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八章
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「眠留、ベタな質問だけど、ここはどこで、今は何の時間だい」
「へ? どこってそりゃあ」
素っ頓狂な声とともに周囲を見渡すや、腰が抜けそうになった。真山を介して神秘的な森の風を感じた僕は、ここが学校で今は昼休みということを、忘れていたのである。
と同時にこの会合の主旨を思い出した僕は、慌てて時計に目を走らせた。今は午後一時十二分。お昼休み終了まで十八分あるが、少なくとも五分前の予鈴に合わせてここを発たねばならぬため、残された時間は十二分強といったところだろう。「鹿の話は二分で終わらせるよ」と宣言し、真山は話を締めくくった。
「おそらく牡鹿は、自分が観ている世界を、俺の脳裏に映したのだろう。俺は、意識と生命力を視覚化した世界にいた。時間を忘れてそれに見入っていると、山裾に大勢の人の光を感じた。離れていても、それが俺の家族と親族であること、そして大人達が期待と興奮に彩られているのを、俺は見て取った。子供には話さなかっただけで、大人達は牡鹿の存在を、知っていたんだね」
牡鹿は山裾の、木立の端ギリギリで真山を下ろし、山へ帰って行った。それ以降一度も出会ったことはないが、気配を知覚する技術が向上するにつれ、牡鹿が残した気配の濃淡を真山は感じ取れるようになっていったと言う。「自主練もしたけど、自主練より女の子を区別する時の方が伸び率は大きかったって言わなきゃ、俺は嘘つきになっちゃうね」 最後にちょっぴりおどけて、真山の話は終わった。深呼吸一回分の感慨を経て、僕は覚悟を胸に本命の問いを投げかける。
「秘密にされているけど、この世界には二通りのAIがいる。己の限界を超えようと自ら決意したAIが、この世界にはいるんだ。意識と生命力を視覚化できる真山は、それを知っていたように思うんだけど、どうかな?」
話の道筋を理解したとき人が放つ光を、真山は放った。ただ真山は光に加えて、風も送ってきた。その風の中で真山は言った。
「去年ようやく、そのAIを感じられるようになったよ。実家のHAIに口止めされているけど、周囲のすべてのAIが際立った輝きを放っている眠留には、話しても構わないだろうね。というか時間が無いから言っちゃうと、その中の一つが、最近急に艶やかな光を放つようになった。新忍道サークルをちょくちょく見学している俺には、バレバレだからね眠留」
「はっ、はい。申し訳ございませんです」
先程の覚悟はどこへやら、僕は条件反射で正座してしまった。そんな僕にクスクス笑い、真山は高速道路をゆくが如く話をビュンビュン進めた。
「新忍道サークルのAIが艶やかさを増していくにつれ、眠留は危惧と、そして決意の波長を出すようになった。だから今朝のメールに、俺は心配してさ。でも教室で会ったらそれらは一掃されていて、モテ男の波長を眠留は纏っていたよ。譬えるなら白銀さんと目を合わせるなり、実技棟で着た新品のモテ服の上にいつものモテ服を重ね着したような、そんな感じかな」
「ひえ~~、どうかそれくらいで勘弁してください~~!」
再度の条件反射で土下座した僕は、冷や汗を垂らしつつ思った。森と人の共生という分野において真山は十年に一人の逸材とされているが、恋愛問題についてはそれどころではない、百年に一人の天才なのではなかろうかと。
そんな僕を置き去りにし、時代を超えた天才は高速道路をフルスロットルで駆け抜けて行った。
「その反応から、眠留は俺の見立てと大差ない状況にいるんだろうね。だから率直に言う。眠留は、そのままでいいからね」
「こ、このままでいいの?」
恐る恐る顔を上げお伺いを立てた僕に、真山は頬を緩めた。それは大地にしっかり根を張る大木の、枝の先端に芽吹いた若葉のような、逞しさと若々しさを兼ね備えた微笑みだった。
「そのままでいいよ。眠留は自分のモテ振りに慢心するタイプじゃないし、悪用するタイプでもないし、氷のように拒絶するタイプでもない。女の子を大切に思うから悩み、気持ちに応えられない苦悩を覚えても、それを女の子に一切見せようとしない。眠留が選ぶのは、正しく強く生きようとする事だけだ。そういう自分になるしか気持ちに応える方法はないと知っているから、眠留は全力でそれに身を投じるんだね。そんな漢へ贈る言葉はこれしかないよ。眠留はそのままでいい、俺は協力を惜しまないからってさ」
嬉しかった。
感動もしていた。
だがこの刹那、僕の心の中心にあるのは、美鈴の兄としての想いだった。
真山は、学年一のモテ男だ。真山へ想いを告げに来た女子生徒は夏休み終了の時点で、四十人を数えたと言う。その場面を目撃したことが僕は一度もないが、その女の子たちに真山がその後どう接し、そして自分をどう律して来たかなら、僕はこの目でずっと見てきた。
『眠留が選ぶのは、正しく強く生きようとする事だけだ。そういう自分になるしか気持ちに応える方法は無いと知っているから、眠留は全力でそれに身を投じるんだね』
これは、真山にこそ当てはまる言葉だった。真山はそれに全力を投じてきたからこそ、逞しくも爽やかな笑顔で、相手をほっこり包むことができる。内も外も最高峰のイケメンが隣にいても、お気に入りの場所で日向ぼっこをしている気分になるのは、真山が自分を律して来た証拠。そう真山こそが、正しく強く生きる努力をし続けた漢の、見本なのだ。
その真山が夏の夕食会で、美鈴に一目惚れした。いや正確には、美鈴の心が形作る気配に、真山は一瞬で虜になった。確かに美鈴は、超の付く容姿に恵まれた美少女だ。だがそれ以上に、超が幾つ付くのか定かでないほど美しい心を、美鈴は持っている。それを、真山は直に観た。女の子を内面で区別する日常を生きてきたからこそ、美鈴の心の美しさを、真山は直接感じることができたのである。
それが、嬉しくない訳がない。感動を呼ばぬ訳がない。僕はこの瞬間まで、兄が妹にしてやれるのは心配する事だけだと考えていた。だが、それは間違いだった。正しく強く生きる努力をし続けることが、廻り廻って妹の幸せにつながる。同じ道をゆく友として真山と尊敬し合うことが、美鈴の幸せを増してくれる。それを僕は今この瞬間、悟ったのだ。
「真山、ありがとう。この件は真山に相談して正解だった。真山に相談する選択をした自分を、僕は誇りに思うよ。美鈴の分も加えてもう一度言わせてくれ。ありがとう、真山・・・ってあれ、おい真山、大丈夫か?」
感謝の言葉の前半部分を、真山は喜びの見本たる笑顔で聴いていた。前半最後では「俺こそ誇りに思うよ」と、今にも口が動きそうになるのを懸命に堪えているのが見て取れる程だった。でも後半に入った途端、真山はヘロヘロになった。美鈴の名が出るなり顔を真っ赤にし、ありがとうの箇所で体を垂直に保てなくなり、真山は溶けかけた雪ダルマの如く、ヘロヘロになってしまったのである。
「なあ真山、そりゃ気持ちは解るし兄として嬉しくもあるけど、予鈴まで時間がないから、少なくとも歩けるようになっておこうよ」
そうだねごめんと唇だけ動かし、かつ大層苦労してお弁当とポットを片付け、真山はよろよろ立ち上がった。真に強靭な足腰を持つ者だけが成しうる、地を這う炎のような真山のドリブルに惚れ込んでいる僕は、真山の前を歩きつついらぬことを口の乗せてしまう。
「真山、メールのやり取りだけじゃダメだ。今度僕が場を設けるから、美鈴と面と向かって話して、美鈴に慣れていこうよ」
ドサッ
後ろから、大きくて柔らかい物がコンクリートに落ちた音が聞こえてきた。目を剥き振り返るも、その音を作り出した張本人のありさまに、僕は大きなため息を付いた。
「あのねえ真山、これくらいで尻餅つかないで。ほら荷物貸して。あと、手」
真山の荷物を受け取り左肩にかけ、僕は右手を差し出す。
真山も右手を差し出し、僕らは手をしっかり握り合った。
初めて握った真山の手、想像していたより大きなその手に、今度はなぜか僕が、顔を赤らめてしまったのだった。
それから暫く、湖校一年生校舎に妙な噂が流れた。それはクリスマス仮装会で、僕と真山がフォークダンスを踊るという噂だった。
それを耳にしても、僕は落ち込まなかった。それどころか、アハハと笑い飛ばすことができた。しょうもない噂は二度目だったので耐性が付いていたし、その噂が生まれた理由も知っていたし、何より真山とならフォークダンスを踊ってもいいと僕自身が考えていたからである。とはいえ最後の一つをペラペラ話すワケにもいかないため、
「おい眠留、テメェと真山に何があったんだ」
「そうだ眠留、白状しやがれ」
猛と京馬に両側から羽交い絞めにされるたび、僕は小声でこう答えていた。
「だってある人の代わりにお礼を言ったとたん、真山が腰を抜かすんだもん」
僕らは六つの瞳で真山をじっと見つめる。真山の顔がみるみる赤くなってゆく。その肩を力強く抱き寄せ、北斗が恒例のセリフを決めた。
「皆、ナイーブな彼をあまりいじらないであげてくれ。じゃあ真山、行こうか」
「「「キャャャァァァ――――!!!!」」」
ツートップイケメンが肩を寄せ合う光景に、女の子たちは天国版の阿鼻叫喚状態となった。いや実際、逞しくとも爽やかさに針が傾く真山と、逞しさと男らしさが鎬を削る北斗が並ぶ様は、男の目にすら華々しく映る。真山と北斗は一年生が誇る、一対の貴公子なのだ。それにあやかるべく、僕と猛と京馬は二人の横に並び、
「「どうも、ありがとうございました~~」」
三バカのトリオ漫才に貴公子二人を巻き込んだ形にして場を収める。教室はもちろん、廊下にも拍手が鳴り響いた。僕ら五人は真山を中心にして、繋いだ手を高々と掲げそれに応える。その左端で僕は今日も、いつもと同じ事をこっそり考えるのだった。
身長の関係で左端になっちゃったけど、どうせなら真山と手を繋ぎたかったなあ、と。
「へ? どこってそりゃあ」
素っ頓狂な声とともに周囲を見渡すや、腰が抜けそうになった。真山を介して神秘的な森の風を感じた僕は、ここが学校で今は昼休みということを、忘れていたのである。
と同時にこの会合の主旨を思い出した僕は、慌てて時計に目を走らせた。今は午後一時十二分。お昼休み終了まで十八分あるが、少なくとも五分前の予鈴に合わせてここを発たねばならぬため、残された時間は十二分強といったところだろう。「鹿の話は二分で終わらせるよ」と宣言し、真山は話を締めくくった。
「おそらく牡鹿は、自分が観ている世界を、俺の脳裏に映したのだろう。俺は、意識と生命力を視覚化した世界にいた。時間を忘れてそれに見入っていると、山裾に大勢の人の光を感じた。離れていても、それが俺の家族と親族であること、そして大人達が期待と興奮に彩られているのを、俺は見て取った。子供には話さなかっただけで、大人達は牡鹿の存在を、知っていたんだね」
牡鹿は山裾の、木立の端ギリギリで真山を下ろし、山へ帰って行った。それ以降一度も出会ったことはないが、気配を知覚する技術が向上するにつれ、牡鹿が残した気配の濃淡を真山は感じ取れるようになっていったと言う。「自主練もしたけど、自主練より女の子を区別する時の方が伸び率は大きかったって言わなきゃ、俺は嘘つきになっちゃうね」 最後にちょっぴりおどけて、真山の話は終わった。深呼吸一回分の感慨を経て、僕は覚悟を胸に本命の問いを投げかける。
「秘密にされているけど、この世界には二通りのAIがいる。己の限界を超えようと自ら決意したAIが、この世界にはいるんだ。意識と生命力を視覚化できる真山は、それを知っていたように思うんだけど、どうかな?」
話の道筋を理解したとき人が放つ光を、真山は放った。ただ真山は光に加えて、風も送ってきた。その風の中で真山は言った。
「去年ようやく、そのAIを感じられるようになったよ。実家のHAIに口止めされているけど、周囲のすべてのAIが際立った輝きを放っている眠留には、話しても構わないだろうね。というか時間が無いから言っちゃうと、その中の一つが、最近急に艶やかな光を放つようになった。新忍道サークルをちょくちょく見学している俺には、バレバレだからね眠留」
「はっ、はい。申し訳ございませんです」
先程の覚悟はどこへやら、僕は条件反射で正座してしまった。そんな僕にクスクス笑い、真山は高速道路をゆくが如く話をビュンビュン進めた。
「新忍道サークルのAIが艶やかさを増していくにつれ、眠留は危惧と、そして決意の波長を出すようになった。だから今朝のメールに、俺は心配してさ。でも教室で会ったらそれらは一掃されていて、モテ男の波長を眠留は纏っていたよ。譬えるなら白銀さんと目を合わせるなり、実技棟で着た新品のモテ服の上にいつものモテ服を重ね着したような、そんな感じかな」
「ひえ~~、どうかそれくらいで勘弁してください~~!」
再度の条件反射で土下座した僕は、冷や汗を垂らしつつ思った。森と人の共生という分野において真山は十年に一人の逸材とされているが、恋愛問題についてはそれどころではない、百年に一人の天才なのではなかろうかと。
そんな僕を置き去りにし、時代を超えた天才は高速道路をフルスロットルで駆け抜けて行った。
「その反応から、眠留は俺の見立てと大差ない状況にいるんだろうね。だから率直に言う。眠留は、そのままでいいからね」
「こ、このままでいいの?」
恐る恐る顔を上げお伺いを立てた僕に、真山は頬を緩めた。それは大地にしっかり根を張る大木の、枝の先端に芽吹いた若葉のような、逞しさと若々しさを兼ね備えた微笑みだった。
「そのままでいいよ。眠留は自分のモテ振りに慢心するタイプじゃないし、悪用するタイプでもないし、氷のように拒絶するタイプでもない。女の子を大切に思うから悩み、気持ちに応えられない苦悩を覚えても、それを女の子に一切見せようとしない。眠留が選ぶのは、正しく強く生きようとする事だけだ。そういう自分になるしか気持ちに応える方法はないと知っているから、眠留は全力でそれに身を投じるんだね。そんな漢へ贈る言葉はこれしかないよ。眠留はそのままでいい、俺は協力を惜しまないからってさ」
嬉しかった。
感動もしていた。
だがこの刹那、僕の心の中心にあるのは、美鈴の兄としての想いだった。
真山は、学年一のモテ男だ。真山へ想いを告げに来た女子生徒は夏休み終了の時点で、四十人を数えたと言う。その場面を目撃したことが僕は一度もないが、その女の子たちに真山がその後どう接し、そして自分をどう律して来たかなら、僕はこの目でずっと見てきた。
『眠留が選ぶのは、正しく強く生きようとする事だけだ。そういう自分になるしか気持ちに応える方法は無いと知っているから、眠留は全力でそれに身を投じるんだね』
これは、真山にこそ当てはまる言葉だった。真山はそれに全力を投じてきたからこそ、逞しくも爽やかな笑顔で、相手をほっこり包むことができる。内も外も最高峰のイケメンが隣にいても、お気に入りの場所で日向ぼっこをしている気分になるのは、真山が自分を律して来た証拠。そう真山こそが、正しく強く生きる努力をし続けた漢の、見本なのだ。
その真山が夏の夕食会で、美鈴に一目惚れした。いや正確には、美鈴の心が形作る気配に、真山は一瞬で虜になった。確かに美鈴は、超の付く容姿に恵まれた美少女だ。だがそれ以上に、超が幾つ付くのか定かでないほど美しい心を、美鈴は持っている。それを、真山は直に観た。女の子を内面で区別する日常を生きてきたからこそ、美鈴の心の美しさを、真山は直接感じることができたのである。
それが、嬉しくない訳がない。感動を呼ばぬ訳がない。僕はこの瞬間まで、兄が妹にしてやれるのは心配する事だけだと考えていた。だが、それは間違いだった。正しく強く生きる努力をし続けることが、廻り廻って妹の幸せにつながる。同じ道をゆく友として真山と尊敬し合うことが、美鈴の幸せを増してくれる。それを僕は今この瞬間、悟ったのだ。
「真山、ありがとう。この件は真山に相談して正解だった。真山に相談する選択をした自分を、僕は誇りに思うよ。美鈴の分も加えてもう一度言わせてくれ。ありがとう、真山・・・ってあれ、おい真山、大丈夫か?」
感謝の言葉の前半部分を、真山は喜びの見本たる笑顔で聴いていた。前半最後では「俺こそ誇りに思うよ」と、今にも口が動きそうになるのを懸命に堪えているのが見て取れる程だった。でも後半に入った途端、真山はヘロヘロになった。美鈴の名が出るなり顔を真っ赤にし、ありがとうの箇所で体を垂直に保てなくなり、真山は溶けかけた雪ダルマの如く、ヘロヘロになってしまったのである。
「なあ真山、そりゃ気持ちは解るし兄として嬉しくもあるけど、予鈴まで時間がないから、少なくとも歩けるようになっておこうよ」
そうだねごめんと唇だけ動かし、かつ大層苦労してお弁当とポットを片付け、真山はよろよろ立ち上がった。真に強靭な足腰を持つ者だけが成しうる、地を這う炎のような真山のドリブルに惚れ込んでいる僕は、真山の前を歩きつついらぬことを口の乗せてしまう。
「真山、メールのやり取りだけじゃダメだ。今度僕が場を設けるから、美鈴と面と向かって話して、美鈴に慣れていこうよ」
ドサッ
後ろから、大きくて柔らかい物がコンクリートに落ちた音が聞こえてきた。目を剥き振り返るも、その音を作り出した張本人のありさまに、僕は大きなため息を付いた。
「あのねえ真山、これくらいで尻餅つかないで。ほら荷物貸して。あと、手」
真山の荷物を受け取り左肩にかけ、僕は右手を差し出す。
真山も右手を差し出し、僕らは手をしっかり握り合った。
初めて握った真山の手、想像していたより大きなその手に、今度はなぜか僕が、顔を赤らめてしまったのだった。
それから暫く、湖校一年生校舎に妙な噂が流れた。それはクリスマス仮装会で、僕と真山がフォークダンスを踊るという噂だった。
それを耳にしても、僕は落ち込まなかった。それどころか、アハハと笑い飛ばすことができた。しょうもない噂は二度目だったので耐性が付いていたし、その噂が生まれた理由も知っていたし、何より真山とならフォークダンスを踊ってもいいと僕自身が考えていたからである。とはいえ最後の一つをペラペラ話すワケにもいかないため、
「おい眠留、テメェと真山に何があったんだ」
「そうだ眠留、白状しやがれ」
猛と京馬に両側から羽交い絞めにされるたび、僕は小声でこう答えていた。
「だってある人の代わりにお礼を言ったとたん、真山が腰を抜かすんだもん」
僕らは六つの瞳で真山をじっと見つめる。真山の顔がみるみる赤くなってゆく。その肩を力強く抱き寄せ、北斗が恒例のセリフを決めた。
「皆、ナイーブな彼をあまりいじらないであげてくれ。じゃあ真山、行こうか」
「「「キャャャァァァ――――!!!!」」」
ツートップイケメンが肩を寄せ合う光景に、女の子たちは天国版の阿鼻叫喚状態となった。いや実際、逞しくとも爽やかさに針が傾く真山と、逞しさと男らしさが鎬を削る北斗が並ぶ様は、男の目にすら華々しく映る。真山と北斗は一年生が誇る、一対の貴公子なのだ。それにあやかるべく、僕と猛と京馬は二人の横に並び、
「「どうも、ありがとうございました~~」」
三バカのトリオ漫才に貴公子二人を巻き込んだ形にして場を収める。教室はもちろん、廊下にも拍手が鳴り響いた。僕ら五人は真山を中心にして、繋いだ手を高々と掲げそれに応える。その左端で僕は今日も、いつもと同じ事をこっそり考えるのだった。
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