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あの男
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香織と沙織は茶屋でみたらし団子とお茶を堪能した。
「オレも元々借金のカタに親に売られたんだ。だがその元締めに連れられてゆく途中オレを見かけた子供のいない夫婦が買って養子にしてくれたんだ」
「そうだったのか」
「自分は助けられた。だから亜香里が手籠めにされるのを見てどうしても助けないわけにはいかなかった」
「そうか。で、剣はその里親が傚わせてくれたのか?」
「ああ。女なのに剣まで教えてくれた」
沙織の目は遠くを見ていた。
きっと楽しい思い出がたくさんあるのだろうと香織は思った。
「それで?なにか言わなければならないことがあろう」
「なにを?」
「剣を修行しておれば毎日男と太刀を組むことになる」
香織は身を乗り出した。
「無外流といえば上士の技と聞く。志の高いよい男達がたくさんおったのではないか?」
さきほどの仕返しとばかりに沙織を攻め立てた。
「よい男…?」
沙織は目を逸らした。
「今、目を逸したなおぬし。言うのだ!ほら。おぬしの想い人の話をしてみよ」
「話し方が亜香里そっくりではないか」
「あやつがわたしの真似をしているのだ。そんなことよりもおぬしの想い人の話をせえ」
ふと沙織は遠く寂しい目をした。
悲しい思い出がありそうだと香織はすぐに感じた。
「ま。無理には聞くまい」
みたらし団子を平らげ香織が財布を出そうとすると「ここはオレが」
「よいのか?」
「世話になっているしな」
と、取り出したのは金色の刺繍が施された派手な財布だった。
これは河本一家を斬った際、親分の河本からくすねたものだ。
そうでもしないと女侍の浪人がひとりで生きていくことは難しい。
香織は沙織の財布を見てもとくに気にはしなかった。
そこへ右目に眼帯をつけその周りに傷を負った男が入って来た。
沙織は一瞬固まったがすぐに顔を伏せ茶を飲むふりをした。
「では出よう。すまぬが店の者を呼んでくれ」
香織は「勘定を頼む」
沙織は下を向いたまま金を出すとそそくさと茶屋を出た。
幸い眼帯の男は気づかなかったようだ。
「香織殿。すまぬが先に帰っててくれぬか。用事を思い出した」
「わかった。では先に戻っている。道はわかるな」
「心配ない。ではあとでな」
香織は帰って行った。
沙織は路地に身を隠し茶屋から眼帯の男が出てくるのを待った。
「あの男…」
「オレも元々借金のカタに親に売られたんだ。だがその元締めに連れられてゆく途中オレを見かけた子供のいない夫婦が買って養子にしてくれたんだ」
「そうだったのか」
「自分は助けられた。だから亜香里が手籠めにされるのを見てどうしても助けないわけにはいかなかった」
「そうか。で、剣はその里親が傚わせてくれたのか?」
「ああ。女なのに剣まで教えてくれた」
沙織の目は遠くを見ていた。
きっと楽しい思い出がたくさんあるのだろうと香織は思った。
「それで?なにか言わなければならないことがあろう」
「なにを?」
「剣を修行しておれば毎日男と太刀を組むことになる」
香織は身を乗り出した。
「無外流といえば上士の技と聞く。志の高いよい男達がたくさんおったのではないか?」
さきほどの仕返しとばかりに沙織を攻め立てた。
「よい男…?」
沙織は目を逸らした。
「今、目を逸したなおぬし。言うのだ!ほら。おぬしの想い人の話をしてみよ」
「話し方が亜香里そっくりではないか」
「あやつがわたしの真似をしているのだ。そんなことよりもおぬしの想い人の話をせえ」
ふと沙織は遠く寂しい目をした。
悲しい思い出がありそうだと香織はすぐに感じた。
「ま。無理には聞くまい」
みたらし団子を平らげ香織が財布を出そうとすると「ここはオレが」
「よいのか?」
「世話になっているしな」
と、取り出したのは金色の刺繍が施された派手な財布だった。
これは河本一家を斬った際、親分の河本からくすねたものだ。
そうでもしないと女侍の浪人がひとりで生きていくことは難しい。
香織は沙織の財布を見てもとくに気にはしなかった。
そこへ右目に眼帯をつけその周りに傷を負った男が入って来た。
沙織は一瞬固まったがすぐに顔を伏せ茶を飲むふりをした。
「では出よう。すまぬが店の者を呼んでくれ」
香織は「勘定を頼む」
沙織は下を向いたまま金を出すとそそくさと茶屋を出た。
幸い眼帯の男は気づかなかったようだ。
「香織殿。すまぬが先に帰っててくれぬか。用事を思い出した」
「わかった。では先に戻っている。道はわかるな」
「心配ない。ではあとでな」
香織は帰って行った。
沙織は路地に身を隠し茶屋から眼帯の男が出てくるのを待った。
「あの男…」
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