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マイムマイム

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「フッ殺せるものなら…」

不敵な笑みを亜香里が浮かべた途端、香織は亜香里に飛びついてくすぐり始めた。

「死刑~!」

「わははははは。らめろー!らめるのだ~!」

転げ回る亜香里を執拗にくすぐった。
それを見て沙織が目を光らせた。

「うちらもいくよ!」

「ハイ!」

3人がかりで亜香里をくすぐりだした。

「うわああああ!らめろ~!」

「なんか知らないけどやめない」

「この子に礼儀を教えてやってたの」

「それはしっかり教えなきゃだね!」

沙織はさらにくすぐりに気合を入れた。

「ギャハハハハハ!3人がかりとは…ひ、卑怯者!」

「先輩に歯向かうとこうなるんだから」

「わははははは。く、苦しいィー…死ぬぅうう!」

しばらく3人は亜香里をくすぐり続け飽きてくると「そろそろ稽古しよっか」と沙織が言い出した。

「そだね」

3人はぶっ倒れて息をぜいぜいさせている亜香里をなにもなかったように放っておいて稽古を始めた。

今日は真紀理がキックボクシングを教える日になっていた。
沙織が回し蹴りをやりたいと言い出したのがきっかけだ。

「前蹴りと横蹴りに回し蹴りがないと地井頭沙織拳は完成しない!」

香織も伝統武道とは違う技に興味はあった。
やってみると科学的で実戦的に思えた。
ジャブで距離を測り牽制しストレートでキメる。
真紀理は基本だと言っていたが香織はカルチャーショックを受けるほど納得した。
左右の手にそれぞれ違う役割がある。
崩しのジャブがありキメ技の右ストレートがある。
いつのまにか復活して練習に参加していた亜香里は「コレは剣の手の内に近いな」と言った。

…そうか…なるほど…

香織も剣の素振りに置き換え、横に捻る軸でなく剣を振るように縦まわりの軸でパンチをし始めた。すると左右のパンチが無理なく連動した。

「ハイ。ステップもちゃんと合わせて。そうすると動けるから」

真紀理がそう言いながら3人の周りをジャブをしながら回りだした。

「厶ッ。常に動かれていては攻めにくい」

亜香里の言葉に香織も内心同意した。

「いいね」

沙織が真紀理の後ろからジャブをしながら追った。
香織も亜香里もなんとなく同じようにジャブをしながら2人を追った。
真紀理がそれに気づいた。

「みんなで追ってこなくていいから。マイムマイムみたいになってる!」
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