あるまん

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「……ねー、そろそろ起きてよー」

 俺の妹・双葉が亡くなってから、そろそろ10年になる……まだ12歳、小学6年生だった。ぶかぶかの中学校制服を着て、ニシシッと笑いながら、四月から俺と同じ学校に通うのを楽しみにしてたのに……冬道を歩いていて除雪車に巻き込まれ、最後は人の姿をしていなかったらしい。

「ねーってばー、折角の休みなんだしどこか連れて行ってよ~!」

 ……其の時両親も俺も、身体中の水分が無くなる程泣いた。生前の妹のニシシッと笑った写真が遺影として使われた。
 妹より3歳年下でまるで姉妹の様に仲の良かった、幼馴染の香菜子も一緒に泣いてくれた。
 今度から私が妹になる、と言って、共働きの両親の替わりに朝御飯を作ってくれたり、遊んだり、一緒に買い物に行ったり……本当に良くしてくれた。でも何時からか、妹というよりも……一人の女性として、香菜子の事を、俺は……。

「これか~、この布団が悪いのか~! ……せ~のっ、えいっ!」
「ふごわっ!!」
 ドッベシャ~ン! 思いっきり布団を引っぺがされ、ベッドの下に転がり落ちる俺。すわ一体何がっ! ……きょろきょろするパジャマ姿の俺の前に立つのは……。

「お兄ちゃん、やっと起きたっ! さっ、早速行きましょっ!!」
「っつ~~~……ど、どこにですかっ!」
「キャハハハハッ! 何その敬語っ♪ 寝惚けたお兄ちゃん面白~い♪」

 ……其処には19歳・大学二年生になった香菜子がいた……にしては随分と幼稚な事をする……というかそもそも香菜子は俺以外の男性と碌に喋られない程人見知りで、大人しい子の筈だ。

 其れも其の筈……

「もぅ24歳にもなるのに、何時までも駄目駄目なんだからっ♪」
「「私がいた時」から変わってないよね、そういうとこっ♪」

 ……目の前に居る香奈子は、双葉の様にニシシッと笑って……

 そう、何故か……10年前に死んだ筈の双葉が……香奈子の中へ……
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