受け渡しなら頑張ればできる。
──すごく良い案では?
「ユーリ様。私が買ってきますので、こちらでお待ち下さい」
密かに意気込んでいるとリンシエは肩に手を置き、力強い目で見てくる。
「でも、そのお金は……」
「私も嫌なんです。こんなにも幼い子供や善良な人が貴族の欲のために苦しむなんて」
重ねているんだ。弟と妹に。
「すぐに戻ってきますので、ここを動いたらダメですよ。いいですね?」
念を押された。それも強く。
リンシエがいないならフラフラと歩き回るつもりはないので、小さくうなづいた。
このまま座って待つことにする。
10分もせずに両手いっぱいのパンを抱えてリンシエが戻ってきた。
──やっぱりエコバックいるよね。絶対に作ってもらお。
パンだけでは味気ないので、スープでも作ろうと思ってくれていたみたいだけど、野菜を買うと重たくなるので今日は断念した。
まぁ……うん。そりゃそうだよね。
両手いっぱいとはすなわち、山盛りであることを指す。前なんて見えないほどに。
──お店の人もさぞ驚いたことだろう。
焼き立てホカホカのパンは柔らかい。
残してあった最後のミルクを院長がみんなに分けてる。
優先するのはあくまでも子供達。自分のことは後回し。
大人一食分でもそこまで量はないので、今までお腹が満たされることはなかった。
明日も来るんだ。そのときは材料とご飯を一緒に持って来よう。
街で買うと怪しまれてしまうから、料理を作ってもらえたらいいんだけど。
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