あるまん

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「兄さんにお話があります」
「おっ、おう……」
 ……二人きり? な俺の部屋の中、何時になく真面目な香菜子の気迫に押され気味な俺。

「子作りをします」
「マチタマーエ」

 ……俺と香菜子は恋人同士だ。あまり人に言う物ではないが……もぅ、愛し合っている。無論精神的な意味でも、肉体的な意味でも……。
 俺も香菜子も初めて同士だったし、初体験の後から……まぁこういったらアレだが若さに任せて、確かに……告白した当日から結構な頻度で……。
 普段は無表情に近い香菜子の、ベッドの上で魅せる妖艶な表情……ハアハア……

「……聞いていますか、兄さんっ!」
「ひゃ、ひゃいっ!」
 ……にへらとしていた所に大声で呼ばれ思わず変な声が出る。
「なっ、何だってそんな……俺達は付き合ってるとはいえ、まだ未婚だぞ?
 ま、まぁ勿論責任は取るつもりだが……俺は就職したて、香菜子はまだ大学生だ。家に居る間に独立資金を貯めて、香菜子も大学卒業、就職決定して、其れから……って一緒に決めたじゃないか」
「そうですけど、事情が変わりますた……解かりますよね?」

 ……今香菜子の中には……双葉が居る。結婚前提に付き合ってる恋人の「中」へ突然舞い戻ってきた妹……。
 勿論、俺は双葉を邪魔者扱いしてるつもりはないし、香菜子だってそうだろう。ま、まだ今後については決めかねているのは確かだ。双葉が発現して三カ月、そろそろ何かしら決めないと、とは思っていたが……。

「色々と……大事な事を飛び越えていないか? 」
「兄さん、私思ったのです……何故双葉ちゃんが命日でもないこの時期に戻って来たのかって」
「其れはお盆位だったからじゃないのか?」
「いいえ、兄さんを慕っていた双葉ちゃんが私の中へ戻ってきた……兄さん自身や両親、うちの両親という選択肢もあった筈です……」
 俺は兎も角、最近頓に中年化してきた親父お袋に入るのは双葉も嫌だろう。仲が悪かった訳ではないが。
「そう! それは何故か!! ……賢い兄さんならもぅお解かりですね⁉」
 え~マ〇ちゃんむずかしくってよくわかんな~い。

「双葉ちゃんは私達の! 子供となって! 又私達と暮らしたいのです!!」

 ……

 ……えー?

 ドヤ顔で胸を張る香菜子。妄想過剰気味な所があるとは言ったが……。
「ま、待て……そ、そもそもこの時期に帰ってきた事の説明になってn」
「兄さんは就職したてとはいえもぅ2年目、将来有望とも聞きますし自宅通勤で余裕があります! 私は大学二年生、単位も順調に取得し来年再来年は割と余裕があると思ってます。お互い両親も、祖父母も健在で、しかも全員近所です。とはいえ先の事は解かりません! このタイミングでの双葉ちゃんの降臨は、今のうちに産まれて、今度こそ丈夫な体に産まれたい、という表れでしょう!!」

 ……すげえ早口で喋ってるし。こういう香菜子を見るのもレアだが……そもそも双葉は別に身体が悪かった訳ではない。

「だ、だがなぁ……確かに香菜子とは将来的に結婚も、子供も作りたいとは思っているよ……でも、今……其の、なっ? 解かるだろう? 今セックsゲフン、子作りをするとなると、双葉の情操教育的に、な?」
「以前も言いましたが、私が出ている時にした事は双葉ちゃんは見えていない状態です。抑々家族にばれたくないというのでしたら、もうお互いの部屋で……な、何回もしてるのですし、今更です!

 と、いう訳で……」

 と言うが早いが、呆気に取られてる俺は上気した顔の香菜子に押し倒された……。

「今日は兄さんの御両親は結婚記念日の小旅行で居ません……誰も邪魔が入る事もありませんし、久し振り、三カ月振りに……ゆっくりじっくりと……子作りしましょう!!」
「きゃあああああああっ!!」

 ……と悲鳴を上げた訳ではないが、あはれ自分の純潔ゲフン! 男としての尊厳は、香菜子という淫獣によって儚く散らされたのだった……。
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