レティシアお嬢様、今日もやらかす 〜見習い天才魔術師と愛のお仕置き〜

聖sai

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第二話 討伐隊より早く倒すのって、そんなに悪いことなの?

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 今朝は、ちょっと変な風が吹いていた。

 いつもと同じように、魔導塔の窓から領地の空気を感じてたら──ピリッとした魔力の波が肌を刺したの。

「……ん?」

 魔術ノートを開いて、感知式の魔力探知陣を展開。

 周囲の空気をゆっくりスキャンして──確認完了。

「……中型魔物、王都とグラシエル領の間の森で活動中っと」

 わたし、レティシア・グラシエル。七歳にして魔術の天才。

 だからって、魔物を倒すのが趣味ってわけじゃないけど──でも、近くで暴れてるって聞いたら、ちょっと気になるでしょ?

「討伐隊が出る前に、さくっと片付けちゃおっかな♪」

 窓の外に視線をやると、すでに屋敷の使用人たちが慌ただしく動いてる。どうやら、騎士団への連絡は済んでるらしい。

 けど、どう考えても間に合わない。

 わたしのほうが早い。絶対。

「決まり。ちょっと実験がてら、行ってきまーすっ!」

 さりげなく家庭教師のポプリ先生の座学を“自主的にお休み”し、裏門へ向かう。

 袖には魔導具、足には軽装の外出靴と移動用の魔道具、そして結界突破用の魔術式も準備済み。

 さあ、さくっと出発──

「お嬢様! 門は立入──」

 使用人の声を背中で聞きながら、すり抜け魔法で結界を通過。

 庭師のおじさんが「またか……」って顔してたけど、まあ気にしない。
「いってきまーすっ♪」

 移動用魔道具を使い、少しだけ宙に浮き、滑るようにして高速移動する。これは、空を飛ぶ研究をしていたら出来た副産物だ。
 森の外れに着いたのは、それから十数分後。

 木々の隙間を抜けると、そこには──


「いたっ。やっぱりオーガじゃん。しかも2体。……でも、動きに緩みあり。距離、十二メートル。術式起動!」

 魔法陣、展開。

「氷結拘束魔法、範囲指定──発動っ!」

 ドシャアアアアア!!

 地面から氷柱が伸びて、オーガたちの脚を一瞬で凍らせる。

「よし、今のうちっ。封印術式・改良型、いっけぇぇえ!」

 魔導具を投げ込むと、閃光とともにオーガたちの身体が光に包まれて──

 ──消えた。

「はい、終了。今日も完全無欠の大☆勝利~!」

 自分でも拍手したくなるレベル。うん、完璧っ!

「さ、帰ろっか。あとは誰かがやってくれるでしょ」

 ──と思ったら。

「……お、お嬢様!? もう戦闘終わってる……!」

 騎士団より先に、屋敷の領地兵が二人、馬に乗ってかけつけた。多分私を連れ戻しに来たのだろう。

 二人とも呆れた顔してたけど、わたしはにこっ。

「じゃ、いっしょに帰ろ? おにーさんたち♪」


領地兵たちと一緒に屋敷に戻ったわたしは、そのまま書斎前室に連れていかれた。
そこで待っていたのは、涙ぐみそうな顔のエリィと、静かに佇むポプリ先生。

 ──エリィはすぐにわたしに駆け寄り、抱きしめてくれた。

「大丈夫……? 本当に……?」

「う、うん。平気。ちゃんと勝って、無傷で帰ってきたよ? 楽勝だった」

「よかった……っ、ほんとうに……よかった……!」

 泣きそうな声で、わたしの背を何度もなでて、頬を寄せてくれた。

 その腕の中は、あたたかくて、やさしくて──でも、長くは続かなかった。

「……お嬢様を、机のところへ」

 ポプリ先生の静かな声が背後から響いた。

 エリィはわたしを抱きしめたまま、少しだけため息をついて──それから、わたしの体をそっと放した。

「レティシア。立ってください」

「え、あ、えり──うわっ」

 わたしはポプリ先生に促されて、机の前に立たされる。
 その真正面に、エリィがまっすぐ立った。

 そのまま、机を挟んでエリィが両手を差し出し、わたしの手をつかむ。

「うつ伏せにしてください」

「……えぇぇぇっ!? ちょ、ほんとに!?」

 机の上には、何も置かれていなかった。
 ──最初から、わたしのために空けておいたのだろう。
 エリィにぎゅっと手を取られたまま引っ張られて、わたしの身体は机の上を滑り、両足が床から離れる──

 机の木の感触がほっぺたに冷たい。

 そして──
 背後から、スカートの裾がめくられた。

「ひぃっ!? ちょ、まって!?」

 続いてパンツが足元に落とされる。私のお尻が、ひんやりとした空気にさらされた。

 まるで儀式のように、無言で粛々と進むお仕置きの準備。
 ここで、ようやく気づく。
 ──今回の、お仕置きは本気の、本気だ……。


「ポプリ先生、お願いします」

「承知しました」

 ごく短いやりとりのあと、わたしの背後で“ピシィ”という音が鳴った。

 えっ?! もしかして──躾板(しつけいた)?! うそでしょ?!

「い、い、いやぁぁあああっ!! ちょ、やだっ、ほんとにそれで叩くのぉぉ!?」

 暴れようにも、エリィがわたしの手を机の上でしっかり掴んでいて、動けない。両足は宙に浮いたままだ。

「第一。座学をボイコット」

 パァン!!

「ぎゃああああっ!!?」

 ポプリ先生の叱咤とともに、お尻に鋭く、平たく、板がはね返るように打ちつけられた!

「第二。無断外出」

 バチィン!!

「ひいいっ!! い、いたいぃぃぃっっ!!」

「第三。魔物との交戦。……この三重の罪、重く受け止めていただきます」

 パァアアァン!!

「うぎゃああああああっっ!!」

 今までにないほどの衝撃! お尻全体が熱を持って、じんじんじんじん、燃えてるみたい!
 躾板って、こんなに痛いの!?

「暴れないでください。あと七発あります」

「ななぁっ!? ムリムリむりぃぃぃぃぃっ!!」

 でも、許されない。
 躾板の音は、冷たく無慈悲に繰り返された。

 パアン! パシィッ! ビシィィンッ!!

「ひぃぃっ! いったぁぁいっ!! やだ、もぉむりぃぃっ!! おしり割れるぅぅ!!」

「これは、あなたの命の話です。軽々しく扱ったこと、忘れないでください」

 ビシィィィンッ!!

「ぎゃぅっ!! やだやだぁぁっ!! うわああんっ!!」

 パアアァン!!

「うああああああんっ!! もう二度と行かないっ! 行かないからぁぁっ!!」

「よろしい。では最後に、確認の二発」

 パアンッ!! パァアアァン!!

「ふぎゃぁぁぁぁんっ!! ごめんなさい!! ごめんなさぁぁい!!」



 ──終わったころには、わたしは机の上でぐったり突っ伏していた。

 顔も涙でぐしょぐしょで、声も出ない。お尻はじんじん熱くて、ズキズキと痛みが脈打つ。どこも触れたくない。

 でも。

 手は、ずっと。エリィが、離さずに握っていてくれた。

「ほんとうに……無事で、よかったです」

 そっと、背中をなでてくれる手があたたかくて。

「……でも、つぎは……ちゃんと相談してくださいね。お願いですから……」

 わたしは、声を出すこともできずに、ただ──うなずくことしかできなかった。


 ──数日後。

「討伐成功により、被害ゼロとのこと。騎士団より礼状が届いております」

 オスカー執事が、いつもの無表情で報告してくれた。

 そして同時に、ママからの書状も届いた。
 わたしはそれに目を通す。

「勝手な行動については厳重注意を命じます、だってさ」

「よかったですね。王妃様から追加の罰がなくて」

「うん……」

 わたしは、もうすっかり良くなっいるお尻を、軽く撫でた。
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