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エピソード1 平家と源氏の末裔
第8話 なんなら口移しでもいい。マナをわけてくれ
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「ねぇ、万条さん。あれは……、あの化物って、いったい何なんですか?」
コールマイナーとの戦いを見ていたノンが、ふいにアミに訊いた。アミは腕組みをした姿勢を崩すことなく、片方の眉だけをつりあげて言った。
「7年前の基地局喪失のことは知っているか?」
「あ、はい。えぇ。もちろん……。あの事故で約15億人ほどの人が被害に遭ったと聞いています」
「あぁ、そうだ。全世界同時多発で発生した大惨事だ」
そう言いながら、アミはそのとき起きたときの事故映像を思い返した。
整備された特別地区に建ち並ぶ、サーバー施設の一角から突然火柱があがったかと思うと、一気に建物全部が爆発しはじめる。それは『爆発』という生やさしいレベルではなく、大型の隕石でもぶつかってきたような圧倒的な破壊だった。
それが世界中に設置されたありとあらゆるサーバー施設で、同時に起きた。宇宙からの映像を見ると、世界中のいたるところでほぼ同時に爆発したことがわかる。
「一瞬にして基地局が消滅して、ほぼ全部の接続が切断された。いくつも設けられていたあらゆるセーフティーネットが役にたたなかった。おかげで、その時接続していた人々は強制ニューロ・オフされ、人格の一部、感覚の一部、または記憶の一部を喪失した……」
アミはこの大惨事のあと、被害にあった人々がどうなったかを知っている。
重篤な事例では、廃人のようになってじっと動かなくなったり、幻影や幻聴に苦しんでいたり、自分の感情が操れず、葬式で笑い出してしまったり、そして生命維持装置につながれて寝たきりになったりしていた。
「信じられるか?。全人類の5人にひとりだぞ」
アミは自分に言い聞かせるように言って、ノンのほうへ顔をむけた。
「だが、たった数基残ったサーバーに、あの事故で強制的に奪取された人格や記憶や思いが残された。そして行き場をうしなった残留思念の一部が幽霊のようにさまよい、なにかの理由で変異したんだ……」
「我々が電幽霊と呼んでいるあれは、その成れの果てだ……」
源子たちがいるところまでなんとか戻ってきた平平は、無言のまま源子の目の前に右手を突き出した。
その手の先には自分の頭がぶらさがっている。そのぶらさがった平平の頭が仏頂面をして口をひらいた。
「みなもと氏ぃ、すまねぇ。クリティカルヒットを喰らっちまった」
「はい。拝見してました」
「体力をガッツリ削られた。わるいがマナをもうすこしわけてくれ」
「あら、先ほど戦略護符で、私の体力を分け与えたはずですけど……」
「あぁ、わかってるよ……」
平平は自分の頭上の数字を見あげながら言った。
「この5000ポイントだろ。でもこれじゃあ、ちっとばかり足りねぇ」
平平が手に持った自分の頭を源子の顔の正面に突き出した。
「なんなら、口移しでもいい」
そう言って平平は自分の頭を、源子の顔に思いっきり近づけた。突き出した平平の顔はキスしようとばかりに唇をつきだしている。
源子は顔色ひとつ変えることなく、からだをうしろに数歩ひくと、平平の額にむかって矢を射った。源子の矢が平平の額から後頭部に突き抜けるようして刺さる。
平平の頭が叫んだ。
「みなもと氏ぃ、これ以上オレの体力減らしてどうする!!」
「おい、ミーナ、そン馬鹿相手にしとらんで、この次どうするか考えるぜよ」
まひるがふたりの諍いに口を挟んできた。その顔は半分あきれかえっている。
源子は平平の頭から矢を引き抜きながら、さわやかな笑顔でまひるに返事をした。
「こうなったら、へいべい君には少々、半殺しの目にあっていただきます」
「おい、さりげなく、残酷なこと言ってくれるな」
「低俗な戯れ言を口にされた罰です」
「なんだよぉ。ンじゃあ、粛々と罰を受けにいくよ」
平平が天にむけて手を挙げると、その手のなかに日本刀が握られている。先ほどコールマイナーに粉々にされたものと同じ刀だ。
右手いっぽんになった平平は刀を鞘ごとうちふるった。おおきなスイングの遠心力で、鞘だけが遠くへ飛んでいく。片手で刀を構える。平平。
「参る!」
コールマイナーにむかって、平平が刀を構えたまま突っ込んでいった。平平が雄叫びをあげる。
「うぉぉぉぉ……」
気迫に満ちた顔、その目にはある種の殺気のようなものさえ感じさせられる。
が、その平平の頭は、今はまひるの胸元に抱えられていた。したがって、どんなにすごい意気込んでも、おんなの子の腕に抱かれたぬいぐるみみたいなようなものだった。
「おい、霊力バカ、うるさいぜよ!」
まひるが胸元で大声をあげる平平の頭に顔をしかめる。その様子を上空から見ていた姉のみかげがお茶をすすりながらひとこと言った。
「あいかわらず、騒々しい方おすなぁ」
頭のほうは厄介者扱いされていたが、平平のからだは気合いの充分で、勢いのある鋭い太刀で斬り込んでいく。コールマイナーがツルハシをふりあげた。
「この死に損ないがぁ」
コールマイナーのツルハシの先端の色が目まぐるしく変化していく。
虹色に彩られていく平平の刀が、そのツルハシを向かい撃った。刃と刃が噛みあうキンという甲高い音。
雲のうえから戦いを見ていたノンが、お互いが出した色を確認して叫んだ。
「たいらさんは『水色』。つまり75%チョキ。25%パー。そして、あのバケモノのほうは『ピンク』。75%グー、25%チョキ……って……」
ノンの声のトーンがさがっていく。アミがすこし苛ついた顔で言い放った。
「あぁ、クリティカルヒットで、また負けだ」
コールマイナーとの戦いを見ていたノンが、ふいにアミに訊いた。アミは腕組みをした姿勢を崩すことなく、片方の眉だけをつりあげて言った。
「7年前の基地局喪失のことは知っているか?」
「あ、はい。えぇ。もちろん……。あの事故で約15億人ほどの人が被害に遭ったと聞いています」
「あぁ、そうだ。全世界同時多発で発生した大惨事だ」
そう言いながら、アミはそのとき起きたときの事故映像を思い返した。
整備された特別地区に建ち並ぶ、サーバー施設の一角から突然火柱があがったかと思うと、一気に建物全部が爆発しはじめる。それは『爆発』という生やさしいレベルではなく、大型の隕石でもぶつかってきたような圧倒的な破壊だった。
それが世界中に設置されたありとあらゆるサーバー施設で、同時に起きた。宇宙からの映像を見ると、世界中のいたるところでほぼ同時に爆発したことがわかる。
「一瞬にして基地局が消滅して、ほぼ全部の接続が切断された。いくつも設けられていたあらゆるセーフティーネットが役にたたなかった。おかげで、その時接続していた人々は強制ニューロ・オフされ、人格の一部、感覚の一部、または記憶の一部を喪失した……」
アミはこの大惨事のあと、被害にあった人々がどうなったかを知っている。
重篤な事例では、廃人のようになってじっと動かなくなったり、幻影や幻聴に苦しんでいたり、自分の感情が操れず、葬式で笑い出してしまったり、そして生命維持装置につながれて寝たきりになったりしていた。
「信じられるか?。全人類の5人にひとりだぞ」
アミは自分に言い聞かせるように言って、ノンのほうへ顔をむけた。
「だが、たった数基残ったサーバーに、あの事故で強制的に奪取された人格や記憶や思いが残された。そして行き場をうしなった残留思念の一部が幽霊のようにさまよい、なにかの理由で変異したんだ……」
「我々が電幽霊と呼んでいるあれは、その成れの果てだ……」
源子たちがいるところまでなんとか戻ってきた平平は、無言のまま源子の目の前に右手を突き出した。
その手の先には自分の頭がぶらさがっている。そのぶらさがった平平の頭が仏頂面をして口をひらいた。
「みなもと氏ぃ、すまねぇ。クリティカルヒットを喰らっちまった」
「はい。拝見してました」
「体力をガッツリ削られた。わるいがマナをもうすこしわけてくれ」
「あら、先ほど戦略護符で、私の体力を分け与えたはずですけど……」
「あぁ、わかってるよ……」
平平は自分の頭上の数字を見あげながら言った。
「この5000ポイントだろ。でもこれじゃあ、ちっとばかり足りねぇ」
平平が手に持った自分の頭を源子の顔の正面に突き出した。
「なんなら、口移しでもいい」
そう言って平平は自分の頭を、源子の顔に思いっきり近づけた。突き出した平平の顔はキスしようとばかりに唇をつきだしている。
源子は顔色ひとつ変えることなく、からだをうしろに数歩ひくと、平平の額にむかって矢を射った。源子の矢が平平の額から後頭部に突き抜けるようして刺さる。
平平の頭が叫んだ。
「みなもと氏ぃ、これ以上オレの体力減らしてどうする!!」
「おい、ミーナ、そン馬鹿相手にしとらんで、この次どうするか考えるぜよ」
まひるがふたりの諍いに口を挟んできた。その顔は半分あきれかえっている。
源子は平平の頭から矢を引き抜きながら、さわやかな笑顔でまひるに返事をした。
「こうなったら、へいべい君には少々、半殺しの目にあっていただきます」
「おい、さりげなく、残酷なこと言ってくれるな」
「低俗な戯れ言を口にされた罰です」
「なんだよぉ。ンじゃあ、粛々と罰を受けにいくよ」
平平が天にむけて手を挙げると、その手のなかに日本刀が握られている。先ほどコールマイナーに粉々にされたものと同じ刀だ。
右手いっぽんになった平平は刀を鞘ごとうちふるった。おおきなスイングの遠心力で、鞘だけが遠くへ飛んでいく。片手で刀を構える。平平。
「参る!」
コールマイナーにむかって、平平が刀を構えたまま突っ込んでいった。平平が雄叫びをあげる。
「うぉぉぉぉ……」
気迫に満ちた顔、その目にはある種の殺気のようなものさえ感じさせられる。
が、その平平の頭は、今はまひるの胸元に抱えられていた。したがって、どんなにすごい意気込んでも、おんなの子の腕に抱かれたぬいぐるみみたいなようなものだった。
「おい、霊力バカ、うるさいぜよ!」
まひるが胸元で大声をあげる平平の頭に顔をしかめる。その様子を上空から見ていた姉のみかげがお茶をすすりながらひとこと言った。
「あいかわらず、騒々しい方おすなぁ」
頭のほうは厄介者扱いされていたが、平平のからだは気合いの充分で、勢いのある鋭い太刀で斬り込んでいく。コールマイナーがツルハシをふりあげた。
「この死に損ないがぁ」
コールマイナーのツルハシの先端の色が目まぐるしく変化していく。
虹色に彩られていく平平の刀が、そのツルハシを向かい撃った。刃と刃が噛みあうキンという甲高い音。
雲のうえから戦いを見ていたノンが、お互いが出した色を確認して叫んだ。
「たいらさんは『水色』。つまり75%チョキ。25%パー。そして、あのバケモノのほうは『ピンク』。75%グー、25%チョキ……って……」
ノンの声のトーンがさがっていく。アミがすこし苛ついた顔で言い放った。
「あぁ、クリティカルヒットで、また負けだ」
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