追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

ケルベロス

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《第三章:戦争編・世界核編》

第1話 本編:戦火の兆し──世界は揺れ、彼の生命線は細る

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朝の空気は妙に重たかった。

王都の復興は一応の形を見せているが、  
街全体がどこか落ち着かない。  
人々は仕事に戻りながらも、  
噂ばかりが駆け回っていた。

「紅核石の暴走は、ほかの国のせいだ」  
「いや、王国が核を隠していたらしい」  
「次はどこが攻め込まれる……?」

どれも正しく、どれも間違っている。

(……世界核のことはもう隠せない、か)

医務室の窓辺で、  
レオンは静かに“青い線”を見つめていた。

胸の中心に走る生命線は、  
かつてより明らかに細い。  
半分近く削れた光は、  
小さな脈動を残すだけ。

影がその横で腕を組んでいた。

「……本当に動けるの?  
 生命線、まだ安定してないよ」

影の声には、  
あの“虚無の王子”だった頃の冷たさはもうない。  
必死に心配している。

レオンはかすかに笑って立ち上がった。

「動けるさ。  
 世界が動いてるなら、寝てるわけにはいかないだろ」

影は眉を寄せる。

「レオン……無理は……」

「影。お前が支えてくれるんだろ?」

影は言葉を失い、  
その蒼黒の瞳に微かな揺らぎを宿した。

(……影も、まだ不安定だ)

蒼黒律は、  
“存在できなかった命が世界に馴染むための律”。

まだ生まれたばかりの光だ。

そこへノアが飛び込んできた。

「レオン!!  
 東方の森国で大規模な“律障害”が発生した!」

影が振り返る。

「……翠律の国……?」

ノアは頷き、簡潔に続ける。

「森が暴走してる。  
 木々が人の住んでいる街を呑み込み、  
 数百年動かなかった生命樹が脈動し始めた。

 ――原因は“白律の干渉”の可能性が高い。」

レオンと影は同時に息を呑む。

「白核……!」

白律──  
“因果観測”の律。

世界の未来を固定する危険な核。

レオンの背筋に冷たいものが走った。

(あいつらが……動いたのか)

ノアは深刻な表情で告げる。

「大使館から緊急依頼が来てる。  
 『青核保持者レオンに出動を要請』だ。」

影がレオンを見つめる。

「……行くつもりだよね」

レオンは静かに頷いた。

「放っておけない。  
 翠核も、白核も……世界の柱なんだ。」

影は拳を握る。

「なら僕も行く。  
 レオンの生命線が不安定な状態じゃ、絶対に離れられない。」

そこでユリが医務室の奥から走ってきた。

「レオン!!  
 まだ起きちゃダメだよ……!  
 身体、治りきっていないのに!」

レオンは優しく微笑んだ。

「大丈夫だ。  
 手加減はするよ。」

ユリは涙目で叫ぶ。

「嘘だ!!  
 レオン、いつも自分より他の人を優先するじゃない!  
 だから命が……こんな……!」

影も頷く。

「レオン。  
 君は“世界を繋ぐ律”だけど……  
 自分を壊してまで繋がなくていい。」

レオンは二人の顔を見て、  
ゆっくり息を吸った。

「……わかってる。  
 けど、これだけは譲れない。  
 世界核の争いは、もう始まった。  
 俺が動かなきゃ、もっと多くの命が削られる。」

ユリは涙をこらえ、レオンの手を握った。

「……絶対に死なないで。  
 お願いだから。」

レオンは軽くうなずき、  
影とノアに視線を向けた。

「行くぞ。  
 第三章は――東方・森国から始まる。」

影もノアも頷く。

外では、  
王都全域に非常警鐘が鳴り響いていた。

世界核同士の争奪。  
白律の干渉。  
翠核の暴走。

世界は静かに、  
しかし確実に――“戦争”へと向かっていた。

レオンは胸の痛みを押さえながら、  
深く息を吸い込んだ。

「待ってろ。  
 世界。  
 必ず繋いでみせる。」

こうして――  
第三章《世界核戦争編》の幕が上がった。
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