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社長か!

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「沙織が家に呼ばなかった理由ってこれだったわけね」

「ん?…うん、まあ…」

沙織の気のない返事など気にせず真紀理は「早くネェさんの部屋見たいっス!」
と、目を輝かせた。

「んじゃまあ行こっか。こっち」

沙織は階段を昇り出した。

2階の広い廊下の白い欧風の壁の両側には20世紀初頭のアール・ヌーヴォーのような金色のデザインのドアノブがアクセントになっている。

「映画とかで見る外国のホテルみたい」

「そういうコメントを聞きたくなかったんだよねぇ」

「ネェさんお姫様みたい」

「そういう意見はウェルカムだよ」

「亜香里はどこに連れてかれたの?」

「刀、見せられてると思う。何本…何振りかあるから」

「何振りあるの?」

「さあ…二十前後」

「二十!」

真紀理は初めての沙織の部屋を食い入るように見回した。

これが高校生の部屋?

うちのリビングより広そう…

沙織の机は窓を背にしたアンティークの味をかもした大きめの机なのに最新のデスクトップがミスマッチで沙織らしい。
沙織は机の前に椅子を2つおいて香織と真紀理を座らせた。
沙織だけがなぜかロッキングチェアで机の向こうに座った、というよりふんずりかえった。
社長と部下達のような違和感しかない構図。

「え。社長?なにこれ面接?」

「あはははははは。っぽいね」

「ネェさんカッコいい!」

香織は目を凝らして机に触れた。

「この机もアンティークだよね。下手したらシャーロックホームズとかが使ってたやつじゃないの?」

「シャーロックホームズは架空でしょ」

「ベッドとかないの?」

「寝室はべつだから。ここは書斎。てか勉強部屋か」

「なんでべつにしてるの?こんなに広いんだからベッド置けばいいじゃん」

「勉強してた部屋だと眠れないんだよね。眠りはべつじゃない」

「なにそのケーキは別腹みたいなやつ」

「あはははははは」

「ネェさん眠り姫みたいですね」

無垢な真紀理が乙女のあこがれるのように沙織を見つめる。

「いいよ!いいねぇその姫って響き。君にはあとでボーナスあげよう」

「だから社長か!」
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