長編官能ミステリー小説『セックス共有村訪問記』

露木阿乱

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第7章 日影村遺伝子

第7章 日影村遺伝子  その❷『初めてのカップル交換』

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 一夜のうちに事態が急変していた。 
 陳一派は天佑を残して姿が消えてしまっていた。
 日本語学校の三人の生徒は元郷土資料館に留まっていた。対応が早かったし、陳たちの準備が整っていなかったこともあって、早期撤退を決断したのかもしれなかった。
 心配なのは、陳たちの報復だった。日影村には、多くの秘密がある。性共有を軸とした共同体作り、違法スレスレのビジネスなど、それらを材料に陳たちに代替腹(だいたいばら)ビジネスへの協力を承諾させられていたのだ。
 しかし、陳たちの問題が起きる前から、ある程度の対策は用意していた。アテンダーGOROは、ビジネスを一時停止すればいいし、薬については比較的対策は容易だった。心配なのは、性共有の秘密と動画配信だった。
 とりわけ、性共有の証拠ともいえる闇祭りの動画や、村人参加のセックス動画などは、一旦、公開されると拡大を止めることはできない。もちろん、陳の問題が生じた後、早急に過去動画の海外サーバーへの移転を行なった。
 救いは、事態が急変したためか、陳たちが動画類のデータに手をつけていなかったことだった。考えてみれば、動画類の中には彼らの映像も含まれていた。選別して配信する余裕がなかったのかも知れなかった。もう一つの救いは、昨夜、女医者たちを救った際、天佑が林の携帯を奪ったことだった。三郎太は、この携帯を用いて陳たちの先手をうとうと考えていた。

 午後になると、村役場の会議室で今回の事態の収拾策が検討された。村の主要メンバーの他に、GOROや三郎太、花音、源さんらが集まっていた。ここで、モニターによる善一郎からの報告があった。女医者も昨夜のダメージは残っていないようだった。

「陳たちは、違法滞在ということで全国手配となりました。とりあえず今回の件は、公にはならないと思います。中国にしても、日本国内で、代替腹ビジネスを計画していたことが知られることは、国際的にも大きなマイナスになりますから。それから、肥田さんは、陳以外の問題については、公安が関わることではないと話していました」 

 善一郎との通信が終わった後で、花音が女医者に問いかけた。これは昨日の日影村遺伝子の話の折から感じていた疑問だった。

「先生は、昨日、日影村遺伝子を持たない女性は、百%妊娠できないと言われました。それなのに、遺伝子を持たない、あのレズビアアンカップルへの受精を行っています。また、この村にも源さんの義妹の佳奈美さんのように、他の町から来られたかたが数名います。みなさん子供さんをお持ちですよね?」

 花音の疑問に女医者は笑いながら答えた。

「よく気がつきましたね。昨日、陳たちが気づかなくてホッとしました。あれは半分嘘です。遺伝子のことは本当ですが。遺伝子を持たないと妊娠できないことも七年前までは事実でした。当時、遺伝子については不明でしたが、村外から嫁いで来た人に子供がいないことに気がついたのです。原因を調べているうちに、村の水に原因があることが判明しました。その対策のため、サプリメントを作ったのです。今では、サプリメントを毎日、一錠飲めば妊娠可能です。花音さんも妊娠できますよ」

 そして、女医者は核心に触れ始めた。

「このことが分かる前は、日影村生まれの人以外は、子供ができないと言われていました。日影村の性の共有化もこれが原因でした。日影村のタネを残すために、できるだけ大勢の村人同士のセックスを進めたのです」

 この計画によって、日影村遺伝子が村内に拡がっていったのだった。
 会議が終わると、花音たちは村会議長宅から、村の保養所に戻ることになった。1週間近くの間、夜になると村人が訪れ、四人とセックスをしたあの保養所である。
 保養所に着くと、四人で岩風呂に出掛けた。
 裸になると、亮介と昭夫の全身に昨夜の打撲の後が、痛々しい傷跡として残っていた。二人とも「大丈夫」とはいうものの、歩様が少しぎこちなかった。

「頭とここ(ペニス)を護るのに精一杯だったから、他はやられ放題だった」

「ごめんね。わたしのためにこんな目にあって」

 あのまま、陳たちに連れて行かれていたら、なぶりものにされ、雑巾のように打ち捨てられていたに違いなかった。
 浴室に入ると花音は、亮介と昭夫の手を取って洗い場に連れて行って。

「昨日のお礼に、二人の体を洗わせて」

 唯花に目で許可をとっている。唯花は花音の言葉に少し驚いた。お互いのセックスを見せ合うことはあっても、昭夫の身体に進んで触れることはなかった。

「いいよ。昭夫のチンチンもしっかり洗ってやって。ついでに舐めてやるともっと喜ぶよ」

 唯花がふざけ半分に囃し立てる。自分たち四人は、日影村に来た日から想像できないほどの体験をした。特に処女だった花音は、数えきれないほどの凌辱を受けている。それでも、この明るさと健気(けなげ)さを失っていない。こんな花音を、唯花は永遠の親友だと思っていた。 
 まず、いつものように、亮介の身体を洗い始めた。

「昨日はありがとう。私のために頑張ってくれて」

 そう言いながら全身を洗い、最後にペニスを口に含む。これは花音たちの最近のルーティンだった。時には射精したいと言えば、リクエストに応えてくれることもあった。今日の花音は、亮介を簡単に済ませ、昭夫にかかり始めた。
 昭夫の陰部以外を洗い終わる頃には、ペニスは天を突くほどに勃起していた。

「すこしは遠慮しろよ。花音のお礼の気持ちにつけ込んで!」

 亮介が、怒り顔で言う。

「いいの、本当にお礼をしたいんだから」

 そう言いながら、手洗いしたペニスをパクリと咥え込んだのだった。亮介はもちろん昭夫も驚いている。それから肉茎を扱(しご)きながら頭を前後に動かし始めた。
 そんな花音の思いがけない行動を目の当たりににして、ショックのためか亮介のペニスは勢いをなくしていた。唯花は、この花音の有り様を目を輝かせながら見ていた。

「出してもいいのよ。昭夫の精液、受け止めさせて」

 無理矢理、射出されたり流し込まれた以外、花音が自ら進んで、口内への射精を求めたことはなかった。やはり、大きな心境の変化があったに違いなかった。
 花音は、すでにその気になっているのだろう。亀頭の周囲を舌や唇で刺激し、握りしめた手のひらで肉茎を強く摩擦していた。

「本当にいいんだな。出すよ」

 ずっとセックスしたいと願っていた、花音の口中に射精できるのだ。至福の一時を楽しみたいと思った。亮介には悪いと思っている。しかし、これは花音自らが望んだことだった。 
 花音の眼差しが、射精を誘っているように感じた。そう感じた途端、昭夫は勢いよく欲望を吐き出していた。 口中に溜まった白濁液を花音は、一気に飲み干すと、唯花に笑いかけた。

「花音どうしたの? どんな心境の変化?」

 少し心配になって、唯花が聞いた。花音は口をつぐんだままだった。
 浴槽で温まりながら、亮介に身体をあずけ、うっすらと目を開けたまま遠くを眺めている。亮介は花音の身体をしっかり抱きしめた。微かに鼓動は伝わってきたが、花音の心の中まではわからなかった。

「私、昭夫や唯花と心も体も繋がった友達になりたい。昨日、私を助けてくれてよく分かったの」

「それは簡単にいうと、四人でセックスしたいということ?」

 唯花がストレートに聞くと、花音が小さく頷いた。

「助けてくれたから、友情の確認のためにセックスする」は、理屈に合うかどうかはわからない。しかし、セックスまで繋がった友情でありたい、というのが花音の正直な、気持ちなのだろうと思った。
 対して、亮介は、花音の乳房をゆっくり撫でながら、複雑な表情を見せていた。しかし、闇祭りの種付けの際、亮介は唯花の肉壺に挿入していた。当時、唯花は種付けのための当て馬だったため、射精はしていなかったが、二人は繋がりあっていたのだ。だから、昭夫に花音とセックスするなとは言えなかった。
 そんな複雑な亮介の心境を知らずに、

「唯花、私が昭夫とセックスしてもいい?」

 花音は、唯花に昭夫とのセックスの許可を求めている。

「もちろんいいよ。その方が楽しいし」

 唯花が拒否するはずがなかったし、昭夫に異存があるわけがなかった。 岩風呂を出て保養所に戻ると、亮介と唯花が、昭夫と花音がカップルになって布団に入った。

「花音とこうなりたかった。亮介には悪いけど」

 昭夫は、唇を合わせると、花音をギュッと抱きしめた。


(つづく)
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