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風呂と刀
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愛洲香織の家は大きくはないが古い武家屋敷だった。
道場が隣接していて亜香里の両親、黒胡麻の夫婦が出入りし香織の身の周りのことや使いを頼まれていた。
「亜香里を助けてくれた礼だ。なにもないがゆっくりしていってくれ」
「…お武家様どうぞこちらへ」
周囲を一瞥し、亜香里の母、カズに案内されるままに沙織は奥へと進んで行った。
夜、仕事を終えると黒胡麻家で風呂を借りることがある。
沙織が二人をねぎらう意味でそれを許していた。
ちょうどカズが入ろうと湯を沸かしていたところだった。
しかし亜香里のことで風呂の火を一度消したのだが、薪を焚べるとすぐに熱い湯へ戻った。
「ではゆっくりしてくれ」
「…」
香織は出て行った。
カズは「お背中をお流しします」
「いやいい。あとはひとりで大丈夫だ」
「あの…」
「なんだ?」
カズは両手をついて感謝した。
「娘を救っていただき感謝の言葉もございません!ここにいる間はなんなりと申しつけください」
「わかった。そろそろ風呂に入りたい」
「あ。そうですね。失礼しました」
カズは深々と頭をさげ出て行った。
沙織は袴を下ろし、血だらけの着物を床に落とすと腹に巻いていた晒に潜ませていた苦無(棒手裏剣)を二本取り出し、風呂場の戸を開け、すかさず戸口の壁に身を隠した。
風呂場を注意深く見て無人であることを確認する。
今度はカズの出て行った戸を警戒しながら戸を閉めた。
苦無を上段と中段に構えながら様子を見る。
誰も攻撃に来ないことを確認し、桶で湯を自分にかけ血を落とし、浴槽に浸かった。
「はあ~…」
思わずため息が出た。
すると脱衣場に誰か入ってきた。
浴槽の縁に置いておいた苦無を取り戸口を睨んで構えた。
「わたしの古着だが使ってくれ。袴もある」
香織が着替を持ってきたのだ。
「そ、それは助かる。かたじけない」
脱衣場の隅に沙織の風呂敷包みの荷物と両差しが立て掛けてある。
警戒していれば脇差しだけでも風呂場に持ち込むだろう。
刀の鞘は漆を施してあるので防水性はある。
肝心の刀身は鞘に収まっているときそう簡単には抜けない。
そのためのハバキだ。
刀身と鍔の間にある金色の部分だ。
ハバキが鞘の鯉口にしっかりハマっていれば密閉性もあるということだ。
なので風呂に入る横に刀を立て掛けておいてもさほど問題ではない。
しかし脱衣場に置いてあるということは信用してくれているということだ。
香織は嬉しかった。
しかし実際には沙織は浴槽で苦無を構えていた。
「湯加減はいかがですか?」
カズの声だ。
「ちょ、ちょうどいい…」
「ではゆっくりしてくれ」
香織とカズは出て行った。
沙織は苦無を縁に置いて鼻まで湯に浸かった。
いい人たち…なのか?
道場が隣接していて亜香里の両親、黒胡麻の夫婦が出入りし香織の身の周りのことや使いを頼まれていた。
「亜香里を助けてくれた礼だ。なにもないがゆっくりしていってくれ」
「…お武家様どうぞこちらへ」
周囲を一瞥し、亜香里の母、カズに案内されるままに沙織は奥へと進んで行った。
夜、仕事を終えると黒胡麻家で風呂を借りることがある。
沙織が二人をねぎらう意味でそれを許していた。
ちょうどカズが入ろうと湯を沸かしていたところだった。
しかし亜香里のことで風呂の火を一度消したのだが、薪を焚べるとすぐに熱い湯へ戻った。
「ではゆっくりしてくれ」
「…」
香織は出て行った。
カズは「お背中をお流しします」
「いやいい。あとはひとりで大丈夫だ」
「あの…」
「なんだ?」
カズは両手をついて感謝した。
「娘を救っていただき感謝の言葉もございません!ここにいる間はなんなりと申しつけください」
「わかった。そろそろ風呂に入りたい」
「あ。そうですね。失礼しました」
カズは深々と頭をさげ出て行った。
沙織は袴を下ろし、血だらけの着物を床に落とすと腹に巻いていた晒に潜ませていた苦無(棒手裏剣)を二本取り出し、風呂場の戸を開け、すかさず戸口の壁に身を隠した。
風呂場を注意深く見て無人であることを確認する。
今度はカズの出て行った戸を警戒しながら戸を閉めた。
苦無を上段と中段に構えながら様子を見る。
誰も攻撃に来ないことを確認し、桶で湯を自分にかけ血を落とし、浴槽に浸かった。
「はあ~…」
思わずため息が出た。
すると脱衣場に誰か入ってきた。
浴槽の縁に置いておいた苦無を取り戸口を睨んで構えた。
「わたしの古着だが使ってくれ。袴もある」
香織が着替を持ってきたのだ。
「そ、それは助かる。かたじけない」
脱衣場の隅に沙織の風呂敷包みの荷物と両差しが立て掛けてある。
警戒していれば脇差しだけでも風呂場に持ち込むだろう。
刀の鞘は漆を施してあるので防水性はある。
肝心の刀身は鞘に収まっているときそう簡単には抜けない。
そのためのハバキだ。
刀身と鍔の間にある金色の部分だ。
ハバキが鞘の鯉口にしっかりハマっていれば密閉性もあるということだ。
なので風呂に入る横に刀を立て掛けておいてもさほど問題ではない。
しかし脱衣場に置いてあるということは信用してくれているということだ。
香織は嬉しかった。
しかし実際には沙織は浴槽で苦無を構えていた。
「湯加減はいかがですか?」
カズの声だ。
「ちょ、ちょうどいい…」
「ではゆっくりしてくれ」
香織とカズは出て行った。
沙織は苦無を縁に置いて鼻まで湯に浸かった。
いい人たち…なのか?
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