[完]“ね”の物語

あいみ

文字の大きさ
1 / 4

ねずみのはなし

 むかしむかし。ずーっとむかしのことです。

 かみさまは言いました。

「新年の朝に、わたしのところにあいさつきた、1番から12番までの順番をつけて、1年交代で、その年を任せてあげましょう」

 それを聞いた、それぞれの動物のおさは、若い動物たちを、かみさまのもとに行くようにめいじました。

 うしさんは足がおそいので、前日の夕方に出発していました。

 朝、太陽がのぼりきる前。
 それぞれの動物が、かみさまのもとに、走りだします。

 体のちいさなねずみさん。
 おさに言われて、いちもくさんにかけだします。

「うしさん、うしさん」

 前日に出発したうしさん。

 とっくに先頭を、追い抜かれていました。
 すっかりあきらめていたうしさんに、ねずみさんが声をかけます。

「こっちだよ」

 ねずみさんは、かみさまのもとに行く、近道を知っていたのです。

「どうして、教えてくれるんだい?」

 うしさんは、聞きました。

 どの動物も、われさきにと、ほかの動物には目もくれません。

 なのになぜ、ねずみさんはうしさんに、近道を教えてあげるのか。

 うしさんは警戒しています。

 ねずみさんは、言いました。

「うしさんが、1番になったら。きっとみんな、おどろくよ、そしたらきっと、うしさんのことを、バカにする動物はいなくなる」

 そうなのです。うしさんは、足がおそいことから、ほかの動物に、いつもバカにされて、笑われていました。

「さぁ、はやく。ここを行けば、うしさんが、1番だ」

 うしさんは、ねずみさんの言葉を信じました。

 ねずみさんを頭の上にのせて、かみさまのもとに向かいます。

 「さぁ、うしさん。かみさまの、おやしきについたよ」

 近道は、ほんとうに近道でした。

 ふりむいても、まだほかの動物はいません。
 2匹が1番のり。

 「ねずみさん。ありがとう」

 うしさんは、お礼を言いました。

 「いいんだよ。さぁ、はやくいって」

 うしさんは、くびをフイッとふりました。

 頭に乗っていた、ねずみさんがとばされて、なんと!1番にゴールしました。

 続いて、うしさんがゴール。

 ねずみさんは、なにがおきたのかわかりません。

 「ねずみさん。ほんとうに、ありがとう。きみのやさしさは、とてもうれしかったよ」

 空のように、晴れ晴れとした顔でらうしさんは、言いました。

 バカにされるだけの人生で、うし仲間以外に、こんなにやさしくされたのは初めて。

 1番じゃなくていいのです。
 うしさんは、ねずみさんのきもちが、うれしかったから。

 心がぽかぽかしたのです。

 太陽に照らされているかのように、あたたかくて、こんなにも自分のことを考えてくれた、ねずみさんに、恩返しをしたくなりました。

 立派なものをもらったのに、うしさんには、返せるものがありません。

 うしさんは、考えました。

 この気持ちは、どうやったら伝わるのか。

 そして、思いついたのです。

 年の始まりは、ねずみさんであるべきだと。

 これは、恩返し。
 近道を教えてくれた、お礼ではありません。

 「よくきたね。さ、これをうけとって」

 かみさまは、光る石をくれました。

 ほかの動物たちがくるまで、やしきの中で待っているようにと、言いました。

 2匹は、くびをよこにふります。

 ほかの動物を、ここでまつと言います。

 すこしおくれて、動物たちの姿が、見えはじめました。

 最初はとらさん。

 その後ろには、うさぎさん。

 りゅうさんが、空を飛んできます。

 へびさんが、草の根からあらわれました。

 風をきって、うまさんが走ってきます。

 ひつじさんは、汗をかきながら到着。

 おさるさんと、いぬさんは、ぼろぼろでした。
 途中で、けんかをしたようです。

 ですが、仲直りをしたのか2匹は、ならんで走っています。

 2匹仲良くゴール……ではありませんでした。

 2匹のあいだを、にわとりさんが走ってきます。
 ものすごいスピードです。

 にわとりさんは毎日。朝を知らせるのが役目。
 ほかの動物よりも、でおくれていました。

 にわとりさんの、いきおいにおされて、おさるさんの足が先についてしまいました。

 その次に、にわとりさん、いぬさん。


 とんでもないことを、してしまったと、にわとりさんは、2匹に謝りました。

 でも、2匹はま怒りません。

 これは、競走。12番までに、到着しなければならないのです。

 最後に、いのししさん。山から一直線に、ここまで走ってきました。

 さぁさぁ、これで。12匹の動物が、そろいました。

 動物たちは、かみさまのあとをついていき、やしきの中に入っていきます。

 ねずみさんは……ただじっと、そこから動きません。
 だれかを待っているようです。

 「ねこさん。どうしてこないんだい」

 ねこさんは、足がはやいです。
 お祭りが、大好きです。

 この集まりに、参加しないわけがありません。

 「ねずみさん。どうしたんだい。はやく、いこう」

 うしさんに、声をかけられました。

 ねずみさんは、何度もふりかえります。
 ですが、そこにねこさんの姿は見えません。

 新年を迎えて今日は、宴会が開かれます。

 12匹の動物と、かみさまでおこなわれる、特別な宴会。

 それは、たのしい宴会。

 ねずみさんだけが、かなしい顔をしていたことに、だれも気付きませんでした……。
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

ねこさんねこさん、どこいくの

田村ケンタッキー
児童書・童話
寒い冬の夜。 外に締め出されてしまった猫はどこへ行くのだろう。 心配になったひなたちゃんは雪の上に残る足跡を頼りに猫を追う。 その先にはたくさんの不思議なことが待っていた。

お月さまのポケット

ほしみ
絵本
静かな夜。 小さなうさぎのミーミは、まんまるお月さまに出会いました。 お月さまのおなかには、ふしぎなポケット。 そこには、だれかの大切な「なにか」が、やさしくしまわれています。 お月さまとミーミの、小さくてあたたかな夜のお話。 ※単体のお話として完結しています ※連載中の投稿作品「人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―」の作中作の絵本

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

魔女のために泣いた王子様

あいみ
児童書・童話
魔女は人を食べます。 魔女は人に呪いをかけます。 魔女は200年生きています。 魔女は……孤独でした。 魔女は……。