異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を再建する

おっぱな

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【第四章 救世主編】

お母さん! シルフの目線②

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 ______シルフの部屋______

 どうして、あんな子供じみた事をしてしまったのだろう。
 大人の女は好きな男性が他の女を口説いていたからと言って、その場を立ち去る事なんてしまい。
 母様は、父上がメイドを自室に連れ込んでも顔色一つ変えなかった。
 権力や力を持つ男性は色を好む。
 そんな、『私だけを見て』なんて事を言うのはワガママな少女のようだ。
 きっと、マモルさんもこんな私に呆れているはず。
 自分が行った行為を悔やみ、私はベッドに顔を埋めた。

 ______トントン。

 優しく扉が叩かれ、ベッドから顔を上げ。

「マモルさん!?」

 と嬉々とした声で返事をするが、「ごめん。僕だよ」とパスの恐縮した声が返ってきた。

「ご、ごめんなさい。どうぞ」

 シワになった白と青い色のドレスの裾を正し、私は立って、入ってくるパスを受け入れた。

「シルフ、大丈夫?」

「ええ。大丈夫よ。ちょっと、気分が悪くなって。でも、もう、大丈夫よ」

 普段通り、ニコリと笑顔で返したいのに顔が引きつる。
 パスに「あ、シルフ無理しているな」と勘付かれないだろうか心配でしょうがない。

「そう。なら、良かった。みんな、心配してたよ。マモルさんも『ちょっと、調子に乗り過ぎた』って反省してたみたい」

「マモルさんが!?」

「え? あ、う、うん。でも、シルフは大人だから気にしていないよね? 男の人って穴があれば何でもいいから」

「と、当然よ! 浮気の一つや二つくらい受け止める事が出来ない女なんて面倒なだけだからね!」

「流石シルフ! やっぱ、大人の女性って肝が据わっているね!」

「そ、そうね! あははは......」

 パスから注がれる憧れの目線がチクチクと心を刺激する。
 口では達者な事を言っているけど、私は恋愛なんてしたことない。
 身体だけは女らしくなっていったが、中身はまだまだ子供。
 豪華な宝石箱に入っているのは宝石ではなく、ただの硝子細工だ。

「あのさ、相談なんだけど、どうして、花島は僕とSEXしてくれないのかな?」

 真っ直ぐなキラキラとした瞳で私を見つめるパス。
 満月のように輝く艶のある赤茶色の髪、女の私でも魅了される大きな瞳、出る所は出て、凹むべきところは凹んでいる体型のパスとやましい事をしたいと考える男性は多いだろう。

 元男という事を差し引いてもパスは魅力的。
 正直、花島が何故、手を出さないのか不思議でしょうがない。
 花島はヒマがあれば私の胸や足をチラチラ見ているし、『あいつら絶対に許さない』とミーレやレミーを恨んでいたのに目線はミーレの胸元に行っていた。
 ゴーレムからも『シルフ様。花島が私が寝ている時に髪の毛の匂いを嗅いでいるみたいだけど、人間って寝る前に髪の毛の匂いを嗅がないと眠れないみそ?』と花島の性癖を聞いていたりもした。

 建前上は王位継承権の為にパスと花島を無理矢理結婚させたけれど、実際のところ、花島のヤラしい視線から逃れる事も計算に入れていた。
 パスという魅力的な女性が近くにいれば、そういった事を止めるだろうと考えていたが甘かった。
 パスの胸元などはガッツリと恥じる事なく見て、私やミーレやレミーなどには気づかれないように見る事を覚えただけで変態は一生直らない病気なんだなと私を呆れさせた。

「えっと......。きっと、パスの事を大切に思っているからじゃないかしら?」

「そうかな? 花島、僕の身体を舐め回すように見ているし、物を取るフリをして、肘を胸に当てたりするのに?」

 え......。
 何それ、あいつ、そんな事しているの?
 気持ち悪いわ......。

「え? あ、え~。後は、マモルさんが言ったようにそんなに女性経験が豊富じゃないっていうのもあるかもね。どっちにしても、パスは花島から大切にされているわ」

「そう見える?」

「ええ。王位継承戦の時だって、パスをすごく心配していたし、あなたがいなくなった時に『俺が見付ける』ってちょっとだけ男らしいところも見せていた」

「でも、花島ってみんなにそうじゃない? ゴーレムちゃんが暴走した時だって最後まで救おうとしたし、僕は花島と出会って間もないけど、シルフも花島に助けられたでしょ?」

「それは......」

 確かに花島は誰に対しても自分の身を犠牲にしてまで誰かを守ろうとする。
 セバスが亡くなった後、私は生きる気力を無くし、自室に引きこもっていた。
 そんな中、花島は私の代わりに国を守り、国を離れようとする者を引き留めてくれていたのを私は知っている。

 どうして、花島がみんなに対して救いの手を差し伸べるのかは分からない。
 自己犠牲に快感を得る性格なのか、何か私達に隠している事があり、その目的の為に動いている可能性も______いや、花島に限ってそれはないか。
 何かを隠し、作戦を遂行するような器用さはあの男にはないだろう。

 適当に答えてもパスの不安を煽るだけで、良い言葉が見つからずに黙っていると、パスがとんでもない事を言いだした。

「シルフは花島の事好き?」

「......藪から棒にどうしたの?」

「だって、花島は魅了的だし、優しいし、ちょっとだけ変態だけど頼りになるからシルフも花島の事好きなのかなって?」

 パス。
 花島はちょっとだけ変態ではないの。
 物凄く変態なのよ。
 つぶらな瞳の花島を心から愛している少女にそんなことを言えるはずもなく、私は「私にはマモルさんがいるから」とぎこちない笑顔でその場をやり過ごした。

「花島はシルフの事も好きだよ絶対。気持ちの整理が付かないから、花島は僕の誘いに答えないのかもしれない」

 花島が私に恋をしている?
 まあ、恋心を抱くのは罪ではないから花島を糾弾することはしないけれど、その気持ちを伝えられるのは正直、面倒くさい。
 花島とは今の距離感がちょうどいいし、それを崩したくもない。
 私にはマモルさんがいる。
 花島は国を再建する為に必要ではあるけど、恋人にはなれない。
 マモルさんが現れた事で、私が完全に花島に興味がない事を悟ってくれると一番有り難いのだけれど。

「パス。考え過ぎよ。時期が来たら、花島だってあなたに夢中になるわ。こんな可愛い子を放っておくことなんか出来ないわ」

「......そうかな?」

「ええ。きっとそうよ」

 抱きしめるとパスはふかふかの枕のように柔らかく、首元からは良い匂いがし、正直、女の私でも変な気持ちになりそうだった。

「ねえ! シルフ! シルフがマモルさんに出会った時のこと、詳しく教えてよ!」

「え? どうしたの急に?」

「女二人なんだから恋の話でもしようよ!」

「は、恥ずかしいわ」

「少しくらいなら良いでしょ?」

 上目遣いで繰り出される猫撫で声は反則だ。
 そんな可愛い顔を向けられたら、従わざる得ないじゃない!

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけなら......」

 それから、私とパスはベッドの脇に腰掛け、恋の話に花を咲かせた。


 ◇ ◇ ◇
 ■ ■ ■


 ______客間______

 シルフが出て行った後、マモルは自室に戻り、ベッドの上で青白く光る魔石に何やら話しかけていた。

「そうか、評議会を手中に収めたか。ああ、侵入者は残らず消せ。それと祭壇の準備をしておけ。こちらも器となる者の目星が付いた。ああ、ついに”魔王が復活”するぞ」

 微笑を浮かべながら、マモルは幾何学模様の刺繡がなされた分厚い経典にソッと手を触れ、雲の合間から注がれた満月の光がユラユラと客間の中を不気味に漂った。
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