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納豆ピザ

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フライパンのフタはフライパンと同じ形で取手も同じ金属のU字型で深さが無いからフタの役割をしている。
同じ金属だからフタでなにかを焼くこともできる。
それだけ熱伝達率が高いので当然すごく熱い。
沙織は耐熱手袋をしてフタを取ってみた。
中からはピザと納豆の匂いが逃げ場を与えられた湯気が一緒に湧き上がった。
香織と沙織は少し感動した。
前回のステーキピザは見た目ほとんどチーズだったので「映え」がなかった。
今回は真っ当なピザの姿をし、しかも納豆が載っているのが一目でわかる。
沙織はスマホを取り出して写メに納めた。
香織も「わたしも」と、カシャリとやった。

「さてお待ちかねの納豆ピザ。いかなる味なのか、だね」

香織はふと気づいたことがあった。

「もしかして名前が地井頭だからチーズのピザにこだわった?」

一瞬、沙織は動きを止めた。

「それベタ過ぎない?」

と、意味ありげに香織を見つめている。
いたずらな目だ。

「え?そうなの?」

ごまかすように沙織は納豆ピザを皿に移した。

「地井頭がチーズを食べるってことだったなんて」

「ベタ過ぎて言えない」

「あ。白状した」

「ハハハ」

香織はスマホの時計を見た。

「はい午前11時半。現行犯逮捕」

「逮捕されちゃったよ」

そうこう言ってるうちに沙織は折りたたみナイフで納豆ピザを切り分けた。

「それもなんか凝ったナイフなの?」

「スパイダルコのナイフ。CPMだからけっこういい鋼材なんだって。肉とかよく切れるしスリップジョイントでロックが無くて開け閉めが楽。さて、じゃ食べよう」

「うむ」

香織と沙織は期待溢れる目で同時に納豆ピザに食いついた。
モグモグと咀嚼する勢いが少しずつなくなったいった。
お互い微妙な表情を見合わせた。

「これって…」

香織はどう表現しようか言葉を選んでいる。

「マズい!」

吹き出しそうになるのを横を向いて香織は堪えた。

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