追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

ケルベロス

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《第二章:世界核継承戦 — 蒼光の代行者と黒律の目覚め》

第1話 本編:王都再生会議と新たな影

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紅核石の暴走が鎮まり、王都にはようやく静寂が戻った。
だが、その静けさは“再生”ではなく“疲弊”だった。

倒壊した家屋、消失した街路、焼け焦げた大地。
燃え尽きたような空の下、復興のための仮設会議所がつくられている。

俺は守護者の転移で王城前に降り立つと、
見覚えのある顔が駆け寄ってきた。

「レオンさん! 本当に無事で……!」

リーテだった。
かつて敵だった彼女が、今は当然のように俺を迎えてくれる。
奇妙な関係だが、不思議と心地よい。

「王城はどうだ?」

「……最低よ。でも、崩壊は止まったわ。あなたのおかげで」

中へ入ると、会議室では主要な文官と武官が集まり、
焦りと困惑の渦のなかにあった。

王を中心に、皆が地図と魔力波形の報告書を取り囲んでいる。

「レオン、来てくれたか」

王の声にはかつての威厳はなく、
ただ国を心配する一人の人間のものだった。

「本題に入る。王都の復興計画だ。
だが……これはただの瓦礫処理では済まぬ」

世界核の暴走が残した“歪み”は、街の地下を蝕んでいる。
魔物化した植物、ひび割れた地脈、魔力の濁り。

俺は核視を開き、王都全域の魔力を俯瞰した。

(……やはり、まだ揺らぎが残っている)

地面の下、まるで瘴気のような黒い筋が、
ゆっくりと脈動して広がっていた。

「王都の地下に……黒律の痕跡がある」

俺の言葉で室内の空気が凍りつく。

「黒律……? ゼロの使っていたあれか?」

「そう。紅核石の暴走時、王城内部にあった“模造核”と融合しかけていた。
その残滓が、いまも街の底に残っている」

リーテが震える声で言う。

「……それってつまり、黒律は……まだ消えていない?」

「消えていないどころか、増えている」

核視には──
街の地下に蜘蛛の巣のように広がる黒線が映っていた。

「このまま放置すれば、いずれ第二の暴走が起きる」

文官たちは青ざめ、武官たちは剣に手を伸ばす。

だが俺は続けた。

「原因は……“別の世界核”だ」

王が息をのむ。

「別の……世界核……?」

「王都の北西。森で異常な魔獣発生が起きている。
その中心に──第三の世界核“翠律石”の気配を感じた」

室内がざわめく。

俺は地図を指さした。

「翠律石は“生命の増殖”を司る。  
本来なら豊穣をもたらす素材だが……  
黒律の残滓と混じれば、魔物化が際限なく広がる危険がある」

武官たちは動揺しながらも顔を上げた。

「レオン殿……我らも同行しよう」

だが俺は首を横に振った。

「駄目だ。普通の兵士では近づくこともできない。
森全体が世界核の“増殖領域”になっている」

「では誰が向かう?」

「俺が行く。  
そして──世界核の守護者も同行する」

守護者の姿が俺の背に薄く浮かぶ。
文官たちは恐怖で一歩下がり、王は深く頭を垂れた。

「レオン、頼む。  
王国の未来を……この世界を……救ってくれ」

(……重いな。でも、俺しかできない)

「分かった。  
だが、出発の前に……ひとつ確認しておきたいことがある」

全員が俺を見る。

「王都の地下に残る黒律の痕跡……  
“誰かが意図的に残した形跡”がある」

「……何?」

「つまり、王国内部に“黒律の介入を受けた者”がいる可能性が高い」

文官たちがざわめき、王は剣に手を伸ばした。

「内通者……だと?」

「翠律石の暴走が起きれば、黒律にとって都合がいい。
だから黒律側は王都を拠点に変えようとしている」

俺は核視の残像を王に示した。

「この街に……“黒律の影を宿した者”がいる」

その言葉は、王都再生会議を混乱に突き落とすのに十分だった。

だが、俺は迷わない。

「黒律を断ち切るために、森へ行く。  
第三の世界核“翠律石”を確保する。  
そして──黒律を操る本当の敵を暴く」

会議の空気が重く変わる。

王が静かに頷いた。

「レオン、行ってくれ。  
それが我々の……唯一の希望だ」

こうして俺は、  
第二章の舞台となる“翠律の森”へ向けて動き出した。

世界核争奪戦。  
その第二幕が、静かに始まった。
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