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第一章
ドラゴンの接触
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今日のお茶会はとても有意義だった。
なんといっても新しい友達が出来た。それが私の中で一番の収穫。
今度、彼女達と買い物に行く約束もした。時間の無駄だと思っていたことが、こんなにも楽しみになるなんて。プレッシャーと責任に追われていた昔の自分に教えてあげたい。
肩の力を抜いていいんだよって。
頑張らなくていいんだって。
ただのアリアナ・ローズを見てくれる人はたくさんいた。
「お嬢様。顔が緩んでますよ」
「ニコラ。今日ぐらいは家に帰ってもいいのに」
お茶会を終えると、貴族令嬢から侍女へと戻った。
私と違って家族と仲が良いのに。まさか侍女生活に満足してるなんてないよね?
ありえてしまいそうなのが怖い。
ニコラ・ロベリアとして自己紹介をしていたとき、随分と騒がしい空気になったと教えてくれた。
病弱なお嬢様がにこやかで元気良く現れたら、誰だって状況は飲み込めない。
公爵家に生まれながらも、自らの夢のために努力を惜しまないニコラの姿勢は評価された。
誰も病弱設定を咎めることもなく、円満な人間関係を築き上げる。
それどころか私よりも多くの令嬢と友達になっていて、それだけは羨ましい。
帰り際、シャロンに落ち込むことはないと慰められた。
ニコラと友人になった彼女達な皆、私のファンで私専属の侍女が羨ましくて仲良くなった、言わば下心。
それでも羨ましいものは羨ましいのだ。
主である私の情報を彼女達に流したりするわけはないだろうし、彼女達も聞いたりはしないはず。その辺りはちゃんとお互いに弁えている。
「近々、誕生日なので、そこで帰る予定です」
「そうなの?じゃあ私のプレゼントも渡してもらおうかしら」
「本当ですか!?妹も喜びます」
私が心配しなくても家族の時間は築いていた。
誕生日なんて家族から祝ってもらった覚えはない。“無駄”だから。
お父様は男女差別を意識している節もあった。
家門を継ぐのは男。期待するのも男。女は政略結婚のための道具。
完璧な淑女を求める割に、男より秀でた才を持つのは許さない。常に男を立てることこそが女の真の役割。それがお父様が望む夫婦の間。
それはつまり、夫が事業に失敗しようが、借金まみれで没落させようが、「すごいね」とか「貴方にしか出来ないわ」とか褒めろと?
バカみたい。最もらしいことを並べてるけど要は、女はでしゃばるな。そう言いたいんでしょ。
今にして思えはエドガーもお父様タイプだったのかもしれない。
それならヘレンをパートナーに選んだ理由もわかる。ヘレンは何でもかんでも褒めて、とにかく相手を気持ち良くさせる。
エドガーは自分を立てて欲しかったの?そんな素振りは一度も見たことがない。
プライドの高いエドガーが自分を「褒め讃えろ」なんて口が裂けても言うはずはないか。むしろこちらが察して当たり前と上から目線。
一歩後ろに下がって出しゃばらないのがエドガーの求める理想の女性。
「ニコラ。今日はお疲れ様。ゆっくり休んでね」
「お嬢様もですよ。夜更かしはダメですからね」
騎士のラード卿がニコラを部屋を送ってくれた。とは言っても隣なんだけどね。
一介の侍女であるニコラに個室か与えられたのは何かあったときすぐに駆け付けられようにとディーが配置した。
そんなことを認めるようなお父様ではないけど、王命である以上は逆らえなかった。
使っていない空き部屋はあるわけだし、そんなに文句があるならヘレンの専属侍女にも部屋を与えてもらえればいい。
ニコラばかりが特別扱いするのがズルいと言うのであれば。
すぐ近くの距離で、なんなら私の部屋の前にはウォン卿もいる。
起こりうるかもしれない万が一に備えて、一瞬たりとも護衛を怠らない。
これが本来の騎士の在り方。
カストも最初は純粋に騎士だったはず。狂ってしまった運命の分岐点はやはりヘレンが来てから。
どこかの国では人を惑わせ破滅に追い込む女性を魔女と呼ぶ。
悪女なんかよりもよほどしっくりくる。
「その魔女が国母となった世界を見てみたくはないかい」
頭の中に直接語りかけてくるその声は忘れることのない、私の命を救ってくれた恩人。
「どこにいるの。初代陛下の元に逝かなかったの」
「姿は見せられない。賢い君ならこの意味がわかるだろう?」
「そうね。ドラゴンがこんな街中で姿を現すわけにはいかないのと、もうこの世にはいない。かしら?」
「そんな僕がなぜ再び君とコンタクトを取ったかわかるかい」
「簡単よ。生まれたときから家族に裏切られ、愛して欲しかった最愛の彼らに利用された私を哀れんでいるのでしょう」
「全然違う」
ドラゴンはやれやれといった感じのため息をついた。
他の理由なんて見当もつかない。
考えてみるも、やはりそれ以外で私に接触してくる理由はないはず。
同情や哀れみでなければ、私を気にかけてくれる理由とは一体。
「それこそ簡単なことだ。彼に愛されていた。それだけだ」
「偉大なるドラゴンがそんなことで?」
「それが条件だったから」
「そうだったわね」
「アリアナ・ローズ。君を愛した男が、君が亡き世界で何をしたか見届けておいで」
急激な眠気に襲われる。瞼が閉じると、幸せや平和とは縁遠い悲惨な国の結末を目にした。
なんといっても新しい友達が出来た。それが私の中で一番の収穫。
今度、彼女達と買い物に行く約束もした。時間の無駄だと思っていたことが、こんなにも楽しみになるなんて。プレッシャーと責任に追われていた昔の自分に教えてあげたい。
肩の力を抜いていいんだよって。
頑張らなくていいんだって。
ただのアリアナ・ローズを見てくれる人はたくさんいた。
「お嬢様。顔が緩んでますよ」
「ニコラ。今日ぐらいは家に帰ってもいいのに」
お茶会を終えると、貴族令嬢から侍女へと戻った。
私と違って家族と仲が良いのに。まさか侍女生活に満足してるなんてないよね?
ありえてしまいそうなのが怖い。
ニコラ・ロベリアとして自己紹介をしていたとき、随分と騒がしい空気になったと教えてくれた。
病弱なお嬢様がにこやかで元気良く現れたら、誰だって状況は飲み込めない。
公爵家に生まれながらも、自らの夢のために努力を惜しまないニコラの姿勢は評価された。
誰も病弱設定を咎めることもなく、円満な人間関係を築き上げる。
それどころか私よりも多くの令嬢と友達になっていて、それだけは羨ましい。
帰り際、シャロンに落ち込むことはないと慰められた。
ニコラと友人になった彼女達な皆、私のファンで私専属の侍女が羨ましくて仲良くなった、言わば下心。
それでも羨ましいものは羨ましいのだ。
主である私の情報を彼女達に流したりするわけはないだろうし、彼女達も聞いたりはしないはず。その辺りはちゃんとお互いに弁えている。
「近々、誕生日なので、そこで帰る予定です」
「そうなの?じゃあ私のプレゼントも渡してもらおうかしら」
「本当ですか!?妹も喜びます」
私が心配しなくても家族の時間は築いていた。
誕生日なんて家族から祝ってもらった覚えはない。“無駄”だから。
お父様は男女差別を意識している節もあった。
家門を継ぐのは男。期待するのも男。女は政略結婚のための道具。
完璧な淑女を求める割に、男より秀でた才を持つのは許さない。常に男を立てることこそが女の真の役割。それがお父様が望む夫婦の間。
それはつまり、夫が事業に失敗しようが、借金まみれで没落させようが、「すごいね」とか「貴方にしか出来ないわ」とか褒めろと?
バカみたい。最もらしいことを並べてるけど要は、女はでしゃばるな。そう言いたいんでしょ。
今にして思えはエドガーもお父様タイプだったのかもしれない。
それならヘレンをパートナーに選んだ理由もわかる。ヘレンは何でもかんでも褒めて、とにかく相手を気持ち良くさせる。
エドガーは自分を立てて欲しかったの?そんな素振りは一度も見たことがない。
プライドの高いエドガーが自分を「褒め讃えろ」なんて口が裂けても言うはずはないか。むしろこちらが察して当たり前と上から目線。
一歩後ろに下がって出しゃばらないのがエドガーの求める理想の女性。
「ニコラ。今日はお疲れ様。ゆっくり休んでね」
「お嬢様もですよ。夜更かしはダメですからね」
騎士のラード卿がニコラを部屋を送ってくれた。とは言っても隣なんだけどね。
一介の侍女であるニコラに個室か与えられたのは何かあったときすぐに駆け付けられようにとディーが配置した。
そんなことを認めるようなお父様ではないけど、王命である以上は逆らえなかった。
使っていない空き部屋はあるわけだし、そんなに文句があるならヘレンの専属侍女にも部屋を与えてもらえればいい。
ニコラばかりが特別扱いするのがズルいと言うのであれば。
すぐ近くの距離で、なんなら私の部屋の前にはウォン卿もいる。
起こりうるかもしれない万が一に備えて、一瞬たりとも護衛を怠らない。
これが本来の騎士の在り方。
カストも最初は純粋に騎士だったはず。狂ってしまった運命の分岐点はやはりヘレンが来てから。
どこかの国では人を惑わせ破滅に追い込む女性を魔女と呼ぶ。
悪女なんかよりもよほどしっくりくる。
「その魔女が国母となった世界を見てみたくはないかい」
頭の中に直接語りかけてくるその声は忘れることのない、私の命を救ってくれた恩人。
「どこにいるの。初代陛下の元に逝かなかったの」
「姿は見せられない。賢い君ならこの意味がわかるだろう?」
「そうね。ドラゴンがこんな街中で姿を現すわけにはいかないのと、もうこの世にはいない。かしら?」
「そんな僕がなぜ再び君とコンタクトを取ったかわかるかい」
「簡単よ。生まれたときから家族に裏切られ、愛して欲しかった最愛の彼らに利用された私を哀れんでいるのでしょう」
「全然違う」
ドラゴンはやれやれといった感じのため息をついた。
他の理由なんて見当もつかない。
考えてみるも、やはりそれ以外で私に接触してくる理由はないはず。
同情や哀れみでなければ、私を気にかけてくれる理由とは一体。
「それこそ簡単なことだ。彼に愛されていた。それだけだ」
「偉大なるドラゴンがそんなことで?」
「それが条件だったから」
「そうだったわね」
「アリアナ・ローズ。君を愛した男が、君が亡き世界で何をしたか見届けておいで」
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