16 / 31
16
しおりを挟む
「リチャード・トルネン……だと?」
伯爵がこちらを向いてにこりと笑う。
少しだけ息が上がっているのを見ると、急いでここに駆けつけてくれたのだろう。やはり手紙を出しておいて良かった。
「まずその2人を解放してもらいたのですが、長殿」
「あっはははは!!トルネン伯爵殿でしたかー、貴方様は魔法が使えないそうですねぇ!そんな奴に…………俺が従うと思うんじゃねぇぞ!!!」
がっしゃーーんという音を立てて伯爵の横にあった棚が吹っ飛んだ。だが、何かしらの攻撃を仕掛けられたように見えた伯爵には傷一つついていない。
魔法の圧で風が舞い、伯爵の服を揺らした。
「なるほどな……」
多少なりとも傷つけられると思っていたのか、男は驚愕とも言える声を漏らす。
私からは見えないが、目を見開いて伯爵を見つめる姿が想像できた。
「私が何も対策せずに突っ込むと思ったのか、カラン・スタートッド」
「へぇ、その名前を知ってんのか、何者だお前」
「…………2人を離せ」
「むりだねぇ!!」
鋭い光が走り、つい目をつぶった。
ギィンという音が伯爵から聞こえ、目を薄っすらと開けると、伯爵の片手には先程までは構えていなかった短剣があった。その剣が何かをはじき返した音だったらしい。
もしかして魔法銃かなにかを使ってきたのかもしれない。
張り詰めた空気に、先程とは違う意味で身動きが取れないかった。それに、カランという男の近くにいる侯爵達はどんな状況なのだろうか。
「おいおい……魔力は無いんじゃなかったのかよ」
「魔力が無い者も同じ場で戦わなければいけないんだ。この程度造作もない」
「ほう、戦う、ねぇ」
カランの方から動く音が聞こえてきた。すると、伯爵が素早く胸ポケットから何かを取り出しカランの方向に投げた。
「魔法石!?お前レイの手下か」
「殿下の名前を呼び捨てにしないでもらおうか」
「ぐっ、こんなの…聞いてねぇぞ……カラン」
男の声が少しだけ弱くなったように聞こえる。
何が起きたのだろう。
それに魔法石を使っただけで殿下の手下と思われるなんてどういう事?
しかし、気がつくと伯爵が目の前に来ており私に手を伸ばしてきていた。
「エマ」
「え?」
「逃げるよ」
侯爵達は、と聞く前に、そちら側からダーンというすごい音が聞こえてくる。
「大丈夫」
私の疑問が聞こえたかのように伯爵が答え、あっという間に抱き上げられていた。一応気になり音が聞こえた方を見ると、侯爵達はランクの後ろ側に立っておりカランは片膝をついてお腹を抱えていた。ランクの手には既に何かの魔法が唱えられているのか光る玉があるように見える。
私が見ることができたのはそこまで。
「エマ、ごめんね」
「はくしゃ……」
目がさめるとふかふかな豪華なベットの上に寝ていた。一体いつの間に寝ていたのだろう。そういえば伯爵にごめんと言われた後に気が遠くなった気がする。体を起こさずに左右を見ると、この部屋には誰も居ないようだった。
ゆっくりと体を起こそうとする。
「……はれ?」
体に全く力が入らない。
腕を動かそうとしても脱力し機能しなかった。
そもそもここはどこなのか。伯爵に連れられたから彼の家だろうか。
目の前にあるベットの天井を睨みながらどうしようかと考えていると、外から声が聞こえてきたのが分かった。
2人くらいいるだろうか。何かを話している。
「______!」
「______!」
部屋の外にだからか内容まで聞き取れないが、何かを言い争っているように思う。
人が寝てる部屋の前で言い争いをするんじゃないよ、と呑気な事を考えているとガチャリと扉が開きその2人が入ってくる。
私は思わず目をつぶって寝ているふりをした。
「全く、リチャード様にも呆れましたよ。人をなんだと思っているのでしょう」
「いや、昔からあの方はその人の為に動いているのだから今回の件も、今更だろう」
「ですが、こんな人さらいみたいな真似をするなんて、しかも殿下から頂いた魔法石まで使って眠らせているのですよ」
「あんまり騒ぐなよ、いくら魔法石でも騒ぎ立てれば起きる」
「でも」
「サリィ、リチャード様の命は絶対だ」
「……分かりました」
しばらく彼らは何かかちゃかちゃと音を立て何かを組み立てていたが、準備が終わったのか出て行った。
彼らが話していた『人さらいみたいな真似』をされたのは私の事ではないだろうか。その後に『騒いだら起きる』という事を話していたのだからきっとそうだろう。
ふむ。
これはもしや、逃げた方がいいのだろうか。
リチャード様って伯爵の事だと思ったけど、彼は私を攫ったらしい。あの状況ではきっと助けを求めていただろうから正直攫われたというのには語弊があるのだけど。
動かない体に頑張って力を入れてみるが、やはりいう事を聞いてくれなかった。これは身体がまだ寝ている状況からくる動かないだったのか。
だったらもう少し寝たら回復するかもしれない。
先程彼らが何かをセットしていたのが気になるけれど、今でも動けないのなら仕方ないだろう。
私は大人しく目を閉じた。
_________________
さて、これはとある本の内容である。
『カラン・スタートッド』
いつ誕生したのかは不明とされる人間とは言えない生物。
世界唯一の『魔法使い』であり、代々の国王を補佐する人物であった。
1年、世界の歴史を年数として数え始めた時、魔法使いによって国王という存在が作成される。
78年、魔法使いという存在がいる事が世界に発表される。
406年、王族を皆殺しにされる事件において犯人として捕まり、世界に4人いる魔女達の手によってその殆どの魔力を封印され、地下牢に投獄される。
(427年、魔力を使用できる人物が減少した事が判明する。)
679年、地下牢から忽然と姿を消す。
1158年現在、カランと名乗る者が現れ各地で悪行を働く事件が多発する。
※魔法使いとは、人間とは違い魔力をエネルギーとして生存している。魔力が無くなる時が死ぬ瞬間とされているが世界の魔力生産は彼ら(魔法使いと魔女)によって行われているため完全に殺すことはできないとされる。
※魔女との相違点、性別が人間で言う男という事。人間に恋をしてはいけない事。魔女に呪いをかけられる事。
魔女は魔法使いによって呪われておりその呪いが解けることは無いが、これにより人間と恋をする事が可能となった。
何故ならば…………
以降の記述が破かれている。
伯爵がこちらを向いてにこりと笑う。
少しだけ息が上がっているのを見ると、急いでここに駆けつけてくれたのだろう。やはり手紙を出しておいて良かった。
「まずその2人を解放してもらいたのですが、長殿」
「あっはははは!!トルネン伯爵殿でしたかー、貴方様は魔法が使えないそうですねぇ!そんな奴に…………俺が従うと思うんじゃねぇぞ!!!」
がっしゃーーんという音を立てて伯爵の横にあった棚が吹っ飛んだ。だが、何かしらの攻撃を仕掛けられたように見えた伯爵には傷一つついていない。
魔法の圧で風が舞い、伯爵の服を揺らした。
「なるほどな……」
多少なりとも傷つけられると思っていたのか、男は驚愕とも言える声を漏らす。
私からは見えないが、目を見開いて伯爵を見つめる姿が想像できた。
「私が何も対策せずに突っ込むと思ったのか、カラン・スタートッド」
「へぇ、その名前を知ってんのか、何者だお前」
「…………2人を離せ」
「むりだねぇ!!」
鋭い光が走り、つい目をつぶった。
ギィンという音が伯爵から聞こえ、目を薄っすらと開けると、伯爵の片手には先程までは構えていなかった短剣があった。その剣が何かをはじき返した音だったらしい。
もしかして魔法銃かなにかを使ってきたのかもしれない。
張り詰めた空気に、先程とは違う意味で身動きが取れないかった。それに、カランという男の近くにいる侯爵達はどんな状況なのだろうか。
「おいおい……魔力は無いんじゃなかったのかよ」
「魔力が無い者も同じ場で戦わなければいけないんだ。この程度造作もない」
「ほう、戦う、ねぇ」
カランの方から動く音が聞こえてきた。すると、伯爵が素早く胸ポケットから何かを取り出しカランの方向に投げた。
「魔法石!?お前レイの手下か」
「殿下の名前を呼び捨てにしないでもらおうか」
「ぐっ、こんなの…聞いてねぇぞ……カラン」
男の声が少しだけ弱くなったように聞こえる。
何が起きたのだろう。
それに魔法石を使っただけで殿下の手下と思われるなんてどういう事?
しかし、気がつくと伯爵が目の前に来ており私に手を伸ばしてきていた。
「エマ」
「え?」
「逃げるよ」
侯爵達は、と聞く前に、そちら側からダーンというすごい音が聞こえてくる。
「大丈夫」
私の疑問が聞こえたかのように伯爵が答え、あっという間に抱き上げられていた。一応気になり音が聞こえた方を見ると、侯爵達はランクの後ろ側に立っておりカランは片膝をついてお腹を抱えていた。ランクの手には既に何かの魔法が唱えられているのか光る玉があるように見える。
私が見ることができたのはそこまで。
「エマ、ごめんね」
「はくしゃ……」
目がさめるとふかふかな豪華なベットの上に寝ていた。一体いつの間に寝ていたのだろう。そういえば伯爵にごめんと言われた後に気が遠くなった気がする。体を起こさずに左右を見ると、この部屋には誰も居ないようだった。
ゆっくりと体を起こそうとする。
「……はれ?」
体に全く力が入らない。
腕を動かそうとしても脱力し機能しなかった。
そもそもここはどこなのか。伯爵に連れられたから彼の家だろうか。
目の前にあるベットの天井を睨みながらどうしようかと考えていると、外から声が聞こえてきたのが分かった。
2人くらいいるだろうか。何かを話している。
「______!」
「______!」
部屋の外にだからか内容まで聞き取れないが、何かを言い争っているように思う。
人が寝てる部屋の前で言い争いをするんじゃないよ、と呑気な事を考えているとガチャリと扉が開きその2人が入ってくる。
私は思わず目をつぶって寝ているふりをした。
「全く、リチャード様にも呆れましたよ。人をなんだと思っているのでしょう」
「いや、昔からあの方はその人の為に動いているのだから今回の件も、今更だろう」
「ですが、こんな人さらいみたいな真似をするなんて、しかも殿下から頂いた魔法石まで使って眠らせているのですよ」
「あんまり騒ぐなよ、いくら魔法石でも騒ぎ立てれば起きる」
「でも」
「サリィ、リチャード様の命は絶対だ」
「……分かりました」
しばらく彼らは何かかちゃかちゃと音を立て何かを組み立てていたが、準備が終わったのか出て行った。
彼らが話していた『人さらいみたいな真似』をされたのは私の事ではないだろうか。その後に『騒いだら起きる』という事を話していたのだからきっとそうだろう。
ふむ。
これはもしや、逃げた方がいいのだろうか。
リチャード様って伯爵の事だと思ったけど、彼は私を攫ったらしい。あの状況ではきっと助けを求めていただろうから正直攫われたというのには語弊があるのだけど。
動かない体に頑張って力を入れてみるが、やはりいう事を聞いてくれなかった。これは身体がまだ寝ている状況からくる動かないだったのか。
だったらもう少し寝たら回復するかもしれない。
先程彼らが何かをセットしていたのが気になるけれど、今でも動けないのなら仕方ないだろう。
私は大人しく目を閉じた。
_________________
さて、これはとある本の内容である。
『カラン・スタートッド』
いつ誕生したのかは不明とされる人間とは言えない生物。
世界唯一の『魔法使い』であり、代々の国王を補佐する人物であった。
1年、世界の歴史を年数として数え始めた時、魔法使いによって国王という存在が作成される。
78年、魔法使いという存在がいる事が世界に発表される。
406年、王族を皆殺しにされる事件において犯人として捕まり、世界に4人いる魔女達の手によってその殆どの魔力を封印され、地下牢に投獄される。
(427年、魔力を使用できる人物が減少した事が判明する。)
679年、地下牢から忽然と姿を消す。
1158年現在、カランと名乗る者が現れ各地で悪行を働く事件が多発する。
※魔法使いとは、人間とは違い魔力をエネルギーとして生存している。魔力が無くなる時が死ぬ瞬間とされているが世界の魔力生産は彼ら(魔法使いと魔女)によって行われているため完全に殺すことはできないとされる。
※魔女との相違点、性別が人間で言う男という事。人間に恋をしてはいけない事。魔女に呪いをかけられる事。
魔女は魔法使いによって呪われておりその呪いが解けることは無いが、これにより人間と恋をする事が可能となった。
何故ならば…………
以降の記述が破かれている。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる