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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜

第256話 アロケル、機嫌がわるくなる

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「何機ですって? そうですねぇ。100機はくだらないと思いますよ」

「100機? そんなにですか?」
「ええ。おどろきましたか?」
「で、ですが、見渡した感じでは、そんなにいるようには見えません」
 スピロはテムズ川方面に展開しているトライポッドを見渡しながら言った。

「だから、人間っていうヤツは浅はかなのですよ。わたくしめが一方からだけ出現させたとでも? 内陸方面からこちらへむかっている機体もいるのですよ」
「用意周到ですわね」
「あたりまえです。相手はセイ・ユメミなのですよ。力を控えることなど、できようはずもないでしょう」

 かなたからまた爆発音が轟いてきた。スピロはそちらに目をむけることもなく言った。
「マリア様の力をあなどっているような者に言われましてもね」 

「こ、今度はロンドン橋のトライポッドがぁぁ」

 
 それからずっとアロケルは機嫌がわるかった。
 倒すコツでもつかんだのか、そのあとは加速的に倒すスピードがあがっていた。一度に2機が火をふいて爆発するのを見せられてから、アロケルはこちらの問いかけに応えようともしなかった。

 しかたなくスピロはロンドンの夜景を楽しんでいた。ウォータールー・ブリッジ近くを通り抜けて、ビッグ・ベン方面にむかいはじめたところで、ふいにアロケルが声をかけてきた。

「スピロさん、ついに内陸方面のトライポッドが、こちらに追いつきましたわ」
「数を集めたところで……」
「ざーんねん。こちらの部隊はテムズ川方面の機体とちがうのよ」
「ちがう?」
「ええ。レーザービームでひとを殺戮するんじゃなくてね。たくさんの触手でひとに直接襲いかかれるの。この機体とおなじようにね」
「それはいま、どこに?」

「先頭はキングス・クロス駅あたりよ」
 スピロはキングス・クロス駅と聞いたとたん、『ハリー・ポッター』を思いだした。あの駅の9の4分の3ホームから、ハリーたちは魔法の世界に移動する。
 スピロはおもわず、クスリと笑った。

 今この状況は、あの魔法世界に負けず劣らず刺激的ではないか——

 スピロは自分が魔法世界並のワンダーワールドにいる自分を楽しむことにした。

 そのとき、アロケルが悲鳴のような声をあげた。

「ど、ど、ど、どーーーいうことなのよぉ。キングス・クロス駅のトライポッドが3機いっぺんに破壊されたわぁぁぁ」

 スピロはにっこりと笑った。
「アロケル様、そっちはたぶん……」


「セイ・ユメミですわ」
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