チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆

文字の大きさ
17 / 69

第4話 追放勇者、暗殺される【その1】

しおりを挟む
 夜の歓楽街。木造と石造りの建物が並び、街灯が暗闇を照らしていた。そのため表通りはまるで昼間のように明るく、先程までは多くの人通りも見られた。
 そんな賑やかな繁華街から、道を1本ずらした路地裏。街灯の光も入って来ず、非常に薄暗い。赤の他人を巻き込まないようにと、サックは大通りに戻ることを避けたのだが、結果的には『暗闇』という、暗殺向きな場所を提供しただけだった。

(脇腹の傷は……塞がったな)
 サックは建物に寄りかかり、刺された脇腹に手を添えた。旅人の服には穴が空き、おびただしい量の血液が流れた跡がついていたが、身体の傷の方は既に瘡蓋が出来ており、失血は止まっていた。
(この傷……『クナイ』か)
 傷の形状から瞬時に凶器の鑑定を済ませ、サックは今、『何に追われているのか』を今一度冷静になって考えていた。

 ヒュッ! 

 風を切る音。すかさずサックは身を伏せた。すると先程までサックが立っていたところに、鉄製の棒が打ち込まれた。
 これは『棒手裏剣』と呼ばれ、一般的にイメージされる手裏剣とは異なり、ペン軸大の鉄棒先端を研いだ非常にシンプルなものである。平たい手裏剣に比べ、扱うには相当の技量がいるが、殺傷能力は高く、また量産しやすい。

(投げたのは1本だけ。牽制か)
 サックは立ち上がり、壁に突き刺さった棒手裏剣を抜いた。例に漏れず先端は鋭利に加工されていた。飛んできた方向を見るが、闇が邪魔して見えない。それにおそらく、もう敵はいないだろう。
 敵は暗闇に乗じて襲ってくる。このままではジリ貧だ。

(マント、新調しておいてよかったぜ)
 サックは路地裏に落ちている適当なゴミや、廃材などを拾い集めた。
 このままな訳にはいけない。サックは状況を打開すべく、攻めの体制に入った。

(いくぜ、久々の『本気』モード!)
 マントに力を込め、靡かせた。するとサックの身体が軽くなった。マントに付加されていた能力の効果だ。
 そして、彼は空高く闇夜に舞い上がった。


 ++++++++++++++


 12時間前。

 ビルガドの最北端、ハクノ区。
 サックの目的地のひとつである。彼は昨晩遅くにこの区画を訪れ、適当な宿に宿泊した。そして、彼は今、朝食を摂っていた。
 宿に併設されていた、小洒落たカフェテリア。香り高い紅茶に、あっさりグラスティー。濃いめのミルクティーなど飲み物の種類も豊富で、何より朝御飯に最適なエッグトーストなどの軽食も楽しめる。
 よく日の当たるテラス席も常設しており、サックはそこで、遅めのモーニングを頂いていた。今しがたトーストを食べ終え、美味しい紅茶を嗜みつつ、小説を優雅に読み進めていた。

 女神の情報を集めてビルガドに来たのだが、昨今の、憲兵詰所火事の件もあり、あまり情報収集の進捗は芳しくなかった。が、唯一ともいえる手がかりとして、一冊の本をサックは入手していた。
 なんの変哲もない、勇者の冒険譚をモチーフにした、どちらかというと子供向けの文学小説だ。

 暖かな日差しを浴びながら、黙々と読書に励むサック。読み進めれば進めるほど、この本から感じられる違和感は大きくなっていった。
 何よりこの本。
 中古屋で手に取った時には既に『失念』の付与術が施されていたのだ。

 あのエロ本……もとい、ワイロメンバーのリストを古本屋で見つけたとき。そのときに一緒に手に取った小説である。驚いたことに、小説に付いていた失念能力は非常に強く、長年忘れ去られていた形跡がみられた。サックすらも最初は、この小説は偶然に入手したものであった。そして当初は適当に売り払うつもりでいたが、これほどまで強い『失念』が付いた本の中身が気になり読み始めた次第だ。

「あまりに、詳しすぎる」
 サックの、本に対する感想である。勇者一行が魔王を倒すまでが、子供でも解りやすい文章で描かれているのだが、問題はその内容だ。
 出てくる国名はもちろん、アイテムを入手するために訪れた場所、そのアイテム名、魔王の部下の名前、役職、攻略法……。
 まるで本当にその場所に居たかのようであった。
 が、異なる部分も多々あった。クエストの攻略法や、心理描写、アイテム入手方法などなど。特に人物名は全く異なる。出てくる勇者の名前は、全く知らない人たちだ。

(もしかして……先代の勇者の記録か?)
 数百年前にも、魔王は復活し、そして勇者たちに封印された。その当時の記録は殆ど残っていない。一部が口伝され、おとぎ話として残る程度だった。

「これは……大発見かもな」
「なーにが『大発見かもな』ですかっ!!」

 バンっ! 

 激しく叩きつける小柄な手が、オシャレなテーブルを揺らした。
 寸前のところで、サックは飲みかけの紅茶を手に取り浮かしていたので、お茶はこぼれずにすんだ。

「朝から激しいな新聞屋──てか、よくここが分かったな」
「勇者専属新聞屋の探索サーチ能力、舐めないで頂きたいですね。本気を出せばすぐ探し出せます!」
 それって、いつでも監視可能って脅しているようにも聞こえるが……などとサックは思いながらも、紅茶を定位置に戻して小説を閉じ懐に押し込んだ。

「そんなことより! これ何ですかっ!!」
 新聞屋『クリエ=アイメシア』が、突然朝のカフェテリアに現れたかと思ったが束の間、なにやら紙の束を机においた。数十枚ほどの揃えられた紙束は端を紐で綴られていた。

 ぺらっ。

 サックは怪訝な顔をしながら、その束を一枚めくった。中身はどうやら新聞の切り抜きのようだ。特に地方紙が中心のようだが、その見出しにサックは脅き、そして呆れた。

『道化師 結婚詐欺か 近く立件へ』
『追放勇者、教団を設立か』
『「私は勇者」街中で裸の男逮捕』
『食い逃げ犯、勇者ベルキッドを名乗る』
『自称勇者、食い逃げか、余罪追求』
『食べ放題で持ち帰り! 追放勇者の素顔』

 エトセトラエトセトラ。
 出るわ出るわの、見出しだけで皆がワクワクしちゃうようなゴシップ記事の集まりだった。
 全てが『勇者道化師ベルキッド』の記事だが、むろん、本人はここにいる。つまりは全てが『ニセモノ』だ。

「食い逃げしすぎだろ、俺」
「本当ですよ! なんでこんな、面白いことしてるんですか!」
「……ん?」
「こんなに特ダネ有るなら、私を呼んで下さいよ……あいたっ!!」
 プンスカプンo(*`ω´*)o と言わんばかりのクリエの頭を、サックは分厚い紙束で叩いた。

「全部『ニセモノ』に決まってるだろっ!」
「えっ! そうなんですかっ!」
 驚きの表情のクリエであるが、彼女愛用の鑑定ガードメガネのせいで、全く真意が見えない。サックにとっては非常にやりにくい相手だ。

「じゃあこの、結婚詐欺も……」
「女難持ちに勤まるか?」
「ですね笑」
(あ、小馬鹿にしたな。鑑定しなくても解るぞ、オイ)

「え、『教団設立』してないんですか?」
「教祖って柄じゃない」
「ですね笑」
(……堪忍袋の緒がぶち切れそうだ)

「食い逃げ犯でも無い、と?」
「宿も飯も、なんとかなってるよ」
「さすが転売ヤー、稼いでますね笑」
(よし、次は本気でぶん殴ろう)

「じゃあこの『追放勇者ベルキッド、わいせつ物所持で逮捕か!?』も、嘘なんですね」
「………………」
「…………」
「……」
「なんで最後だけ黙るんです?」
 ニヤニヤ(^ー^)、と笑顔の新聞屋。この女、確信犯だ。

「とにかくっ! 俺は忙しいのっ!」
 サックはバンバンとテーブルを叩いた。なんとか話題を変えたかった。
「説得力ゼロですね~、あ、オネーサン私に野菜サンドとグラスティー、アイスで!」
 クリエはサックの意見を無視して注文を取った。さすがのサックも、辱しめられていきなり同席し注文されるとなったことに嫌気が差し、この場を離れようとした。

 が、クリエが差し出した、もう一枚のゲラ(校正中の新聞記事)に、一気に興味を持っていかれた。

『勇者一行、魔王城第3階層を突破!』

「サックさん、速報です。皆さんとうとう魔王城折り返し地点です!」
 嬉しそうな新聞屋。
「……そっか」
 しかし、サックの返答はかなりあっさりとしたものだった。
「ちょっと! 皆さん命懸けでここまで攻略したんですよ! 元同僚として何か一言無いんですか!」
 サックの感想があまりに想定外だったことで、新聞屋は珍しく取り乱した。
 なんとなく『一矢報いたザマアミロ』的な顔を見せたサックだったが、直ぐに真顔に戻った。そして、以前から疑問に思っていたことを口にした。

「……なあ新聞屋。それ本当に『速報』なのか?」

「へ?」
 サックの、またしても想定外の方向からの指摘に、クリエは普段は見せないマヌケ顔を晒してしまったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...