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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜

第41話 ぼくの力(ギフト)は……

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「『風』にゃあ負ける部分もあるが、空気を塊にしてぶつけりゃ、ちょっとした見えない大砲みたいなもんでね」

「リアムさん、砦を……砦の上のひとたちを助けてください」
 セイはレ・トゥーレル要塞のほうを指さして叫んだ。リアムは目をすがめながら要塞のほうをみた。
「いいけど……セイ、きみはこちらの兵士をなんとかできそうかね」

「はい。両方いっぺんに救うのは難しいですが、こちらの敵だけなら……」
「ほんとうかい? けっこういるし、どいつもつよいぜ。セイ、きみの『力』はなんだ?」

 セイは空にむかって手をつきあげながら言った。

「ぼくがはじめて前世にダイブしたときに願ったのは……」
 セイの頭上の空間にぽっかりと穴があいて、そこから数百本の剣がゆっくりと現出しようとしていた。

「ほう……これはこれは」
 リアムが空に浮かんだ剣を見あげながら感嘆の声をつぶやいた。


「そう。ぼくが願ったのは『武器』です」

 セイは妹の冴の前世に一緒に飛び込んだときのことを思い出していた。
 沈みかかったタイタニック号の甲板の上で、なにか得体のしれない脅威を感じて、なにか武器が欲しい、と願ったのだ。

「武器ねぇ。にしてもエゲツない量じゃないのさぁ」
「そうですか? ぼくにはリアムさんの見えない武器のほうが、そうとうエゲツないと思いますよ」
「言ってくれるね。でもそんだけの能力者なら、なんとかできそうだな」
 リアムはくるりと背をむけると、「んじゃあ、あとは頼むね」と言うなり、ポーンと一発で砦の上まで飛び上がった。
 人間離れした跳躍力をまのあたりにして、ラ・イールとル・バタールが口々に叫んだ。
 

「あ、あやつはなにものだ?」
「セイ、あの御仁は味方なのか?」

 セイは自分のうしろであたふたしている様子には目もくれず、宙に浮かばせた剣に精神を集中させた。リアムが数十人を排除したとはいえ、まだイングランド兵のゾンビは100人近くいて、いたるところでフランス兵が追い詰められていた。
 兵たちはお互いに背中を預けながら剣を構えて、ゆっくり近づいてくる黒い兵士を牽制していた。だが、圧倒的な力と一種の魔力をまとった死人の前には、むなしい努力であるのは間違いなかった。

 黒い兵士たちが取り囲んだフランス兵たちに襲いかかった。
 セイは挙げていた手を振り降ろした。
 空に待機していた剣が剣先を下にして、急降下していき黒い兵士たちを串刺しにした。だが、鎧を身につけた騎士には通用しない。

 セイの仕掛けた剣がはじき返される、ガコンという金属音がいたるところで響きわたる。
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