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お仕事開始
1.
しおりを挟む――翌朝。
朝食の調理をしながら、今日の初出社に対する緊張をなんとか解そうと試みる。
秘書の方々の補助と言うことだから、必然的に役員の方々と顔を合わせることが多いだろうと容易に想像できる。
仕事内容も心配だけど、役員の方々を前に何かとんでもない粗相をしてしまうんじゃないかと、不安でいっぱいだ。
フライパンでベーコンエッグを焼きながら、隣の鍋で野菜スープを塩とコショウで味を調える。
ロールパンとサラダ、焼き上がったベーコンエッグをプレートに盛りつけ、野菜スープを添えたタイミングでコーヒーメーカーがドリップを終えた音が鳴り響いた。
うん、タイミングばっちり。
ダイニングテーブルに配膳し始めると、篠宮さんが寝室から出て来た。
「おはようございます、若月さん。良い匂いですね」
「お、おはようございます。朝食の用意、出来てます」
「うん、ありがとう。とても美味しそうです」
篠宮さんは既に身だしなみを整えていて、ワイシャツにスラックス姿だった。
そう言えば篠宮さんの主寝室には、専用の洗面とバスルームがあるって言ってたな。
バスルームが二つもあるなんて、豪華すぎるマンションだ。
「いつも朝食は召し上がらないと言うことだったので量は少し控えめにしてありますけど……量はこれぐらいで大丈夫ですか?」
「ちょうど良さそうです。気遣ってくれてありがとう」
「いえ、とんでもないです」
「じゃあ、若月さんのお手間入り、いただきます」
優しい微笑みが私に向けられ、思わず赤面しそうになった。
朝から篠宮さんの麗しい微笑みは、とても危険……。
今日の初出勤だけは篠宮さんと一緒に行くことになっていて、そのことを考えると私はますます緊張してきてしまう。
それがあまりにも表情や態度に出ていたのか、篠宮さんは私に「初出社、緊張してますか?」と尋ねた。
「……はい、とても」
「大丈夫、リラックスして。こんなに美味しい朝食を作れる若月さんなら、きっと仕事もちゃんとこなせますよ」
「……はい」
はいと答えたものの、こんな料理のうちにも入りそうにないものが作れたところできちんと仕事をこなすことが出来るとはとても思えなくて、やっぱりどうやったって緊張は解れそうにもなかった。
それに、緊張している理由は仕事だけではない。篠宮さんと朝食を一緒に摂ると言うシチュエーションも、やっぱり緊張する要素しかなくて……。
こんなに味の感じられない朝食を食べたのは初めてだ。
篠宮さんは朝食を食べる仕草も優雅で、私はくらりと眩暈がした――。
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