ルナ

なにわしぶ子

文字の大きさ
9 / 20

9話~ジュピター~

しおりを挟む



*⋆꒰ঌ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ໒꒱⋆*



「キメラとか施設とか、エンディの話は難しすぎて、私にはさっぱりわからないわ……」


ルナは戸惑いの表情を浮かべながら、施設だという、この緑溢れる大好きな森を改めて見渡しました。



「そんなに怖がらないで?怖がらせる為に話をしたわけじゃないんだ」


「わかっているわ。私もそんなつもりじゃないんだけど、この大好きな森がなんだか、怖く思えてしまって。兎に角、エンディがとても物知りなのはわかった。少し羨ましいな」


「本当に?じゃあ、尚更に、俺の星に行こうよ?ね!ルナ!」


エンディはルナの両手を握りしめると、上下に激しく揺さ振り始めました。そしてルナはされるがままに、困惑の苦笑をひとつしたのでした。


「正直、行ってみたい気持ちはあるけれど……私の小さな2枚羽では、そんなに飛び続けたりは出来ないもの。エンディだって、もうケンタウロスじゃないわ。そもそも、ここから飛びたつ方法がないでしょう?」


ルナは、あしらう様な悲しい微笑みをエンディに向けたあと、クリーム色の空を静かに見上げました。


あの空の向こう側に拡がる【宇宙】という存在。
ルナはその拡がりを抱きしめてみたいと少し思いました。


いつも任務で、画面越しでしか触れる事の出来ない他国の世界。
その世界を、自分のこの皮膚で直接、温度を感じてみたいとそう思いました。


「行ける方法ならあるよ。でなきゃ、話をしたりしない。俺の故郷はね、アースの近くの星なんだ」


「アースなら……シャドに聞いた事があるわ!でも確か、ここからはとても遠かったはずよ?星の名前は何て言うの?」


「ジュピター」


「ジュピター…………?」


ルナは初めて聞く名前のはずなのに、何故か胸の奥から溢れてくる、正体不明の懐かしい感情に襲われ始めていました。








「ルナと一緒じゃなかったのか、マリア」


唐突に背後から話しかけられたマリアは、宮殿の中に流れる小川の中に浸していた手を強ばらせると、ゆっくりと振り向きました。


「えっと……カイネと一緒じゃない?私、カイネに聞いてくる!」


「待ちなさい、聞きにいかずともいい。私こそ今まで、カイネと一緒にいた所なのだから」


ホワイトは、マリアのしどろもどろの表情から全てを悟ると、宮殿の外へと向かって歩き始めました。


「あなた、まさか森に行く気なの?」


声と共に音もなくホワイトの前にパキラが現れたかと思うと、ホワイトに向かって小首をかしげて微笑みかけました。


「ルナを迎えに行くだけだ。そこを通しなさいパキラ」


「ルナ、ルナ、ルナ。あなたは口を開けばルナの事ばかり。ルナは死の包括者、心配等がそもそも無用な存在でしょうに。それとも?そんなに自分がルナにした事を、悔いていらっしゃるのかしら」


パキラの冷たい問いに、ホワイトは答える事はせず、更に宮殿の外へと向かい始めました。


「行ってはいけないわ!ルナの【ベース】が危険な存在なのは、ホワイト……誰よりもあなたがわかっている事でしょう!?ルナは最初から生み出してはいけなかった!葬る事が出来ないなら、離れるしか術はないのに!」


パキラの悲痛な叫び声が宮殿に響き渡り、重々しい空気が空感を覆い尽くしました。


「言われなくともわかっている。だが、それを施すとしてもそこには必ず秩序が伴う。それに、私はルナを生み出した責任がある。私しかこの星を護る事は出来ないのだから」


そんなふたりの切羽詰まった重いやり取りを遮るかの様に、兵士が慌てながら転がる様に走りやってきました。


「申し上げます!ジュピターより入電!至急、ホワイト様とのコンタクトを取りたいとの事にございます!」


ホワイトは眉間をピクリとだけ動かすと、森の方角を暫く見つめました。


「まぁいい……こちらにも考えがある」


ホワイトはくるりと向きを変えると、小川の中のマリアを抱きかかえました。


「怖がらせてすまなかった。さぁ……マリアの出番だ」

「ジュピターかぁ~上手く出来るかわからないけど、ここは第4夫人のマリア様に任せて🎶」


マリアはホワイトにしっかりしがみついたまま、満面の笑顔でそう言いました。


その光景を見送りながら、パキラは大きなため息をつくと、一瞬で青い鳥に変身し、森の方へと羽ばたいていったのでした。



*⋆꒰ঌ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ໒꒱⋆*

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...