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キャンディ

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 キャンディ─其れは舌で転がすだけで幸せな気分を運んでくれる。様々な味があっていつまでも飽きない。久方振りにお菓子屋さんで見かけた時には思わず手に取り其の儘購入してしまった。家に帰れば袋から取り出し可愛いお皿の上にカラフルなキャンディを並べる。キャンディだけでは無くスティックも色とりどりで自身の目にはきらきらと映る

「ど、れ、に、し、よ、う、か、な~」  

 水色、オレンジ、黄色にピンク。一個一個指刺し選ぶこの瞬間すら楽しい。キャンディの魔法はドキドキとした胸の高鳴りをもたらしてくれた。神様によって選ばれたのはソーダ味。スティックを手に取りゆっくりと口の中に含む

「ふふ、あまぁい。」

 じゅわり、と溶けだして幸せを運び無意識に口端が綻ぶ。広がる爽やかな味、しつこ過ぎない甘さは子供の頃から一番のお気に入り。子供の頃は良く

「虫歯になるから一つだけ」

と両親に止められていた。一つけでは物足りず両親に何度かおねだりしてみたが、逆に怒られてしまった、そんな懐かしい記憶が蘇る。今は自由になって好きなだけ食べる事が出来る。あの頃食べられなかった分も、あの頃見れなかったこの光景も、今日は堪能したい。そう思い意識は再度舌の上。キャンディは転がさず、同じ場所で留める。こうすれば飴が溶けきってしまった後もその場所に味が残り楽しい。一つのキャンディだけだった頃もこうして長く楽しんでいたっけ。だんだん味が濃く感じられる様になり、スティックを持って舌とくっついていた砂糖を動かす

「痛っ!」

 刹那、広がる血の味。真っ直ぐ平らに溶けていった砂糖は端が鋭く尖り口内を傷付けた様だ。思わず口から砂糖の塊を取り出す。見えたのは、水色のベースに血と唾液。血で汚れた其れは綺麗さの欠片も無い。スティックを伝わり自身の手に垂れて来ようとする唾液も気持ち悪い物と映る。触れたく無くて一度お皿に置いてしまえば、他のキャンディの魔法も解けてしまい唯の砂糖の塊と化す

「もう、いいや。」

 じくじくと痛む口の中。これ以上食べる気にもなれず、お皿の上にあった物全てをゴミ箱へ。まだ残る血の味は傷が塞がるまで変わらない。思い出と一緒に堪能するつもりだったのに一つ目すら捨てた自分はもう子供の頃には戻れない。──得られた筈の幸せは砂糖と共に溶けて消えてしまった
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