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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜

第47話 ハンニバルさん。退却はまだよ

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「ビジェイ!」

 ビジェイは顔をしかめながらも、駆け寄ろうとしたわたしを手で制しながら叫んだ。

「エヴァちゃんは安全なところまで退避して!」
「ビジェイの言う通りだ、エヴァ。残念だがその機関銃の火力では、あのモンスターは倒せない」

「お父様はあいかわらず娘のこと、信頼していないのね」

「信頼はしているよ。だが今回は相手がわるい」

 父のちかくでドスンという重々しい音がした。みるとわずか1メートルも離れていない場所に投石がめり込んでいた。

「CEO、ヤバいですぜ。CEOこそ退避してください」
 ローガンが父の元へ歩みよろうとした。

「危ない!」

 ビジェイは叫ぶやいなや、ローガンのすぐ手前に氷の壁をせり上げた。が、その壁は10センチの厚みもないもので、簡単に投石に打ち砕かれた。
 ローガンのからだが数メートルうしろにはじき飛ぶ。

「ローガン!」

 飛び散った氷片が倒れたローガンのうえから降り注ぐ。
 わたしはローガンの元へ駆け寄ろうとしたけど、父がわたしの肩をつかんで押しとどめた。

「お父様、ローガンが……」
「心配ない。ちょっと怪我をおっただけだ。ビジェイの氷の壁が投石の勢いを殺した」
「ガードナーさん、すみません。完全に防ぎきれませんでした。このあたりに水がすくなくて、カンナエのときのようには……」

 それを聞いて、わたしはザマの戦場のほうへ目をやった。

 ハンニバル軍がまた押されはじめていた。
 当然と言えば当然だ——
 ビジェイの氷の足止めも、ローガンの炎の攻撃も勢いをうしなっているのだから。

 マルケルスは—— 悪魔フラウロスはアルキメデスと一緒に大笑いしていた。老人ふたりが皴だらけの顔を、満足そうに歪めて笑っている姿は、わたしには醜悪の極みにみえた。

「むかつく! あのモンスター、倒してくる」

「な、なにを言っている、エヴァ。さっきも言ったはずだ。機関銃ではあのモンスターに致命傷を与えられない」
「何発もぶっ込めば、なんとかなるでしょ?」
「ま、まぁ、たしかにそうだが…… 時間がかかりすぎる。危険だ」


「まぁね。わたしも一体に時間かけようとは思わないわ。あんなにいっぱいいるしね」

 ハンニバルの幕舎に投石が直撃して、テントごと吹き飛ばした。
 さすがのハンニバルも敗北を覚悟したようで、自分の乗った馬をゆっくりと後退させはじめた。

「ハンニバルさん。退却はまだよ」
「エヴァ、もう無理だ。やはり歴史通りにしかならんのだ」

 エヴァは地面にむけて手をかざした。
 地面にふたたびぽっかりと穴が開いて、そこから見える黒い霧のなかから武器がせりあがってきた。

「バズーカー砲!」
 ビジェイが叫んだ。
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