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花と舞

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ここは面子など捨てて陰流の技を吸収して持ち帰る!

「もう一本お願い致す」

「参られよ!」

香織はまた正眼から脇構えを取った。
治三郎も脇構えを取った。
互いに打ち合う。
しかし木剣が木剣と重なる瞬間、香織の木剣が消える。

「なっ」

と、思った瞬間今度は腹に香織の木剣が当たった。

「あっ!」

香織はそのまま打ち抜いて斬り上げ、そのまま治三郎の首に当てた。

「くっ!もう一本お願い致す!」

左右斜めに木剣を振り回したと思ったら水平に一回転、今度は片手で回転して木剣を振り回す。
腕が伸び、香織の剣をなんとか受けるがそのまますり抜け、下からの逆袈裟、上からの袈裟、また水平斬りとすべての剣技が留まることを知らず、治三郎にらまるで舞を踊っているように見えた。
そして円を描いた刃圏はまるで花のようにも見えた。

美しい…この動き、女人だからなのか…それともこれが陰流の真髄なのか…?

見惚れていると治三郎の木剣にカンッ!カンッ!カンッ!と香織の剣が当たり治三郎の手が痺れた。

「よそ見している暇はないぞ!」

治三郎は必死で香織の動きについていった。
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