[完]“ね”の物語

あいみ

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ねこのはなし

 ねこさんは、お祭りが大好き。
 それと同じくらい、寝るのも大好き。

 かみさまが、動物たちに呼びかけたひ、ねこさんは寝ていました。

 日差しがぽかぽかで、気持ちよかったのです。

 起きたときには、もうすっかり夜。

 ねこさんは、ほかの動物とちがい、1匹だけです。
 でも、それをさみしいと思ったことはありません。

 なぜなら。ねこさんの周りには、たくさんの動物がいたからです。

 「ねこさん、ねこさん」

 夜道をお散歩していると、ねずみさんのおさが、ねこさんを呼びとめました。

 「やぁやぁ、ねずみさんのおささん」
 「聞いたかい?かみさまが、年明けの、1月2日。動物を集めるらしいよ」
 「元旦じゃなくてかい?」
 「元旦は、ゆっくりすごしてほしいと、かみさまが言っていたよ」
 「かみさまのもとに集まって、何をするんだい?」
 「12番目までに、きた動物に1年ずつ交代で、年を任せてくれるんだ」
 「そうか!ねずみさんのおささん。わざわざ、教えてくれて、ありがとう」
 「おやすいごようさ」

 ねこさんが、わくわくと胸を踊らせているなか、ねずみさんのおさは、しめしめと笑っています。

 ねこさんは、足がはやいので、競走したら負けてしまいます。

 勝負になるのは、とらさんやうさぎさん。
 空を飛ぶりゅうさん。
 ちいさなねずみさんでは、勝てないでしょう。

 ねずみさんのおさは、ねずみさんが、12番目までに入れるようにしたのです。

 いたずらではなく、あとで、ごちそうをもって謝りに行ばいいと、そう思っていました。

 年が明けました。元旦です。

 初日の出をながめていたねこさんは、明日が待ち遠しかったのです。

 明日のために、体力を温存しておかなければ。

 ねこさんは、そわそわしながら、体をゆらします。

 朝が終わり、夜がきて。また、朝がきました。

 さぁ、ねこさんは出発しました。

 風をきるはやです。

 かけだしながらねこさんは、ほかの動物を1匹、見ないことをふしぎに思います。

 ですが、立ち止まれません。
 もしかしたら、みんなはずっっとずっと前に、いるかもしれないからです。

 「かみさま、かみさま!ねこが到着しました」

 結局、だれとあうことなく、かみさまのもとに、たどり着いたねこさんは、やしきの門をたたきます。

 「おや、ねこさん。今日は何か、約束をしていたかな?」
 「かみさまが、新しい年を任せてくれると聞いて、やってまいりました」

 ねこさんは、うれしそうでした。

 かみさまは、かなしく笑いました。

 「ねこさん。それはね、昨日のことなんだよ。でも、せっかくきたんだ。新年の宴会を、2人でやろう」
 「……いいえ。帰ります。かみさま、ありがとうございます」

 かみさまのやさしさは、ほんのすこしだけ、ねこさんの心を、救ってくれました。

 かみさまは、すべての動物に、手紙を書くべきだったと、後悔しました。

 ねこさんの、さみしそうな背中。
 ねこさんが、寝るのが好きなことを、かみさまも知っていたのに。


 あぁ、間違えた。あんなにも、たのしみにしてくれていたのに。


 「すまない、すまない。ねこさん」

 かみさまの謝罪は、ねこさんには、届きません……。

 それから、かみさまは。何かを伝えるとき、手紙を書くことにしました。
 ですがそれは、また別のお話。



 とぼとぼと、重たい足取りで帰りつくと、湖の周りで12匹の動物が、さわいでいるのを見ました。

 ねずみさん。うしさん。とらさん。うさぎさん。りゅうさん。へびさん。うまさん。ひつじさん。さるさん。にわとりさん。いぬさん。いのししさん。

 宴会の中心にいるのは彼らです。

 彼らは、干支、になったのです。
 1年の年を、任せられる、特別な動物。

 しかも、ねずみさんは1番。
 “始まりの年”です。

 干支になった彼らは、十二支と、呼ばれるようになりました。

 ねこさんは……くるりと背を向けて、行ってしまいます。

 歩くたびに地面が濡れていました。

 ねこさんは、泣いてました。

 涙を拭くことなく、だれも近づかない、鬼岩の洞窟に入っていきます。
 ここなら、冷たい風に吹かれることはありません。
 その代わり、月も星も見えません。

 ねこさんは、泣きました。
 体を丸めて、ぽろぽろと。

 暗い暗い、洞窟の中で。たった1匹で。

 参加できなかったことよりも、嘘をつかれたことよりも、それほどまでに、嫌われていたことに、泣きました。


 何か、悪いことをしただろうか?

 ひどいことを、言っただろうか?


 ねこさんには、思い当たりませんでした。

 ねこさんと、ねずみさんは、特別仲が悪いわけではありません。

 すれ違ったら、あいさつをするていどですが、ほんとうに、仲は悪くありません。

 それでもねこさんは、ねずみさんを、責めることはなかったのです。
 かみさまが、伝えてくれた日、寝ていた自分が悪いのだと。

 かみさまから、年を任せられるなんて、名誉なこと。
 だれだって、その座は欲しいのです。

 もしも、立場が逆だったら。ねこさんも、ねずみさんに同じことを、したかもしれません。
 だから、怒れませんでした。
 そんなことを、してしまった気持ちが、わからないわけではないから。

 寝ていた自分が、悪かった。
 ねこさんは、自分を責めました。

 泣いて、泣いて、泣き続けけるねこさん。

 たった1匹で、かなしみに暮れながら。
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