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第一章
第5話
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……心地好い目覚めだ。書架のひやりとした空気が頬を撫で、仄かに残る前夜の喧噪の熱を忘れさせてくれる。
……シーツの下で私に抱き付きすやすやと眠る、ぬるりとしたなまもの二匹が居なければ、だが。
私は溜息を一つ、向かって左に抱き付く、でかいなまものの駄肉を憎々しくぱちんと叩き、呪文を唱える。
「……うっ、うわ何だなんだ空を飛んでがぼごぼがぼごぼ」
私は移動呪文で駄肉を洗い場の水桶に吹き飛ばし、向かって右の小さくてぺったんこで白黒の方の肩をゆっくり揺らす。
「……いい加減起きなさい。夢の時間はもぅ終わり、是から貴方は暫く……魔力が抜け落ちる迄は私のメイド見習いとして色々覚えて貰います。一足先に洗い場に飛ばした濡れ鼠に其のべたべたな身体を洗って貰い、着替えた後メイドに色々と作法を教えて貰いなさい」
夢現な少女は其れでもこくりと頷くと、ゆっくりと立ち上がり洗い場へと歩いていく。
……私は洗浄魔法で昨日の汚れを吹き飛ばし、呪衣を着ると机の上の呼び鈴を鳴らし、現れたメイドに三人分の食事の用意をさせ、読みかけの本を手に取る。
半刻程して現れた濡れ鼠と、ピカピカに磨き上げられた宝石。着せられたメイド服は若干ぶかぶかだ。
「まぁ、仕事を覚えて貰うと言っても」
私は指をパチンと鳴らす。するとNymphの一人が少女に乗り移り、仄かに発光する。
「仕事自体はNymphが身体を動かしてくれるので眠っていてもいいです。貴方の仕事は彼女達に魔力を提供し続けるのと、彼女達が定時で還った後の私の世話ですね」
昨日の世話《淫行》を思い出し、其の瞳の様にぽっと赤くなる宝石。
「嗚呼、勘違いしないでください。私の発情期は昨日の様な満月前後だけなのでね……其の落胆した様子を見るに残念だったかしら?」
「まぁFräuleinは淡白だからね。何なら私が代わりにPrincessの夜の手解きの担当をしぶわぁぁぁぁぁこの熱風一寸熱すぎあちちあちいいいいいいいいいいいいいい!!」
……相変わらずの軽口を叩く濡れ鼠を壁に吹き飛ばし
「貴方には別の仕事があります。嗚呼、安心しなさい。どぶ攫いではなく何時もの勇者達の足止めですよ。彼奴等が向かっている先はまだ……早過ぎるのでね」
「やれやれ、是で何度目かな? 向こう見ずなのは若者の特権だが、もぅ少し自分達の力量を考えて欲しいね」
「向こう見ずに私に歯向かった貴方には言われたくはないでしょうよ。少しは助命嘆願した勇者に感謝しておきなさい」
「……あの時は、勇者に合わせて力を殆ど出していなかっただろう? Fräuleinの本気の偽装を見破れる者など魔王様の他にいるものか……」
そうね、今も私の事を気付いていませんしね……軽くほくそ笑むと帰還術式を掛け直したankletを渡した。
……シーツの下で私に抱き付きすやすやと眠る、ぬるりとしたなまもの二匹が居なければ、だが。
私は溜息を一つ、向かって左に抱き付く、でかいなまものの駄肉を憎々しくぱちんと叩き、呪文を唱える。
「……うっ、うわ何だなんだ空を飛んでがぼごぼがぼごぼ」
私は移動呪文で駄肉を洗い場の水桶に吹き飛ばし、向かって右の小さくてぺったんこで白黒の方の肩をゆっくり揺らす。
「……いい加減起きなさい。夢の時間はもぅ終わり、是から貴方は暫く……魔力が抜け落ちる迄は私のメイド見習いとして色々覚えて貰います。一足先に洗い場に飛ばした濡れ鼠に其のべたべたな身体を洗って貰い、着替えた後メイドに色々と作法を教えて貰いなさい」
夢現な少女は其れでもこくりと頷くと、ゆっくりと立ち上がり洗い場へと歩いていく。
……私は洗浄魔法で昨日の汚れを吹き飛ばし、呪衣を着ると机の上の呼び鈴を鳴らし、現れたメイドに三人分の食事の用意をさせ、読みかけの本を手に取る。
半刻程して現れた濡れ鼠と、ピカピカに磨き上げられた宝石。着せられたメイド服は若干ぶかぶかだ。
「まぁ、仕事を覚えて貰うと言っても」
私は指をパチンと鳴らす。するとNymphの一人が少女に乗り移り、仄かに発光する。
「仕事自体はNymphが身体を動かしてくれるので眠っていてもいいです。貴方の仕事は彼女達に魔力を提供し続けるのと、彼女達が定時で還った後の私の世話ですね」
昨日の世話《淫行》を思い出し、其の瞳の様にぽっと赤くなる宝石。
「嗚呼、勘違いしないでください。私の発情期は昨日の様な満月前後だけなのでね……其の落胆した様子を見るに残念だったかしら?」
「まぁFräuleinは淡白だからね。何なら私が代わりにPrincessの夜の手解きの担当をしぶわぁぁぁぁぁこの熱風一寸熱すぎあちちあちいいいいいいいいいいいいいい!!」
……相変わらずの軽口を叩く濡れ鼠を壁に吹き飛ばし
「貴方には別の仕事があります。嗚呼、安心しなさい。どぶ攫いではなく何時もの勇者達の足止めですよ。彼奴等が向かっている先はまだ……早過ぎるのでね」
「やれやれ、是で何度目かな? 向こう見ずなのは若者の特権だが、もぅ少し自分達の力量を考えて欲しいね」
「向こう見ずに私に歯向かった貴方には言われたくはないでしょうよ。少しは助命嘆願した勇者に感謝しておきなさい」
「……あの時は、勇者に合わせて力を殆ど出していなかっただろう? Fräuleinの本気の偽装を見破れる者など魔王様の他にいるものか……」
そうね、今も私の事を気付いていませんしね……軽くほくそ笑むと帰還術式を掛け直したankletを渡した。
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