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初見です。
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初めてだった。
「あ、あの…時間通り来たけど…
なにか…俺に用かな?」
恋愛なんて色恋沙汰も。
告白なんて一大イベントも。
「受け取ってくださいっ…!」
寒空のバレンタイン。
少年少女真っ盛りの二人が人目憚って体育館裏。
「…迷惑ってこと?」
既読放置のタイムライン。
迫る返信カウントダウン。
手前の切れる手札をチェック。
モサっとした身なりに制服。
機転の効かない上がり症。
しかるに
ただの談笑ですら避けられがちの。
当然
俺にスマートな返しはなくて。
クラス圏外の陰キャと誰もが羨むクラスのマドンナ。
今思えばこそ夢物語。
フィクションじみた急展開に浮足だった哀れな男子。
しかしまた、こんなにもオイシイ状況で
かつての俺にブレーキを踏めと説得することも
同様にドダイ無理な話だったんだ。
すうっ
「ありがとう彼女…
ヤミネマコト、君のその情熱に十二分に応えよう…!」
ぴゅうっ
相見える男女の間、
駆け抜けて行く残冬のからっ風。
嗚呼愛しの新約聖書よ…
突拍子もない恋愛描写に呪いあれ。
実用性の無い口説き文句に災いあれ。
自分の口から飛び出たセリフに
照れ照れしながら彼女を見やれば
容姿端麗の社交性が引き剥がれるほどの拒絶反応。
「なん、今の…だっさ。」
まぁ、なんというか。
返事したのは俺なのに
突き返されたのも俺だったのサ。
「あ、た、珠樹さ…」
「ソ!レ!ト!」
麗しの彼女が見上げてくる。
思わず後傾姿勢。心拍、体温上昇。
浮き足立って前後不覚。
ーーー、もっと。
余裕持った態度で応えたいのに。
彼女がその気になったら
こんなにも気分が上気してしまうなんて。
ーーー、こんなの。
ズルい。とても勝てっこない。
「アンタ、今日有ったこと。
私に会ったこと。絶対に他言無用だかんね。
分かるでしょ?クソ陰キャとアタシじゃ
絶対に吊り合わないんだから。」
浮いてると思ったけど
その感覚の正体は殺人的な垂直落下だった。
突如解除される、恍惚じみたエフェクトの
ふわふわきらきらフォトジェニックフィルター。
「なっ…えっ、クソ陰キャ?」
構わず振り向いて立ち去っていく彼女。
コミュ障なのは自覚あるし、
イケメンじゃなけりゃあ、運動も出来ない。
だからこそクラスのコミュニティに
俺一人だけ置き去りだってわかってるんだ。
でも、それだってやっぱりおかしいだろう。
なんだってそんな抉るようなセリフが
珠木さんの口から飛び出すってんだ。
あり得ない、あり得ないんだ。
突然の衝撃に唖然とするピュアボーイ。
その最中。
気がかりなことが一つだけ。
会話の輪からはぐれもののまま、
クラスの動向に聞き耳を立てている日常ゆえに
悪口さえも一文字漏らさず聞き取る
異常発達した俺の聴覚が
彼女の小さなつぶやきを拾いとった。
「シオン様はそんな
ダセェセリフ言わねぇっての…」
これは「半ROM履修済の俺調べ」だけど
シオンってのはイケメン(?)Vtuberで
…なんでも
彼女は声に恋してるらしい。
「あ、あの…時間通り来たけど…
なにか…俺に用かな?」
恋愛なんて色恋沙汰も。
告白なんて一大イベントも。
「受け取ってくださいっ…!」
寒空のバレンタイン。
少年少女真っ盛りの二人が人目憚って体育館裏。
「…迷惑ってこと?」
既読放置のタイムライン。
迫る返信カウントダウン。
手前の切れる手札をチェック。
モサっとした身なりに制服。
機転の効かない上がり症。
しかるに
ただの談笑ですら避けられがちの。
当然
俺にスマートな返しはなくて。
クラス圏外の陰キャと誰もが羨むクラスのマドンナ。
今思えばこそ夢物語。
フィクションじみた急展開に浮足だった哀れな男子。
しかしまた、こんなにもオイシイ状況で
かつての俺にブレーキを踏めと説得することも
同様にドダイ無理な話だったんだ。
すうっ
「ありがとう彼女…
ヤミネマコト、君のその情熱に十二分に応えよう…!」
ぴゅうっ
相見える男女の間、
駆け抜けて行く残冬のからっ風。
嗚呼愛しの新約聖書よ…
突拍子もない恋愛描写に呪いあれ。
実用性の無い口説き文句に災いあれ。
自分の口から飛び出たセリフに
照れ照れしながら彼女を見やれば
容姿端麗の社交性が引き剥がれるほどの拒絶反応。
「なん、今の…だっさ。」
まぁ、なんというか。
返事したのは俺なのに
突き返されたのも俺だったのサ。
「あ、た、珠樹さ…」
「ソ!レ!ト!」
麗しの彼女が見上げてくる。
思わず後傾姿勢。心拍、体温上昇。
浮き足立って前後不覚。
ーーー、もっと。
余裕持った態度で応えたいのに。
彼女がその気になったら
こんなにも気分が上気してしまうなんて。
ーーー、こんなの。
ズルい。とても勝てっこない。
「アンタ、今日有ったこと。
私に会ったこと。絶対に他言無用だかんね。
分かるでしょ?クソ陰キャとアタシじゃ
絶対に吊り合わないんだから。」
浮いてると思ったけど
その感覚の正体は殺人的な垂直落下だった。
突如解除される、恍惚じみたエフェクトの
ふわふわきらきらフォトジェニックフィルター。
「なっ…えっ、クソ陰キャ?」
構わず振り向いて立ち去っていく彼女。
コミュ障なのは自覚あるし、
イケメンじゃなけりゃあ、運動も出来ない。
だからこそクラスのコミュニティに
俺一人だけ置き去りだってわかってるんだ。
でも、それだってやっぱりおかしいだろう。
なんだってそんな抉るようなセリフが
珠木さんの口から飛び出すってんだ。
あり得ない、あり得ないんだ。
突然の衝撃に唖然とするピュアボーイ。
その最中。
気がかりなことが一つだけ。
会話の輪からはぐれもののまま、
クラスの動向に聞き耳を立てている日常ゆえに
悪口さえも一文字漏らさず聞き取る
異常発達した俺の聴覚が
彼女の小さなつぶやきを拾いとった。
「シオン様はそんな
ダセェセリフ言わねぇっての…」
これは「半ROM履修済の俺調べ」だけど
シオンってのはイケメン(?)Vtuberで
…なんでも
彼女は声に恋してるらしい。
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