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おじさん♡受け入れたいんです
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宮司♡
「やらなかった後悔より、やっちまった後悔の方が良いじゃないか」
「良く無い!」
それは今、言うような事では無い!
よりによって、今この状況でそれを言ってしまうような所がいかんのだ。
大馬鹿者め、後悔に殺されるぞ!
スレている癖に世間知らずな高生めが、身の程知らずな宣言をしよった。
儂は高生の馬鹿に翻弄されておる。
…嫌な予感はしていたのだ。
常に無いことは、凶事の前兆である事が多い。
許婚の訪の後を、高生はふて寝で過ごすのが常だ。
それが今日は違った。
いつもより長く篭って居ると思ったら、二人仲良く座敷牢から出てきてしまいおった。
そして話しがしたいなどと改まって申しおってからに、儂を真っ青にした。
許婚め、ついに裏切ったな!
咄嗟にそう思い、怒り心頭で口火を切ろうとする。
「宮司殿、落ち着かれよ」
やんわりと制された。
「裏切ったなどと早合点いたすな。そう悪い話しではない」
…この男、おそらく人心を読むのだ。
これまでも節々に感じる事があった。
これだから彼の国は恐ろしい。
得体が知れぬ!
とはいえこの上、儂には隠し立てする事など無い。
読みたければ、読むが良い。
儂に、ふた心など無い。
「…ふむ、良い心がけだ」
全く、遠慮の無い男だ!
だが別に嫌いでは無い。
「では高生、宮司殿にお話しなさい」
なんと、話しがあるのは高生の方か!
…不安だ。
お前はいつもロクでも無い事しか言わぬ。
…許婚殿、笑うな。
ちっとも可笑しく無い。
貴方も他人事だと思いめさるな。
「ジジイ、生きてて良かった。殴って悪かったな。わざとじゃ無いんだ、ごめんよ」
…高生よ、お前はもうじき四十路だろう。
満足に謝罪も出来んのか、情けない。
「あと、今まで面倒かけてすまなかった。全部、俺が悪かったよ。それも御免してくれや」
稚拙な言いようだが、心がこもっている事は感じる。
…ようやくお前も観念したか。
そんなお前を隣りで見守る許婚殿の、まなこの柔らかな事が儂の胸を打つ。
遂に、この時が来…
「そんな訳で。俺、中欧のレンレンになる!ちゃんと嫁に行くからな。安心してくれ」
…どんな訳だ。
何になって、何処へ行くだと?
安心なんぞ出来るか!
「…!、、高生、、?、それは、一体…?」
儂が怒鳴りつける前に、許婚殿が驚きの声を上げた。
どうやら、彼にも不意打ちだったらしい。
「なんか、俺が中欧ってトコに行かないと皆んなが困るんだろ?いいぜ、がんばる!今までの罪滅ぼしだ!」
お前が人様の心配をするとは、感慨深い。
しかし、雑だ。
「…高生、余り上手く説明が出来きていなかったようだね。すまない。一旦、話しは止そうか」
どうやら許婚殿が事情を説明したのを、高生めがまともに聞いておらなんだのだろう。
この調子では、言ってはならぬひと言を…
高生はうっかり言いかねぬ勢いだ。
それにしても、いつも悠揚たる御仁が慌てておられる。
この分なら…
許婚殿よ、貴方は我らと同じ志しでござるようだ。
「ルドラ、いいんだ。お前の事は俺が何とかするからな♡ジャラも、アーティットも俺が守るから!」
なんとまぁ、何たる勘違いをしたものか。
相当にこんがらがっておるようだ。
許婚殿が唖然とし、二の句を継げずにおるわ。
あの憎たらしい程に泰然自若とした若者が!
…良い気味だの。
「…宮司殿、何が可笑しいのか知らぬがその顔は止めよ。その様な場合ではないであろう」
つい顔が綻んでしまっていた様だ。
確かにそんな場合ではない。
許婚殿、お任せあれ。
この守手頭が、この跳ねっ返りに言い聞かせてやりますゆえ。
「高生よ、良く聞きなさい」
「えぇ?また?もう話しは充分だって」
…お前と言う奴は。
「ルドラの長話しで、俺はもうクタクタなんだよ。もう分かったから、いい…」
「分かっておらぬ。お前は何にも分かっておらぬ!」
馬の耳に念仏も甚だしい!
何とも虚しく情け無い限りだが、これが高生だ。
「よいか、話はお前思うほど簡単では無い」
儂の口から改めてお前に告げようではないか。
正斎子たるお前の、遣る瀬無いさだめを…
「どこが?」
「…は?」
「分かってるって!俺が中欧ってとこに嫁に行って、そこの大陸の男達と寝るんだろ?」
…大雑把ながらも大筋は、そうだ。
「いっぱい国があるらしいから大変かもしれん。けど、まぁ、何とかする!」
何とかする、とは何事か。
「簡単に言うな!お前はそれがどんなに苦難に満ちた事か、分かっておらん!」
「当たり前だろ、やったこともねぇ事だ」
…経験の有る無しの話しではない!
「ジジイよ、聞いてくれ。今の俺は、やる気がわいて出てきてんだ。もう、みなぎってんだわ!」
なんだって今ここに及んで、出してきた。
もっとやる気を出すに相応しい時があったろうぞ!
「一世一代の大仕事だ。男には、やらなきゃならない時がある!」
…大仕事、と言うたか。
この馬鹿は、何を申しておるのだ。
「今さら男気なんぞを持ち出してきても、遅いわ!そも、大仕事とはなんじゃ!」
まさか、夜伽が仕事だとでも言い出すまいな。
「ジジイ、良く聞けよ。レンレンってのは中欧大陸の女王なんだ」
「知っとるわ!」
馬鹿にするな、高生の癖に。
それに、唐突に話しをすり替えるな!
「なら、話は早い。俺はレンレンになれる身体らしいし、なってもいいと思ってる。」
…馬鹿話しにはうんざりだ。
そろそろ本題に入らねばならぬ!
そう、話しを打ち切ろうとした。
すると高生が意外にも分かった様な事を言い出した。
「中欧の人がよ、天変地異とかなんとかで大層に困ってるのは女王が居ないからなんだ。そこでだ!俺が行って女王になって、男達とヤりまくってやる。したら、力を授けられるんだと。そいで、丸く収まるっつう訳よ!」
…確かに、お前の言う通りだ。
高生は、馬鹿には出来ぬ程に向こうの事情を良く分かっておった。
だが、自分自身の事はちっとも考えておらん。
お前は昔から、妙に気のいい所があった。
「中欧の民はさぞや喜ぶだろう。お前は沢山の人を救えるかもしれん。しかし、お前はそこに収まって本当に良いのか。そんな…」
…そうか。
だから大仕事だと言うたのか。
「女王として数多の男と交わるなどという仕事が…お前に出来るとか申すのか」
そんな事をまさか仕事だと思って受け入れようとは。
高生の馬鹿は、儂の想像の上を行く。
「出来る。多分、俺は向いてるんだ。手応えしかない」
…許婚達との情交が、そんなに良かったか。
おぼこが初春に浮かれて、馬鹿に拍車がかかっておる。
「高生、私は君に女王になって欲しくない」
見かねた許婚殿が、口を挟んだ。
助太刀いただき、面目無い。
言い聞かせるはずが、この体たらくだ。
「女王は大陸を巡回するのだよ。各地で待ち受ける男達に…君は身体を開かねばならない。我が国は多種多様の人々の坩堝でね。例えば西の民族は勇壮で厳つい身体の大男だ。彼らは気性も激しく、君を組み敷いて犯すだろう」
さすがの高生も目を見開き、表情を改めた。
「…そっかぁ、ルドラと他の二人も顔立ちやら身体つきがそれぞれ違うもんな。巡業先で色々な男に、色々な仕方でされるんか…ヤバい♡」
…顔を赤らめてどうする!
しかもあやつ、巡業とか言うておらなんだか。
ちっとも諫言が耳に沁みない高生に、許婚殿は更に言い募る。
「巡回先では、風土や風習が特異な場合もある。四肢を拘束されたり…」
「いや、それならもうされたろ。お前らに」
…確かに。
癇癪持ちの子供の如く頑固に拒絶する高生を、許婚殿達が嗜虐心もあらわに縛りあげたとの噂だが…
「高生、あれは…大人気なかった。すまない」
なんじゃ!
墓穴を掘って、返り討ちにおうたぞ。
「別にいいって。最初はびっくりしたけど。まぁ、あれはアレでな♡」
…いいのか。
快かったのか、高生よ。
お前がそんな淫乱だとは、思わなんだ。
誤算も、誤算。
大誤算だ!
「…要するに、お前は初めてまぐおうてみたらば案外と良かったもので、調子づいて一生を棒に振ると、言うておる訳か」
溜息しながら呟く。
雲行きが怪しくなるばかりだ。
当の本人が乗り気になるとは、思いもよらなんだぞ。
「あんだって?そりゃどう言う事だ?勿体ぶった言い方すんな」
馬鹿め!
「中欧大陸の女王などと名乗っては、そこいら中の男と淫ら事をして巡るのだぞ!」
どんな事情や理屈で正当を気取ろうと、実の所はそうなのだ。
「そのような淫婦になる、と本気で申しておるのかと聞いておる!」
人助けだの償いだので飾った所で、変わらん。
「もうろくしたのか、ジジイ。何度も言わせんな。そ、う、だ!」
…お前は、納得づくで淫婦になるのか。
馬鹿には本当に、つける薬がない。
「…後悔するぞ」
だが、儂が諦めると思うたら大間違いだ。
儂はお前の守手頭だ。
先祖から脈々と受け継がれし使命を易々と反故など、絶対にいたさぬ!
この様に。
儂が執念を燃やした所で…
『やらなかった後悔より、やっちまった後悔の方が良いじゃないか!』
と高生が更なる火を注いだのだった。
そして、堂々巡り…
のはずが。
突如、新政府の役人共が鼻息も荒々しく乱入して参った。
そして許婚殿に急ぎだと念押しして、書簡を手渡す。
「…高生、すまない」
許婚殿は文章に目を落としたまま、沈痛な面持ちで静かに言った。
「祖国より帰国命令が下った…」
祝言は明日だ。
思いもよらぬ展開となった…
最近は、いつもそんな調子だが。
\\\٩(๑`^´๑)۶////
「やらなかった後悔より、やっちまった後悔の方が良いじゃないか」
「良く無い!」
それは今、言うような事では無い!
よりによって、今この状況でそれを言ってしまうような所がいかんのだ。
大馬鹿者め、後悔に殺されるぞ!
スレている癖に世間知らずな高生めが、身の程知らずな宣言をしよった。
儂は高生の馬鹿に翻弄されておる。
…嫌な予感はしていたのだ。
常に無いことは、凶事の前兆である事が多い。
許婚の訪の後を、高生はふて寝で過ごすのが常だ。
それが今日は違った。
いつもより長く篭って居ると思ったら、二人仲良く座敷牢から出てきてしまいおった。
そして話しがしたいなどと改まって申しおってからに、儂を真っ青にした。
許婚め、ついに裏切ったな!
咄嗟にそう思い、怒り心頭で口火を切ろうとする。
「宮司殿、落ち着かれよ」
やんわりと制された。
「裏切ったなどと早合点いたすな。そう悪い話しではない」
…この男、おそらく人心を読むのだ。
これまでも節々に感じる事があった。
これだから彼の国は恐ろしい。
得体が知れぬ!
とはいえこの上、儂には隠し立てする事など無い。
読みたければ、読むが良い。
儂に、ふた心など無い。
「…ふむ、良い心がけだ」
全く、遠慮の無い男だ!
だが別に嫌いでは無い。
「では高生、宮司殿にお話しなさい」
なんと、話しがあるのは高生の方か!
…不安だ。
お前はいつもロクでも無い事しか言わぬ。
…許婚殿、笑うな。
ちっとも可笑しく無い。
貴方も他人事だと思いめさるな。
「ジジイ、生きてて良かった。殴って悪かったな。わざとじゃ無いんだ、ごめんよ」
…高生よ、お前はもうじき四十路だろう。
満足に謝罪も出来んのか、情けない。
「あと、今まで面倒かけてすまなかった。全部、俺が悪かったよ。それも御免してくれや」
稚拙な言いようだが、心がこもっている事は感じる。
…ようやくお前も観念したか。
そんなお前を隣りで見守る許婚殿の、まなこの柔らかな事が儂の胸を打つ。
遂に、この時が来…
「そんな訳で。俺、中欧のレンレンになる!ちゃんと嫁に行くからな。安心してくれ」
…どんな訳だ。
何になって、何処へ行くだと?
安心なんぞ出来るか!
「…!、、高生、、?、それは、一体…?」
儂が怒鳴りつける前に、許婚殿が驚きの声を上げた。
どうやら、彼にも不意打ちだったらしい。
「なんか、俺が中欧ってトコに行かないと皆んなが困るんだろ?いいぜ、がんばる!今までの罪滅ぼしだ!」
お前が人様の心配をするとは、感慨深い。
しかし、雑だ。
「…高生、余り上手く説明が出来きていなかったようだね。すまない。一旦、話しは止そうか」
どうやら許婚殿が事情を説明したのを、高生めがまともに聞いておらなんだのだろう。
この調子では、言ってはならぬひと言を…
高生はうっかり言いかねぬ勢いだ。
それにしても、いつも悠揚たる御仁が慌てておられる。
この分なら…
許婚殿よ、貴方は我らと同じ志しでござるようだ。
「ルドラ、いいんだ。お前の事は俺が何とかするからな♡ジャラも、アーティットも俺が守るから!」
なんとまぁ、何たる勘違いをしたものか。
相当にこんがらがっておるようだ。
許婚殿が唖然とし、二の句を継げずにおるわ。
あの憎たらしい程に泰然自若とした若者が!
…良い気味だの。
「…宮司殿、何が可笑しいのか知らぬがその顔は止めよ。その様な場合ではないであろう」
つい顔が綻んでしまっていた様だ。
確かにそんな場合ではない。
許婚殿、お任せあれ。
この守手頭が、この跳ねっ返りに言い聞かせてやりますゆえ。
「高生よ、良く聞きなさい」
「えぇ?また?もう話しは充分だって」
…お前と言う奴は。
「ルドラの長話しで、俺はもうクタクタなんだよ。もう分かったから、いい…」
「分かっておらぬ。お前は何にも分かっておらぬ!」
馬の耳に念仏も甚だしい!
何とも虚しく情け無い限りだが、これが高生だ。
「よいか、話はお前思うほど簡単では無い」
儂の口から改めてお前に告げようではないか。
正斎子たるお前の、遣る瀬無いさだめを…
「どこが?」
「…は?」
「分かってるって!俺が中欧ってとこに嫁に行って、そこの大陸の男達と寝るんだろ?」
…大雑把ながらも大筋は、そうだ。
「いっぱい国があるらしいから大変かもしれん。けど、まぁ、何とかする!」
何とかする、とは何事か。
「簡単に言うな!お前はそれがどんなに苦難に満ちた事か、分かっておらん!」
「当たり前だろ、やったこともねぇ事だ」
…経験の有る無しの話しではない!
「ジジイよ、聞いてくれ。今の俺は、やる気がわいて出てきてんだ。もう、みなぎってんだわ!」
なんだって今ここに及んで、出してきた。
もっとやる気を出すに相応しい時があったろうぞ!
「一世一代の大仕事だ。男には、やらなきゃならない時がある!」
…大仕事、と言うたか。
この馬鹿は、何を申しておるのだ。
「今さら男気なんぞを持ち出してきても、遅いわ!そも、大仕事とはなんじゃ!」
まさか、夜伽が仕事だとでも言い出すまいな。
「ジジイ、良く聞けよ。レンレンってのは中欧大陸の女王なんだ」
「知っとるわ!」
馬鹿にするな、高生の癖に。
それに、唐突に話しをすり替えるな!
「なら、話は早い。俺はレンレンになれる身体らしいし、なってもいいと思ってる。」
…馬鹿話しにはうんざりだ。
そろそろ本題に入らねばならぬ!
そう、話しを打ち切ろうとした。
すると高生が意外にも分かった様な事を言い出した。
「中欧の人がよ、天変地異とかなんとかで大層に困ってるのは女王が居ないからなんだ。そこでだ!俺が行って女王になって、男達とヤりまくってやる。したら、力を授けられるんだと。そいで、丸く収まるっつう訳よ!」
…確かに、お前の言う通りだ。
高生は、馬鹿には出来ぬ程に向こうの事情を良く分かっておった。
だが、自分自身の事はちっとも考えておらん。
お前は昔から、妙に気のいい所があった。
「中欧の民はさぞや喜ぶだろう。お前は沢山の人を救えるかもしれん。しかし、お前はそこに収まって本当に良いのか。そんな…」
…そうか。
だから大仕事だと言うたのか。
「女王として数多の男と交わるなどという仕事が…お前に出来るとか申すのか」
そんな事をまさか仕事だと思って受け入れようとは。
高生の馬鹿は、儂の想像の上を行く。
「出来る。多分、俺は向いてるんだ。手応えしかない」
…許婚達との情交が、そんなに良かったか。
おぼこが初春に浮かれて、馬鹿に拍車がかかっておる。
「高生、私は君に女王になって欲しくない」
見かねた許婚殿が、口を挟んだ。
助太刀いただき、面目無い。
言い聞かせるはずが、この体たらくだ。
「女王は大陸を巡回するのだよ。各地で待ち受ける男達に…君は身体を開かねばならない。我が国は多種多様の人々の坩堝でね。例えば西の民族は勇壮で厳つい身体の大男だ。彼らは気性も激しく、君を組み敷いて犯すだろう」
さすがの高生も目を見開き、表情を改めた。
「…そっかぁ、ルドラと他の二人も顔立ちやら身体つきがそれぞれ違うもんな。巡業先で色々な男に、色々な仕方でされるんか…ヤバい♡」
…顔を赤らめてどうする!
しかもあやつ、巡業とか言うておらなんだか。
ちっとも諫言が耳に沁みない高生に、許婚殿は更に言い募る。
「巡回先では、風土や風習が特異な場合もある。四肢を拘束されたり…」
「いや、それならもうされたろ。お前らに」
…確かに。
癇癪持ちの子供の如く頑固に拒絶する高生を、許婚殿達が嗜虐心もあらわに縛りあげたとの噂だが…
「高生、あれは…大人気なかった。すまない」
なんじゃ!
墓穴を掘って、返り討ちにおうたぞ。
「別にいいって。最初はびっくりしたけど。まぁ、あれはアレでな♡」
…いいのか。
快かったのか、高生よ。
お前がそんな淫乱だとは、思わなんだ。
誤算も、誤算。
大誤算だ!
「…要するに、お前は初めてまぐおうてみたらば案外と良かったもので、調子づいて一生を棒に振ると、言うておる訳か」
溜息しながら呟く。
雲行きが怪しくなるばかりだ。
当の本人が乗り気になるとは、思いもよらなんだぞ。
「あんだって?そりゃどう言う事だ?勿体ぶった言い方すんな」
馬鹿め!
「中欧大陸の女王などと名乗っては、そこいら中の男と淫ら事をして巡るのだぞ!」
どんな事情や理屈で正当を気取ろうと、実の所はそうなのだ。
「そのような淫婦になる、と本気で申しておるのかと聞いておる!」
人助けだの償いだので飾った所で、変わらん。
「もうろくしたのか、ジジイ。何度も言わせんな。そ、う、だ!」
…お前は、納得づくで淫婦になるのか。
馬鹿には本当に、つける薬がない。
「…後悔するぞ」
だが、儂が諦めると思うたら大間違いだ。
儂はお前の守手頭だ。
先祖から脈々と受け継がれし使命を易々と反故など、絶対にいたさぬ!
この様に。
儂が執念を燃やした所で…
『やらなかった後悔より、やっちまった後悔の方が良いじゃないか!』
と高生が更なる火を注いだのだった。
そして、堂々巡り…
のはずが。
突如、新政府の役人共が鼻息も荒々しく乱入して参った。
そして許婚殿に急ぎだと念押しして、書簡を手渡す。
「…高生、すまない」
許婚殿は文章に目を落としたまま、沈痛な面持ちで静かに言った。
「祖国より帰国命令が下った…」
祝言は明日だ。
思いもよらぬ展開となった…
最近は、いつもそんな調子だが。
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