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「保護犬センターで出会った犬は、なぜか私になつき家まで追いかけてきた」
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あるPR誌のライターをしていた時、保護犬の活動をしているセンターを取材したことがあった。
盲導犬や聴導犬(ちょうどうけん)、セラピー犬などの取材をしたことはあったが、保護犬については初めてだった。保護犬の多くが、飼い主に捨てられたり、はぐれたり、あるいは野良犬として生まれてきた犬たちだった。
そのため、人間に不信感を持ったり、恐怖心をかかえた犬たちが多かった。小さな体で、びっこをひきながら、ボランティアの小学生を追いかけ回している犬もいた
そんな中で、先ほどから私をじっと見つめている、中型の柴犬がいた。
私が呼ぶと、尻尾を振りながら近づいてきた。
「あら、どうしたのかしら珍しい」
スタッフの女性は、その犬は、知らない人には吠えはしても、尻尾を振ることなどなかったと、不思議がっていた。
私は犬が大好きだった。
それを聞いて、「やはり、犬好きな人はわかるのね」と納得していた。
一時間ほどの取材が終わり、帰ろうとすると、犬は離れようとしない。
私も、その犬の表情が愛らしいだけでなく、どことなく懐かしさを感じていた。
スタッフは、犬の気持ちを察して、「連れて帰ってくれません。
こんなこの子の姿初めてなんです」と、私に飼い主になることを提案した。
私もそうしたい気持ちはあったが、自宅のマンションは犬猫禁止だった。
抱きしめて、幾度も頭を撫でた。犬は尻尾を垂らして、悲しそうにワンとひと泣きした。
ある日の夕方、取材の際に会った、女性スタッフから電話が入った。
あの犬が、午後の散歩の際に逃げ出して、帰って来ないと言うのだ。
「私の家を知らないはずだから、こちらに来るはずがない」と答えると、スタッフは、「そちらに行ったような気がするんです」と言い続けていた。
根負けした私は、「万一、こちらに来たら、ご連絡しますから」。
そう告げて、電話を切った。
その時だった、遠くで犬の鳴き声が聞こえた。
私は、まさかと思いながら家を飛び出し、声の主を探した。
信じがたいことだが、あの犬だった。
私を見つけると嬉しそうにじゃれついてきた。
私の家と施設は、歩いて三十分以上の距離があったが、来れない距離ではない。しかし、匂いをたどって来たのかもしれないが、あの日はタクシーで帰宅していた。
急いで、保護犬センターのスタッフに電話して、迎えに来てもらうことにした。
ただ、私は決めていた。今のマンションを出て、この犬と住める部屋を探そうと。それまでは、センターであずかってもらうつもりだった。
翌日から、部屋探しをしながら、犬に会いに行った。
それから程なくして部屋が決まり、犬を迎えることになった。
名前は決めていた『マル』だ。
私が小学校の頃、飼っていた愛犬の名前だった。
新しい部屋にマルを招き入れた際、彼はしばらく辺りの匂いを嗅(か)いでいた。私が呼びかけると、すぐに体を擦(こす)り付け、甘える仕草で顔を近づけてきた。
パソコンに向かって仕事をしていると、退屈そうにこちらを見つめている。
ところが、突然、何かに向かって吠(ほ)え始めたのだった。
他の部屋の迷惑になるため、吠えるのをやめさせようとしたが、一向におさまらない。吠えている先を見ると、そこには昔の愛犬、マルの首輪が置いてあることを思い出した。
引っ越しした際、記念に取っておいた首輪を見つけて、箪笥(たんす)の上に置いていたのだった。
首輪を見せると、マルはピタリと鳴きやんだ。
そして、その首輪から離れようとしなかった。
その姿を見て、ある想いが浮かびあがった。
「この犬は、死んだマルの生まれ変わりに違いない」と。
そう考えると全てに納得がいった。
初めて会った私を懐(はつ)かしむようだったこと、家を探してやってきたこと、そして、首輪を離そうとしないこと。
その夜、マルと同じベッドで眠った。小学校のころの自分に戻った気分になっていた。
盲導犬や聴導犬(ちょうどうけん)、セラピー犬などの取材をしたことはあったが、保護犬については初めてだった。保護犬の多くが、飼い主に捨てられたり、はぐれたり、あるいは野良犬として生まれてきた犬たちだった。
そのため、人間に不信感を持ったり、恐怖心をかかえた犬たちが多かった。小さな体で、びっこをひきながら、ボランティアの小学生を追いかけ回している犬もいた
そんな中で、先ほどから私をじっと見つめている、中型の柴犬がいた。
私が呼ぶと、尻尾を振りながら近づいてきた。
「あら、どうしたのかしら珍しい」
スタッフの女性は、その犬は、知らない人には吠えはしても、尻尾を振ることなどなかったと、不思議がっていた。
私は犬が大好きだった。
それを聞いて、「やはり、犬好きな人はわかるのね」と納得していた。
一時間ほどの取材が終わり、帰ろうとすると、犬は離れようとしない。
私も、その犬の表情が愛らしいだけでなく、どことなく懐かしさを感じていた。
スタッフは、犬の気持ちを察して、「連れて帰ってくれません。
こんなこの子の姿初めてなんです」と、私に飼い主になることを提案した。
私もそうしたい気持ちはあったが、自宅のマンションは犬猫禁止だった。
抱きしめて、幾度も頭を撫でた。犬は尻尾を垂らして、悲しそうにワンとひと泣きした。
ある日の夕方、取材の際に会った、女性スタッフから電話が入った。
あの犬が、午後の散歩の際に逃げ出して、帰って来ないと言うのだ。
「私の家を知らないはずだから、こちらに来るはずがない」と答えると、スタッフは、「そちらに行ったような気がするんです」と言い続けていた。
根負けした私は、「万一、こちらに来たら、ご連絡しますから」。
そう告げて、電話を切った。
その時だった、遠くで犬の鳴き声が聞こえた。
私は、まさかと思いながら家を飛び出し、声の主を探した。
信じがたいことだが、あの犬だった。
私を見つけると嬉しそうにじゃれついてきた。
私の家と施設は、歩いて三十分以上の距離があったが、来れない距離ではない。しかし、匂いをたどって来たのかもしれないが、あの日はタクシーで帰宅していた。
急いで、保護犬センターのスタッフに電話して、迎えに来てもらうことにした。
ただ、私は決めていた。今のマンションを出て、この犬と住める部屋を探そうと。それまでは、センターであずかってもらうつもりだった。
翌日から、部屋探しをしながら、犬に会いに行った。
それから程なくして部屋が決まり、犬を迎えることになった。
名前は決めていた『マル』だ。
私が小学校の頃、飼っていた愛犬の名前だった。
新しい部屋にマルを招き入れた際、彼はしばらく辺りの匂いを嗅(か)いでいた。私が呼びかけると、すぐに体を擦(こす)り付け、甘える仕草で顔を近づけてきた。
パソコンに向かって仕事をしていると、退屈そうにこちらを見つめている。
ところが、突然、何かに向かって吠(ほ)え始めたのだった。
他の部屋の迷惑になるため、吠えるのをやめさせようとしたが、一向におさまらない。吠えている先を見ると、そこには昔の愛犬、マルの首輪が置いてあることを思い出した。
引っ越しした際、記念に取っておいた首輪を見つけて、箪笥(たんす)の上に置いていたのだった。
首輪を見せると、マルはピタリと鳴きやんだ。
そして、その首輪から離れようとしなかった。
その姿を見て、ある想いが浮かびあがった。
「この犬は、死んだマルの生まれ変わりに違いない」と。
そう考えると全てに納得がいった。
初めて会った私を懐(はつ)かしむようだったこと、家を探してやってきたこと、そして、首輪を離そうとしないこと。
その夜、マルと同じベッドで眠った。小学校のころの自分に戻った気分になっていた。
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