アイスとチーズ

迷熊井 泥(Make my day)

文字の大きさ
167 / 167

2人の運命をどう伝えようか…

しおりを挟む
それは壁の瓦の上を猫のように走り、跳躍した。
庭では虎蔵に追い詰められた沙織が曲がった脇差しを振り回して抵抗しているところだった。
虎蔵が沙織の脇差しを片方の兜割りで抑え、もう片方の兜割りで沙織の頭を砕こうとした刹那のことだった。

「おい!大男!」

虎蔵は七尺(二メートル十センチ)のさらに上からの声を耳にした瞬間、敵襲と認識し沙織に振り上げた兜割りを声の方へと振り回した。
その者は虎蔵の手首と兜割りに両足で乗るように逸した。
太陽を背にしたその者の影は虎蔵を覆ったため虎蔵はなにが向かってきたのかすらわからなかった。
気づいた時は、頑丈そうな刀の鍔が上から下へ目の前を通り、その刀身の厚みを頭の割れ方で感じた。
それが虎蔵の最後の意識した感覚だった。
周囲のやくざ達は信じられない光景を目の前にし固まった。
虎蔵が腰まで真っ二つに割れ血が吹き出した。
一度割れた胴の両腕が体を支える形になったが割れた頭部の重い方から地面に落ち、虎蔵の巨体は地に倒れた。

前世で虎蔵を倒した時の熊斬斎の技だ。
当時は龍蔵の相手をしていた香織はどうやって熊斬斎が虎蔵を斬ったか知るよしもなかったが現世の夢で見たときは映画のようにすべての状況を見ることができた。
香織は前世の夢でとりわけこのシーンが好きだった。

「おい!そこの女子高生!」

熊斬斎の声?
香織が振り返ると熊斬斎の幸之介、いや幸介がいた。
今日は初めて2人で待ち合わせた。
芝生の上を子供達が楽しそうに駆け回っていたり、舞鶴公園を散歩コースにしている大人達が通り過ぎる。

「無事に出てこれたんですか?」

「まあね。いつもだったら沙織の関所があるんだけど今日はなんか様子おかしかった」

「顔赤かったんじゃないのかな…ふふ」

「あ~。言われてみるとなんか赤っぽかったような…」

香織は運命の相手と一緒に歩いていることがこの上なく嬉しかった。
しかし前世であったことを話すわけにはいかない。
イタイ女子だと思われてしまう。
沙織はたまたま?前世に近い夢を見た。
だから香織は前世を共有できたが、現世で実の兄と恋人同士だったというのはやはり恥ずかしかった。
香織は運命の相手だと言いたいがどう説明すればいいのか見当もつかなかった。

どうしよう…どうすれば伝えられるんだろう…

あの時からあの数百年前からあなたとこうして二人で歩きたかったとどう伝えればいいんだろう…

どれだけ頭を回転させても今日のこの一瞬ですべてを伝えることは不可能だ。
でも香織はあのときの幸之介の生まれ変わりと歩いている。

…もう。これだけでいい…

一緒にいられるなら…

幸介が口を開いた。

「やっと2人きりになれたね」

うん!

「はい…」

恥ずかしそうに幸介を見た。
爽やかで優しい笑みを浮かべたドのつくほどのイケメンは言った。

「三百年ぶりだね。陰流愛洲香織。この瞬間をどれほど待ちわびたか…」

「え?…」

「覚えてる?」

この人…知ってるんだ…

香織はまっすぐに幸介の眼差しを見つめた。
2人は三百年ぶりに再開し気持ちがひとつになった。
唇が重なるのにもう言葉はいらなかった。
そしてこの瞬間が2人にとって永遠になった。



アイスとチーズ FIN
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

ふくろう
2023.08.27 ふくろう

私も、合氣道の教室やってます!

合氣道を扱った作品は珍しいので、食い入るように読んでます。

かなり、合氣道を勉強されてますね、ご自分でもやられているんでしょうか?

合氣道で仲間を集める大変さは、身をもって体験してます。

二人の女子高生、頑張って下さい!( v^-゜)♪

2023.08.29 迷熊井 泥(Make my day)

ありがとうございます。

初感想で感激です。

合気道、やりだしてもう十年以上になります。

合気道の教室をされてるのですね。
ほんとに難しいですよね、人を集めるって。わかります。

この作品楽しんでいただけたら幸いです。

もっと合気道のこと書こうと思いました。◉⁠‿⁠◉

解除

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。