追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

ケルベロス

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《第一章:価値ゼロ追放から始まる、世界核錬金術師レオンの逆転劇》

第4話 本編:封印文書と王国の影

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リーテとの戦闘を終えたあと、俺は北部の廃鉱を離れ、  
さらに奥地へと続く古い街道へ足を進めていた。

目的はひとつ──  
“世界核素材”に関する正確な情報を得ること。

王国の記録庫には、世界核についての古文書があるはずだ。  
追放された身ではあるが、錬金術師団の下っ端として働いていた頃、  
その存在だけは何度か耳にした。

(記録庫そのものは強固な警備だが、王城の外に“副次保管庫”がある)

そこに向かうため、俺は森の中を抜ける。

途中、小さな村に立ち寄った。  
村人が怯えた顔で話す。

「……空が、昨日から二度も揺れたんだ。  
 まるで世界が、軋んでるような……」

(やはりか。世界核の不均衡が始まっている)

王国が盗んだ素材。  
最適化教団のゼロが狙っていた“紅核石”。  
二つが動けば、世界の理に乱れが出て当然だった。

「村に害は?」

「今のところは……だが、動物たちが妙に暴れてな……」

(世界核の波動に反応しているのだろう)

俺は村に短時間の防壁陣を描いて渡し、街道へ戻った。



目的の副次保管庫は、山腹に隠されていた。  
古い石造りで、天井までびっしりと封印術式が刻まれている。

(内部の文書は生半可な者では触れない。  
 だが俺は錬金術で、封印の構造を“逆算”できる)

試しに指を触れると、封印陣が淡い光を放ち、  
俺の純度100%精製魔力を読み取り始めた。

「……やはり。俺の血筋に反応するのか」

以前から薄々気づいていた。  
俺の精製能力は先天的で、王家に伝わる古い錬金術の血統と似ている。

封印陣が音もなく開き、中へ。

中は巨大な書架が並ぶ、半地下の書庫だった。  
ここに世界核の本質が記されている“封印文書”があるはずだ。

──あった。

黒革の表紙に、世界核の紋章。  
とてつもなく重い気配を放っている。

ページを開くと、血のような赤でこう記されていた。

【五核は世界律を成す。  
 一つを欠けば不安定となり、  
 二つが同時に動けば、世界は揺らぐ。  
 三つが争えば、世界は崩れる。】

(……やはり、今の状況は最悪に近い)

さらに続く。

【ただし、“純度100%の精製者”のみ、  
 世界核に直接触れても存在を保てる。  
 この血統は、王家の始祖から三代のみが継承し──  
 以降失われた。】

「……俺、なのか?」

俺は、どこかで嘲られてきた“落ちこぼれ”の意味を悟る。

【純度100%の精製は表面上の変化が乏しく、他者には理解されない。  
 ゆえに、継承者は迫害を受けやすい。】

(……だから俺は追放されたのか?  
 いや、王国は知らなかった。ただの無知か)

その時だった。

背後で、足音。

「やっと見つけたぜ、レオン」

振り向くと──  
追放された錬金術師団の団長、カルトスが立っていた。

「その封印文書、渡してもらおうか。  
 世界核は王家が支配するべきだ」

背後には武装兵。  
全員、殺気を隠していない。

(遅かったか)

だが、逃げ切るだけなら問題はない。

──俺には、世界核の力がある。

その瞬間、書庫が激しく揺れた。

「何だ!? これは……!」

封印文書が脈動し、外界から巨大な波動が押し寄せる。

世界が……また揺れた。

俺は覚悟を決め、叫んだ。

「紅核石が……起動されたんだ!!」
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