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1.厳しいイケメン上司
毎度のことだけど、今日も社内に主任の怒号が響いた。
「だれが今年のデータまとめろなんて言った! これじゃ比較できないだろっ」
「すみませんっ!」
「俺が欲しいのは去年のデータだっ、わかったらさっさとやり直せっ!」
「はいっ、すぐ作り直します!」
小野田主任の厳しい指摘と視線が全身に突き刺さって、まともに顔が見られない。
勢いよく頭を下げたわたしは、急いで自分のデスクに戻りパソコンに向かった。
「また怒られてる。吉住さんかわいそー」
「いくらイケメンでも、あんな言い方されたら幻滅よねぇ」
周囲の女性社員がひそひそと話しているのが聞こえてくる。
女性とはそういう生き物だから、わたしはいちいち気にしていない。
しかし――
「おいそこっ、口じゃなく頭と手を動かせっ」
「は、はい!!」
小野田主任にまでしっかり聞こえていたようで、鋭い視線と容赦ない一喝で、彼女たちをあっという間に黙らせてしまった。
その様子を見ていた周囲の人たちまで恐れをなしたのか、動きが機敏になる。
さすがだ。
仕事の鬼の威力ここにあり! である。
にもかかわらず、わたしはそんな彼をこっそり盗み見していた。
お怒り具合を窺うためじゃない。
観察のためだ。
毎度毎度、怒った顔がもう――
(素敵すぎる……!)
つり上がった目も眉間のシワも、整った顔の上では造形美でしかない。
武者震いしそうなくらいぞくぞくしてしまう。
(主任の怒った顔にきゅんきゅんしてるなんて、絶対言えない……!)
本当はもっとじっくり見たいのだが、怒られている最中にニヤニヤしたらさすがにまずい。
さっきも危うくニヤけそうになり、慌てて頭を下げたくらいだ。
この会社に入るまでわたしは、完璧なイケメンは漫画やゲームにしか存在しないと思っていた。
現実世界で完璧なイケメンなんて、見たことなかったから。
イケメンのイケてない部分は見たくないというのが、乙女心の真髄。
けれど、現実世界のイケメンたちは、いとも簡単にイケてない部分を見せてしまう。
実に残念だ。女子にときめきをもたらしてこそ、イケメンの意義があるのに。
まあ、かなりの偏見があるのは見逃してほしい。
結果、この願望を満たしてくれるのは二次元のイケメンという結論にいたり、わたしは漫画やゲームにどっぷりはまっていった。
しかし、25年目にしてついにみつけたのだ!
小野田主任というリアルイケメンを。
顔がよくて仕事もできて所作もいうことなしの、人生初のパーフェクトガイ。(わたし基準)
どうしても気になるところをひとつあげろと言うなら……癒やしゼロなところだろうか。
うちの女性社員の言葉をかりてもうちょっと詳しく言うなら、優しくないし口が悪い。
目の保養にはなるけれど、心の保養にはならない。
むしろ蝕まれることすらある。
もうちょっとやんわりしていたら恋心も芽生えただろうけど、鋭利すぎて傷を負いそうだ、ということらしい。
たしかに全部当たってる。
けど、そんなことが霞んでしまうくらい主任は素敵だと思う。
(毎日あのお顔を拝めるだけ有り難いってものよ)
癒やしは別のところで求めればいいだけ。
わたしの場合、友人のスミレが配信する漫画動画、いわゆるボイスコミックがそれにあたる。
漫画のイケメンたちが、これでもかってくらい癒やしてくれるからまったく問題なしだ。
(そういえば今日って動画配信日じゃない)
スミレが描くキャラはどれも美麗で、わたしの好みのどストライク。超超超ど真ん中。もう最高!
ストーリーは王道の恋愛もので、砂糖や蜂蜜よりも甘くゴロンゴロンしちゃうほど悶えられる。
おかげで毎回脳みそと体中の血液が大暴れして、見終わった後は精根尽き果ててしまうくらいだ。
ボイス入りだからキャラの魅力は最大限に引き立てられ、再生回数はかなりすごいことになっている。
つまり、わたしと同じように癒やしを求めている女性がごまんといるってことだ。
(スミレ、いつも素敵な動画をありがとう!)
特に、男性キャラの声が最高によくてお気に入り。
毎回同じ人が演じてるんだけど、声だけで妊娠してしまいそうなくらい素敵なのだ。
(早く夜にならないかな♪)
帰ってからのお楽しみがあるだけで、テンションが上がる。
主任に怒られた仕事もすいすい捗るってもんだ。
単純だなーわたし。
「ねえ、吉住さん怒られたのに笑ってる」
「あの主任に怒られてへらへら笑ってられるなんて……マゾね」
どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。
「だれが今年のデータまとめろなんて言った! これじゃ比較できないだろっ」
「すみませんっ!」
「俺が欲しいのは去年のデータだっ、わかったらさっさとやり直せっ!」
「はいっ、すぐ作り直します!」
小野田主任の厳しい指摘と視線が全身に突き刺さって、まともに顔が見られない。
勢いよく頭を下げたわたしは、急いで自分のデスクに戻りパソコンに向かった。
「また怒られてる。吉住さんかわいそー」
「いくらイケメンでも、あんな言い方されたら幻滅よねぇ」
周囲の女性社員がひそひそと話しているのが聞こえてくる。
女性とはそういう生き物だから、わたしはいちいち気にしていない。
しかし――
「おいそこっ、口じゃなく頭と手を動かせっ」
「は、はい!!」
小野田主任にまでしっかり聞こえていたようで、鋭い視線と容赦ない一喝で、彼女たちをあっという間に黙らせてしまった。
その様子を見ていた周囲の人たちまで恐れをなしたのか、動きが機敏になる。
さすがだ。
仕事の鬼の威力ここにあり! である。
にもかかわらず、わたしはそんな彼をこっそり盗み見していた。
お怒り具合を窺うためじゃない。
観察のためだ。
毎度毎度、怒った顔がもう――
(素敵すぎる……!)
つり上がった目も眉間のシワも、整った顔の上では造形美でしかない。
武者震いしそうなくらいぞくぞくしてしまう。
(主任の怒った顔にきゅんきゅんしてるなんて、絶対言えない……!)
本当はもっとじっくり見たいのだが、怒られている最中にニヤニヤしたらさすがにまずい。
さっきも危うくニヤけそうになり、慌てて頭を下げたくらいだ。
この会社に入るまでわたしは、完璧なイケメンは漫画やゲームにしか存在しないと思っていた。
現実世界で完璧なイケメンなんて、見たことなかったから。
イケメンのイケてない部分は見たくないというのが、乙女心の真髄。
けれど、現実世界のイケメンたちは、いとも簡単にイケてない部分を見せてしまう。
実に残念だ。女子にときめきをもたらしてこそ、イケメンの意義があるのに。
まあ、かなりの偏見があるのは見逃してほしい。
結果、この願望を満たしてくれるのは二次元のイケメンという結論にいたり、わたしは漫画やゲームにどっぷりはまっていった。
しかし、25年目にしてついにみつけたのだ!
小野田主任というリアルイケメンを。
顔がよくて仕事もできて所作もいうことなしの、人生初のパーフェクトガイ。(わたし基準)
どうしても気になるところをひとつあげろと言うなら……癒やしゼロなところだろうか。
うちの女性社員の言葉をかりてもうちょっと詳しく言うなら、優しくないし口が悪い。
目の保養にはなるけれど、心の保養にはならない。
むしろ蝕まれることすらある。
もうちょっとやんわりしていたら恋心も芽生えただろうけど、鋭利すぎて傷を負いそうだ、ということらしい。
たしかに全部当たってる。
けど、そんなことが霞んでしまうくらい主任は素敵だと思う。
(毎日あのお顔を拝めるだけ有り難いってものよ)
癒やしは別のところで求めればいいだけ。
わたしの場合、友人のスミレが配信する漫画動画、いわゆるボイスコミックがそれにあたる。
漫画のイケメンたちが、これでもかってくらい癒やしてくれるからまったく問題なしだ。
(そういえば今日って動画配信日じゃない)
スミレが描くキャラはどれも美麗で、わたしの好みのどストライク。超超超ど真ん中。もう最高!
ストーリーは王道の恋愛もので、砂糖や蜂蜜よりも甘くゴロンゴロンしちゃうほど悶えられる。
おかげで毎回脳みそと体中の血液が大暴れして、見終わった後は精根尽き果ててしまうくらいだ。
ボイス入りだからキャラの魅力は最大限に引き立てられ、再生回数はかなりすごいことになっている。
つまり、わたしと同じように癒やしを求めている女性がごまんといるってことだ。
(スミレ、いつも素敵な動画をありがとう!)
特に、男性キャラの声が最高によくてお気に入り。
毎回同じ人が演じてるんだけど、声だけで妊娠してしまいそうなくらい素敵なのだ。
(早く夜にならないかな♪)
帰ってからのお楽しみがあるだけで、テンションが上がる。
主任に怒られた仕事もすいすい捗るってもんだ。
単純だなーわたし。
「ねえ、吉住さん怒られたのに笑ってる」
「あの主任に怒られてへらへら笑ってられるなんて……マゾね」
どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。
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