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戦利品

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カフェの丸いテーブルの上には山積みされたロックマとマルだぬきで互いの顔がギリ見えるといった状態だった。

「みんなUFOキャッチャーうまいね」

香織は驚いた。
1個でもちゃんと取れたことはない。
沙織が寿司ざんまいのように両手を広げて見せた。

「じゃ。好きなの持ってって」

「あ。こっちのマルだぬきもね」

真紀理も負けずに勧める。

「マルだぬきかぁ。リコピンこういうの好きなんだね」

「カワイイでしょ」

「ま、まあね」

「愛洲さんには、土下座たぬきとたぬき寝入りをあげたから、地井頭ネエさんにたぬきオヤジなんかどうです?」

「なんでわたしがたぬきオヤジなの?」

腹巻きステテコ姿のマルだぬきが一升瓶をもって湯呑みを持っている。

「カワイくないですか?」

「うら若き乙女がオヤジもらってもね…」

「ならばそれはわたくしめがちょうだいしたくぞんじます」

亜香里がちょうだいと手を出した。
真紀理は「じゃあ」と、たぬきオヤジを渡した。

「なんでそんなのほしいの?」

香織の疑問に亜香里のメガネが反射し目の表情が見えなかったが「父にそっくりなので」
という言葉に3人は爆笑した。

「いいわぁそういうの…」

笑い過ぎて出てしまったわずかな涙を沙織はハンカチで拭った。

「ぜひ父の晩酌の時にお酒のおつまみの隣に置いてみたいと思います」

腹を抱えて震えてるのは香織だ。相当ツボにハマった。

「それ見てみたい…」

沙織はスーツ姿のたぬきオヤジを見つけた。
その頭に向かってデコピンで弾いた。

「はっ!おやめくださいまし。わたくしの父にそのような…」

「あははははは」

沙織はたまらず爆笑した。

「ちがうでしょ!これあんたのお父さんじゃないから」

「似てるので」

香織はさりげなく亜香里のメガネを取った。

「なにを…」

沙織は悪い笑みでもう一度スーツのたぬきオヤジをデコピンした。

香織が「らめるのだ~!拙者の父上になにをする!」と、スーツのたぬきオヤジを取り上げた。
その必死な姿に3人は腹を抱えて震えた。もはや声も出ないほどに。
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