溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ

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最上位魔物

人魚のお友達は綺麗でした

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 「(ゲール。今のどういうこと?)」
【そのままの意味だ。行ってみるか?人魚姫プリンセスの聖域に】
 「(うん!あ、他の人も一緒だけど大丈夫?)」
【やめておけ。今のあそこは人間が足を踏み入れられる場所ではない】

 私も人間ですが?え、カウントしてくれてないの?
 ええー、ショック。

【ユーリはどこにいるんだ】
 「(港町のコーミン。大きな港があるとこ)」
【わかった。俺もすぐに行く。聖域はそこから近いリムネ湖だ】

 ゲールが森を出たら巨大な魔力がまた上から降ってくる。
 人々を恐怖に晒すなんて私の一存では決められない。

 「(そうだ!ゲールの魔力を魔法陣に流して抑えられない?)」
【俺の陣はユーリが持っている。莫大な量を流せばユーリの体に負担がかかるかもしれない】
 「(それは大丈夫!)」

 多分。

 試してみる価値はある。茶色い魔法陣が光り、みるみる濃くなっていく。
 ほえー。魔力が溜まるとこんな感じなんだ。

 ゲールが持つ半分以上の魔力が魔法陣へと流れた。
 体調に変化は見受けられない。うん、大丈夫だ。

 「あ、あの。ヴィバル様。一人でお散歩……」

 嘘をついたらまた心配させることになる。怒られることよりも、そっちのほうが嫌だった。

 「人魚姫プリンセスと仲直りする方法があるかもしれないので、行ってきてもいいですか?」
 「まるで一人がいいという言い方だな」
 「はい。ヴィバル様が私を守るために同行してくれているのは理解しています。ですが、キングゴブリンが今から行く場所にヴィバル様は近づかないほうがいいと」
 「そこにはキングゴブリンも行くのか?」
 「はい。来てくれます」

 ヴィバル様は空を見上げた。息を吐きなぎらしゃがみ込んでは、大人の魅力溢れる笑顔で

 「途中まで一緒に行こう」
 「リムネ湖という場所なんですが……」

 地図を思い出してもそんな名前の湖はなかった。

 小さな文字で書かれていたのなら見落としているだけかもしれない。

 「町の外れにある湖だな。元、だが」
 「元?」
 「今は水が枯れ果ててしまい湖ではないのだ。昔は観光名所の一つだった」

 数分歩いて、目的のリムネ湖付近に到着。
 危険と書かれた看板が多く立てられいる。

 見たところ一本道。迷いそうにはない。
 となると魔物がいるのかな。

 ハザックの森にゴブリンの群れがいたように、人魚姫プリンセスの仲間がいても不思議ではない。

 人魚がいっぱいいるってことかな!!?

 「ヴィバル様?」

 早く行きたいのに繋いだ手を離してくれない。

 「ユーリは青龍から鱗を貰ったそうだな。それなら大丈夫だとは思うが……」
 「えと……。何かあるんですか?」
 「リムネ湖には魚がいて、周辺には鳥もいた。だが、いつからか全て息絶えた。調査に出向いた数人も同じように皮膚が腐り死んでいった」

 ………………ちょっとゲールさん!?そんな恐ろしい場所だなんて聞いていませんけど!!

 調査が出来ない以上、立ち入りを禁ずるしかない。
 幸いなことに、この看板より向こうに行かなければ危険はないんだとか。

 私には神獣である青龍がいるため、最悪なケースにはならないと信じるしかなかった。

 「ヴィバル様。行ってきます」

 足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。

 息苦しい。視界に黒い霧がかかる。肌にまとわりつく不快感。

 息を吸えば不快なものが体に入ってくる。

 なるべく息をしないように、長くはない道のりを歩いた。

 2平方kmにも満たない水が溜まっていたであろう場所には穴が空いている。
 土はすっかり乾いていた。

【ユーリ】
 「ゲール!え、どこから来たの?早いね」
【地上の最上位魔物は、なぜか互いの聖域に行き来出来るんだ。ほとんど行くことはないがな】

 だろうね。自分にとって心の平穏がある聖域をわざわざ離れることはない。

【これが人魚姫プリンセスが人間を嫌う一番の理由だろう】
 「湖が枯れたこと?」
【いいや。この聖域に瘴気を持ち込んだからだ。そのせいで生き物は死に、水も草木も枯れた。最上位魔物である人魚姫プリンセスだけは無事だったが、ここで共に暮らしていた生き物は全滅】

 住処を追われたということか。

 「最上位魔物が聖域を出たらその魔力は……」
【命こそ無事だが、瘴気に当てられたのも事実。前と同じような魔力の質や量を保っていられないのだ】
 「死んじゃうの?」
【今は海から死なない程度の魔力を貰っているはずだ。残った魔力で各地に渦潮を発生させているため、世界に影響も及ぼさない】
 「私はどうしたらいい?何をしたら人魚姫プリンセスがまたここに戻って来られる?」

 海をどうにかしたいとか、そんなことはどうでもいい。

 ただただ、人魚姫プリンセスの帰る場所を返してあげたかった。

【簡単だ。浄化すればいい。ユーリはひかり魔法を使えるのだろう】
 「光魔法?属性としては持ってるみたいだけど、よくわかんない」
【光?違う。ひかり魔法。つまり浄化だ】

 光じゃなくてひかり?どういうこと?
 だって父様は私に、光と闇の属性を合わせた合計、七つの魔法が使えるとしか言わなかった。

ひかりは浄化。光は照らす。やみはこのように瘴気を作り、闇は全てを覆う】

 情報量が多い。これはもう考えるよりも先に浄化しよう。

 浄化ってことは祈ればいいのかな。胸の前で手を組み、この地に漂う良くないものを祓えるように祈る。

 強気に振舞っていた人魚姫プリンセスの目には涙の跡があった。
 居場所を失くし、共に暮らしていた家族同然の存在まで失った。
 終わりのない悲しみに、泣くしかないんだ。

 人魚姫プリンセスの大切な居場所に帰れるように、また笑顔になれるように、私は私の持つ全てを捧げる。

 黄金色の光が私を中心に広がった。

 体の内側が急激に冷めていく。魔力が魔法に吸われているかのよう。

【ユーリ!!俺の魔力を使え!!】

 ゲールの……。そっか!森から出るために魔法陣に魔力を流したんだ。

 使い方なんてわからないけど、ゲールの魔法陣を意識して、そこから体内に流すイメージを強く持つ。

 慣れてないからか、他人の魔力は違和感。わかる。これがゲールの魔力。

 全てを使い切ると体力もなくなり、その場に座り込む。

 心臓が熱い。心拍数もかなり上がっている。

 ひかり魔法って魔力も体力もこんなに消耗するものなんだ。

 指先が震える。乱れた呼吸は整ってきたけど、立つ余裕はまだない。

 空気が澄み、長く立ち込めていた黒い霧がついに晴れた。あれが瘴気だったのだろうか。
 どこからともなく湧き出た水が再び湖となり、周囲の草花は生き生きと茂りはじめた。

 ──あぁ……美しい。

 その光景に私は思わず息を呑んだ。

 これは観光地になるのも納得。

 南国の海のように透明度が高く、エメラルドグリーンの水は光を反射して輝いていた。
 湖の周りには小さな花が無数に咲き誇り、そよ風が吹けば揺れる。

【な、何よこれ。どうなっているの……】 

 驚きの声に振り向くと人魚姫プリンセスがいた。

【聖域に変化が起きたから様子を見に来たのに。これは何?しかも。キングゴブリンまでいるなんて】
【俺はユーリの付き添いだ】
【まさかとは思っていたけど貴女。ひかり魔法が使えるのね】

 今日初めて使ったよ。そんな魔法があることも知らなかったし。

 「人魚姫プリンセス。これでもう泣かない?笑える?」
【え?】
 「人魚姫プリンセス。ごめんね。大切なものをいっぱい奪って」
【バカじゃないの!?ひかり魔法が使えるなら、それを交渉材料にすれば良かったじゃない】
 「え、何で?」

 これは海とは別件。私が人魚姫プリンセスのために何かしたかっただけ。

 帰りたい場所に帰ることも叶わず、独りぼっち。

 人魚プリンセス瞳が少しだけ温かく輝いた。これまでの絶望に満ちた表情が和らぐのを感じた。

【ユーリ……】

 人魚姫プリンセスは少量の波に乗って私に近づいてきた。
 ひんやりとした手が頬に触れる。
 合わさる額。

 「ヒュドール」
【うん】

 笑った。その後すぐに泣いた。
 涙は大粒の真珠へと代わり、落ちないようにキャッチすればそのまま体内に沈む。

 青の柱が立つ。

 状況の流れが早すぎて処理するのに時間がかかる。

 混乱している私を他所にお返しとして人魚姫プリンセスは人間の足を手に入れた。

 何でも、魔力を込めて流す涙は真珠へと変わるらしい。
 欲深い人間が聞いたら悪用すること間違いなし。

 青を主体とした服の袖にはフリルが着いている。ロングスカートは長すぎるような?

 ベルトとかあれば調整出来るんだけど。泡をモチーフにしたスカートは可愛いのに、あれでは汚れてしまう。

 裾が地面につかない長さまでスカートを折るよう提案すると、すぐさま実行してくれた。
 うん、これで良し。

 他の服に着替えられるのであれば、もうちょっと短いスカートに履き替えてもらおう。あれでは歩きずらいはず。

 ゲールと同じく姿は自在に切り替われる。

 ずっと水の中で生きてきた人魚。人間みたいに二本の足で立つことなんてないし、叶わない夢として諦めていたかも。
 読み聞かせの人魚姫は足と引き換えに声を失う。人魚姫プリンセスはどうなのだろうか?

 懸命に手を伸ばすと察してくれたようで、顔を近づけてくれる。

 ぺたぺたと喉を触っては

 「大丈夫?声出る?」

 無論、出るだろう。

 彼女は王子様に恋をした人魚姫ではない。足が生えているのだって、真珠のお返しを貰ったから。
 わかっていても確認せずにはいられない。

【ええ、大丈夫よ】

 不思議そうにしながらも答えてくれる。綺麗な声はそのまま。
 安心していると何やら小さな光が飛んでくる。一つではない。幾つも。

【みんな……戻ってきてくれたの】

 泣き止んでいた人魚姫プリンセスはまた泣いた。

 光の正体、それは……蛍。

 祖父母が暮らしていた田舎では毎年、時期が訪れると蛍を鑑賞するイベントが行われていたとか。
 私は話に聞くだけだったけど、見たことのない景色が思い浮かぶほどその美しさは想像出来た。

 蛍が昼間に光るのかはさておき。ここはファンタジーの世界。作者がそういう風に作ったのであれば、そうなるのが自然の理。

 ──確か水が綺麗な場所にしか生息しないんだっけ?

 リムネ湖なら条件を満たしている。

 瘴気が溜まり、水が枯れ果ててしまってからは短い命を守るために人魚姫プリンセスが、無理やりこの地から追い出した。
 他にも水が綺麗な場所はあるし、ここにこだわって寿命を早める真似だけは避けたかったのだ。

 蛍には人魚姫プリンセスの想いがわかり、浴びせられる酷い言葉が本心でないと理解していた。
 ずっと。ただずっと。待っていた。またここに帰ってこられる日を。人魚姫プリンセスの傍にいられるときを。

【ユーリ。あり、がと……。ありがとう】

 意外にも涙もろい人魚姫プリンセスは私を抱きしめた。

 繰り返される感謝。そんな人魚姫プリンセスの周りを蛍が舞う。

 黒い霧は消え、湖は輝きを増す。
 光と水が織りなす聖域は、私の心に安らぎを与えてくれた。
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