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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第219話 次に狙われる文士
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スピロの目論見は思いがけない悪魔の仕業によって、うまくいかなかったが、それでもひとつだけ、わかったことがあった。
それは次に狙われるのが誰かということだった。
「みなさま、一度、ベーカーストリートの事務所にもどりましょう。今度は次に狙われる人物をなんとしてでも守らねばなりません」
「おい、次に狙われるって、あいつら文士どもはもう協力しねぇって言ってるぞ」
「はい。それでも悪魔はあのなかのひとりを狙ってきます」
「スピロさん、それはだれなんですの?」
エヴァがそう問うてきたので、スピロは答えることにした。
「H・G・ウエルズ様です」
あまりにあっけなく明かしたせいか、セイたちはぎょっとした視線をむけた。
「ウエルズさんなのかい。それはなぜ?」
「セイ様、簡単な話です。ブラム・ストーカー様とおなじ理由で、あの方の著作にモンスターが出てくるものがおおいからです。おそらく悪魔はその思念を利用して、攻撃をしかけてくると思います」
「ーーってことは『透明人間』か! やっかい過ぎるぞ!」
マリアが声を荒げたが、エヴァは別の可能性をしめした。
「マリアさん、それより『ドクターモローの島』という作品は、モンスターだらけですわ」
「それなら『タイム・マシン』にもモーロックっていう80万年後の未来人のほうが危険だよ」
ゾーイも言及した。
「モーロックは未来人の成れの果てで、獰猛な食人族だからね」
「おいおい、そいつはやっかいの度がすぎるな」
「マリア様、それ以外にもウエルズ様は、細菌兵器によるテロや、反重力装置、火星人なども創案しています」
「ーーったく、とんでもねぇことを考えてくれたな。ウエルズ。ろくなもんじゃねぇぞ」
「まぁ、数おおくの女性たちと浮き名を流した艶福家でしたから、ろくでもない人物であったのはたしかですが、『人権』については精力的に活動していました。晩年はルーズベルト大統領に書簡を送り、それがのちの『日本国憲法』の原案になったと言われていますからね。セイ様、彼はニッポンと浅からぬ関係もあるのですよ……」
「ただ、理想論とも言える『戦力の不所持』が色濃く反映されてしまったせいで、『憲法九条』なるおおきな問題を、ニッポンは抱えることになったようですが」
「やっぱ、あいつ、ろくなモンじゃねぇな」
「ウエルズさんの人間性は置いといて、すぐにでも悪魔から守らないといけないんじゃないかい?」
ゾーイが提案すると、セイがそれに賛同した。
「そうだよ。今回みたいなモンスターにまた邪魔されたら、ぼくらはいつまでたっても切り裂きジャックの正体を暴けない」
「そ、そうですね。一度戻ってから、対策を練りましょう」
そのとき、とおくから自分たちを呼ぶ声に気づいた。スピロが顔をむけると、通りのむこうからアーサー・コナン・ドイルとモリ・リンタロウが走ってきていた。
一瞬、なぜ? という疑問がスピロの脳裏にともった。
それは次に狙われるのが誰かということだった。
「みなさま、一度、ベーカーストリートの事務所にもどりましょう。今度は次に狙われる人物をなんとしてでも守らねばなりません」
「おい、次に狙われるって、あいつら文士どもはもう協力しねぇって言ってるぞ」
「はい。それでも悪魔はあのなかのひとりを狙ってきます」
「スピロさん、それはだれなんですの?」
エヴァがそう問うてきたので、スピロは答えることにした。
「H・G・ウエルズ様です」
あまりにあっけなく明かしたせいか、セイたちはぎょっとした視線をむけた。
「ウエルズさんなのかい。それはなぜ?」
「セイ様、簡単な話です。ブラム・ストーカー様とおなじ理由で、あの方の著作にモンスターが出てくるものがおおいからです。おそらく悪魔はその思念を利用して、攻撃をしかけてくると思います」
「ーーってことは『透明人間』か! やっかい過ぎるぞ!」
マリアが声を荒げたが、エヴァは別の可能性をしめした。
「マリアさん、それより『ドクターモローの島』という作品は、モンスターだらけですわ」
「それなら『タイム・マシン』にもモーロックっていう80万年後の未来人のほうが危険だよ」
ゾーイも言及した。
「モーロックは未来人の成れの果てで、獰猛な食人族だからね」
「おいおい、そいつはやっかいの度がすぎるな」
「マリア様、それ以外にもウエルズ様は、細菌兵器によるテロや、反重力装置、火星人なども創案しています」
「ーーったく、とんでもねぇことを考えてくれたな。ウエルズ。ろくなもんじゃねぇぞ」
「まぁ、数おおくの女性たちと浮き名を流した艶福家でしたから、ろくでもない人物であったのはたしかですが、『人権』については精力的に活動していました。晩年はルーズベルト大統領に書簡を送り、それがのちの『日本国憲法』の原案になったと言われていますからね。セイ様、彼はニッポンと浅からぬ関係もあるのですよ……」
「ただ、理想論とも言える『戦力の不所持』が色濃く反映されてしまったせいで、『憲法九条』なるおおきな問題を、ニッポンは抱えることになったようですが」
「やっぱ、あいつ、ろくなモンじゃねぇな」
「ウエルズさんの人間性は置いといて、すぐにでも悪魔から守らないといけないんじゃないかい?」
ゾーイが提案すると、セイがそれに賛同した。
「そうだよ。今回みたいなモンスターにまた邪魔されたら、ぼくらはいつまでたっても切り裂きジャックの正体を暴けない」
「そ、そうですね。一度戻ってから、対策を練りましょう」
そのとき、とおくから自分たちを呼ぶ声に気づいた。スピロが顔をむけると、通りのむこうからアーサー・コナン・ドイルとモリ・リンタロウが走ってきていた。
一瞬、なぜ? という疑問がスピロの脳裏にともった。
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