ルナ

なにわしぶ子

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19話~移住~

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カイネは目を覚ましゆっくりと起き上がると、急いで周囲を見渡しました。森の入口には、林檎の木々が甘い香りを漂わせているだけで、そこには誰もいませんでした。

「ルナ!!!???」

カイネは慌てて、ルナの名を呼びました。

(私はどうやら、青い鳥から受け取った野苺の実を食べて、そのまま眠ってしまったらしいルナの付き添いで来たというのに、このままではホワイトに何と言ったらいいのか)

カイネは、周囲にルナの姿を求めながら立ち上がりました。

「私はここにずっといるわ?カイネ」

背後からの声にカイネが振り返ると、膝に猫を乗せたルナが花の冠を編みながら、座って微笑んでいました。

「なんだ……驚かせないで?」

カイネは安堵の表情を浮かべると、ルナから猫を受けとり、抱きかかえました。

「ルナ、私が寝てしまっていた間もずっとここに?」

「当たり前じゃない」

「ならいいのだけれど。では、そろそろ戻ろう、ホワイトが心配するから」

「えぇ、わかったわ」

ルナは笑顔で立ち上がると、カイネと宮殿へ戻る事にしました。

身体の動きに合わせて揺れる、ルナの長い金色の髪先には、白い羽が"ひとつ"ついていました。





「申し上げます!何かの妨害により、魂装填が不能状態になった模様!現在、原因を解明中ですが、このままではこの星の爆発回避は不可能、ただちに移住先の決定を!!ホワイト様!!」

慌てて転がり込んで来た家臣は、ホワイトに向かってそう報告をすると、その場でガタガタと震え始めました。

「私が何とかする。今すぐに星のあらゆる生命体をこの宮殿に集結させなさい。爆発の前に、宮殿ごと移住をする」

「宮殿ごと??か、かしこまりました……ところで、移住先の星は一体何処へ……」

「プルートーでかまわない」

「プルートー?………あの銀河系の果ての!?」 



家臣は、身体の震えがいつしか止まり、そしてホワイトの事を、ただ驚愕の眼差しで見つめ続けていました。



「サロンからは一歩も外へ出てはいけないだなんて、いよいよ、この星も終焉の日が近いのかしら。ホワイトは詳細を教えてくれなくて困り者だわ」

アーシャはマリアとふたりきり、ホワイトから強く言われた命に従いながら、不安な気持ちを吐露しました。

「そうねアーシャ、一大事なのかも。でも、ホワイトが何とかしてくれるわよ!」

マリアがツートンの髪の手入れをしながら、平気そうに寛ぐ平和な姿に、アーシャの顔は思わず綻びました。

すると、パキラが悠然とその場に現れ、第1夫人らしく椅子に腰をかけました。

「パキラ、ルナとカイネを知らない?早く戻らないと、心配だわ……」

アーシャがそう尋ねると同時に、カイネとルナもサロンに入ってきました。

「良かったぁ~ルナが一番心配だったの。ホワイトがここから絶対出るなって、その命はもう聞いた??」

マリアは嬉しそうにルナに駆け寄ると、無邪気に身体を預けて、抱きつきました。

「宮殿の入口で家臣達から聞いたわ。そんなに状況はひどいのかしら……」

ルナは森へ行く前とは一変してしまった、その慌ただしい現状に、かなり困惑していました。

「私の"ちから"で星ごと吹き飛ばせば、莫大なエネルギーが入ったのに、ホワイトが変に優しさなんて持った為に、自分の大切な星を失う事になるのよ」

カイネは憤りながらそう言い放つと、パキラの横に座り右手で頬杖をつきました。

「全部私のせいだわ、私がもっと役に立っていたらこんな事にはならなかったのに」

「ルナのせいじゃないわ!早かれ遅かれこうなる運命だったのよ、私もホワイトと同じ、星を消滅させてまで生き残りたくはないわ。その為に生み出されたのに、そのちからを封印されたカイネには悪いけど……」

マリアはカイネに対して申し訳なさ気にしながらも、ルナの事を庇いました。

「有り難うマリア。最悪、宮殿ごと移住すると聞いたけれど……宮殿にケンタウルス達も呼んでくれるのかしら……」

「シャド達には、家臣が声をかけに行ったはずよ?ルナは何も心配いらないわ」

「そう………でも、もし誰か取り残されたりでもしたら………」

ルナの顔はどんどん曇り、心はざわめき始めました。

家臣達は、森の奥のエンディを連れ帰る事はないだろう。ホワイトも3日で尽きると思っているエンディを、この爆発する星に置き去りにするだろう。

「ルナ顔色が悪い。さぁ、私の横に座りなさい」

パキラは優しくルナを自分の傍らに座らせると、耳元でこう囁きました。

「大丈夫、私はルナの味方だから。今はただ大人しくホワイトの命に従いなさい」

ルナは黙ったまま、コクリと頷きました。



ホワイトは誰も居ない広間で、ひとりきりでした。

「過去、現在、未来、その順序すら超越し、護り抜くとここに誓おう。生み出した全てに、その責務を全うしてみせよう」

するとその瞬間、宮殿が大きく激しく揺れ始めました。そしてそれは宮殿を船とした、他の惑星への出港を意味しました。



「キャーーーー!!!」

大きく揺れ始めた宮殿に、夫人達は慌てふためきました。

「移住が始まったんだわ!!」

アーシャは、事態を察知すると窓から外を見ました。マリアとカイネもそれに続き、共に覗き込みました。

するとそこには、今にも浮かび上がりそうな宮殿に向かって、押し寄せてくる、沢山のこの星の生命体達の姿がありました。

「こんな数……みんな乗れるといいのだけれど……」

「ホワイトは優しいもの。きっと待ってくれるわ、ただ動き始めたなら、急いだ方がいいのは間違いないわね」

アーシャとマリアとカイネの3人が、外の景色に夢中になって、交互に感想を述べる姿を確認すると、パキラはそっと、ルナに耳打ちをしました。

「さぁエンディを連れに行っておいで。手遅れになる前に…」

ルナは黙って頷くと、サロンをそっと抜け出したのでした。

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