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第二幕 千紗の章
思いがけない協力者②
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「よぉ!久しぶりだなぁ将門」
「この厄病神! 今更何しに来やがった!! 」
「おうおう、相変わらず子猿は、キャンキャンキャンキャンうるせぇな」
「誰が子猿だっ!」
突然、何の前触れもなく訪れた玄明だったが、久しぶりの再会を喜ぶ間もなく四郎との喧嘩が始められる。
四郎が猿と言うならば、さしずめ玄明は犬といったところか。
相変わらず犬猿の仲である二人のやり取りをどこか楽しげに見守りながら、小次郎は「玄明、何故お前がここに?」と率直な疑問を投げ掛けた。
――藤原玄明。
自称大悪党の彼は、先の戦で小次郎に力を貸してくれた数少ない人間の一人だった。
だが、戦が終わった後、気付けば知らぬ間に姿を消していた。
自称“大悪党”であり、流浪の旅人でもある彼の事だ。再び流れたのだろうと、小次郎は思っていたのだが。
「なんでぇなんでぇ。再びの戦の噂を聞き付けて来てやったって言うのに、つれねぇなぁ。俺様がここに来た理由なんざ、そこにいるわっぱと同じさ」
「わ、わっぱとは、私の事でしょうか?」
わっぱと呼ばれ、落ち込む忠輔。
そんな忠輔の横で、玄明の言わんとしている事が分からないと、首を傾げる小次郎。
「…………おいおい、なぁに首を傾げていやがる。ここまで言えば、分かるだろ? 俺様が言わんとしている事が、分かるだろ??」
「??」
「……おいおいおい。これ以上は言えねぇぞ。俺様の口からは言わねぇぞ。そっちで察してくれや」
「はん。言えないってんなら好都合。おっさんにはさっさとお帰り願おうか」
「だぁれがおっさんだ。俺様はな、まだピッチピチの20代だっ! 子猿は黙っとけ」
「子猿じゃねぇ!こっちだってもうとっくに元服を済ませた立派な大人だぁ! 馬鹿にすんな!」
ガルルと互いのでこをぶつけあい、いがみ合う四郎と玄明。
どうしたら良いのかわからない様子で二人をオロオロと見守る忠輔。
久しぶりに賑やかな屋敷の様子に、小次郎はと言えば、久しぶりに声を上げて笑っていた。
「兄貴! 何が可笑しいんだ! 笑ってないで、さっさとこのおっさんを追い出してくれよ」
「何~? 人がせっかく助太刀に来てやったて言うのに!俺様の親切を無下にするつもりか?……って、あぁ~言っちまったぁ!? 自分の口から言っちまったじゃねぇか、この野郎」
「何が助太刀だ。おっさんが余計な事して事態をややこしくしてくれたおかげで、こっちはあの後大変だったんだからな。謀反の疑いかけられて兄貴は京へ呼び出されるわ、折角集まりかけてた同盟もパァになって、忘れたとは言わせねぇぞ!!」
「な~に~? そもそもな、あの戦は俺様が敵さんの情報を事前に集めて、教えてやったからこその勝利だろ! 子猿の方こそ忘れちまったのか」
「さぁ、どうかな。情報なんかなくたって、きっと兄貴なら勝ててたさ。とにかく俺達はおっさんの助けなんて必要としちゃいない。わかったらとっとと帰りやがれ! そして二度と俺達に関わるな! おっさんに関わるとろくな事がないんだからな、この疫病神!!」
益々激しさを増して行く玄明と四郎の言い争い。
それにつられるように、小次郎の笑い声も大きくなって行く。
「兄貴、さっきからうるさい! だから笑ってないで早くこのおっさん追い返ししてくれって!」
「何がおかしいんだ将門! お前もこの小猿のように、俺様の助けはもういらないって言うのか?」
「いや、そんな事はないさ。願ってもない申し出だ。貸してくれると言うのなら、是非ともまたお前の力も借りたいよ、玄明」
「ちょっと兄貴っ!」
小次郎の言葉に、玄明は照れたように、でもどこか満足気に笑う。
対称的に、四郎は不機嫌そうで、そんな弟をなだめながら小次郎は、玄明と忠輔、二人に向かって手を差し出した。
二人は一瞬、驚いた表情を浮かべながらも、差し出された意味を察して小次郎の手を握る。
不機嫌な顔はそのままに、更にその上にもう一人、四郎の手も重ねられる。
繋がりあった四つの手を暫く見つめた後、誰からともなく四人はそれぞれに、互いの顔を見合わせあった。
この瞬間、小次郎と忠輔、そして玄明の間に、同盟関係が結ばれた。
「この厄病神! 今更何しに来やがった!! 」
「おうおう、相変わらず子猿は、キャンキャンキャンキャンうるせぇな」
「誰が子猿だっ!」
突然、何の前触れもなく訪れた玄明だったが、久しぶりの再会を喜ぶ間もなく四郎との喧嘩が始められる。
四郎が猿と言うならば、さしずめ玄明は犬といったところか。
相変わらず犬猿の仲である二人のやり取りをどこか楽しげに見守りながら、小次郎は「玄明、何故お前がここに?」と率直な疑問を投げ掛けた。
――藤原玄明。
自称大悪党の彼は、先の戦で小次郎に力を貸してくれた数少ない人間の一人だった。
だが、戦が終わった後、気付けば知らぬ間に姿を消していた。
自称“大悪党”であり、流浪の旅人でもある彼の事だ。再び流れたのだろうと、小次郎は思っていたのだが。
「なんでぇなんでぇ。再びの戦の噂を聞き付けて来てやったって言うのに、つれねぇなぁ。俺様がここに来た理由なんざ、そこにいるわっぱと同じさ」
「わ、わっぱとは、私の事でしょうか?」
わっぱと呼ばれ、落ち込む忠輔。
そんな忠輔の横で、玄明の言わんとしている事が分からないと、首を傾げる小次郎。
「…………おいおい、なぁに首を傾げていやがる。ここまで言えば、分かるだろ? 俺様が言わんとしている事が、分かるだろ??」
「??」
「……おいおいおい。これ以上は言えねぇぞ。俺様の口からは言わねぇぞ。そっちで察してくれや」
「はん。言えないってんなら好都合。おっさんにはさっさとお帰り願おうか」
「だぁれがおっさんだ。俺様はな、まだピッチピチの20代だっ! 子猿は黙っとけ」
「子猿じゃねぇ!こっちだってもうとっくに元服を済ませた立派な大人だぁ! 馬鹿にすんな!」
ガルルと互いのでこをぶつけあい、いがみ合う四郎と玄明。
どうしたら良いのかわからない様子で二人をオロオロと見守る忠輔。
久しぶりに賑やかな屋敷の様子に、小次郎はと言えば、久しぶりに声を上げて笑っていた。
「兄貴! 何が可笑しいんだ! 笑ってないで、さっさとこのおっさんを追い出してくれよ」
「何~? 人がせっかく助太刀に来てやったて言うのに!俺様の親切を無下にするつもりか?……って、あぁ~言っちまったぁ!? 自分の口から言っちまったじゃねぇか、この野郎」
「何が助太刀だ。おっさんが余計な事して事態をややこしくしてくれたおかげで、こっちはあの後大変だったんだからな。謀反の疑いかけられて兄貴は京へ呼び出されるわ、折角集まりかけてた同盟もパァになって、忘れたとは言わせねぇぞ!!」
「な~に~? そもそもな、あの戦は俺様が敵さんの情報を事前に集めて、教えてやったからこその勝利だろ! 子猿の方こそ忘れちまったのか」
「さぁ、どうかな。情報なんかなくたって、きっと兄貴なら勝ててたさ。とにかく俺達はおっさんの助けなんて必要としちゃいない。わかったらとっとと帰りやがれ! そして二度と俺達に関わるな! おっさんに関わるとろくな事がないんだからな、この疫病神!!」
益々激しさを増して行く玄明と四郎の言い争い。
それにつられるように、小次郎の笑い声も大きくなって行く。
「兄貴、さっきからうるさい! だから笑ってないで早くこのおっさん追い返ししてくれって!」
「何がおかしいんだ将門! お前もこの小猿のように、俺様の助けはもういらないって言うのか?」
「いや、そんな事はないさ。願ってもない申し出だ。貸してくれると言うのなら、是非ともまたお前の力も借りたいよ、玄明」
「ちょっと兄貴っ!」
小次郎の言葉に、玄明は照れたように、でもどこか満足気に笑う。
対称的に、四郎は不機嫌そうで、そんな弟をなだめながら小次郎は、玄明と忠輔、二人に向かって手を差し出した。
二人は一瞬、驚いた表情を浮かべながらも、差し出された意味を察して小次郎の手を握る。
不機嫌な顔はそのままに、更にその上にもう一人、四郎の手も重ねられる。
繋がりあった四つの手を暫く見つめた後、誰からともなく四人はそれぞれに、互いの顔を見合わせあった。
この瞬間、小次郎と忠輔、そして玄明の間に、同盟関係が結ばれた。
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