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嘘の恋人
5.
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車から降り立つ時に手を取った状態のまま、テーマパークの中を歩いて行く。
日曜日なので、園内は家族連れやカップルで賑わっていた。
……私と伊吹さんも、端から見ればあんな風にカップルに見えるのかも知れない。
仕事だなんて思ってみても、繋がれた手から伝わる伊吹さんの手の温もりがどうしても気になってしまって、とても仕事と思い込む事なんて無理だった。
「……なんだか難しい顔をしてるけど、大丈夫? 気分でも悪いですか?」
「えっ? あ、いえ、違います、ごめんなさい大丈夫ですっ。ちょっと、色々考えちゃって……」
「いろいろ……? どうしたの?」
「えっと……」
まさか頭の中で考えていたことを口に出すわけにはいかず、苦笑いするしかなかった。
「大丈夫です、なんでもありません」
「ならいいけど……。今日はデートだから、楽しんで」
「はい」
……罪深い人だ。
デートであるはずなんてないのに。
だって、伊吹さんは――
「寒くない?」
「はい、大丈夫です」
「夜はイルミネーションも綺麗らしいよ」
「そうなんですか? 楽しみです」
――こうして始まった“お仕事デート”。
仕事だと頭では思いながらも、伊吹さんのさり気ない気遣いやちょっとした仕草にさえドキッとしたりキュンとしたりして、やっぱりどうしても仕事だなんて思えてなくて……。
ずっと手を繋いだまま、って言うのも、ドキドキの原因で……。
結局、終始ドキドキきゅんきゅんしっぱなしだった。
「イルミネーション、観覧車から見ると綺麗らしいよ」
伊吹さんに手を引かれ。
帰る間際、最後の最後に乗った観覧車から見たイルミネーションは、私きっと、一生忘れないと思う。
心から好きな人と何かを共有できると言う経験を、私は人生で初めて経験した。
「ほんと、綺麗ですね……」
「……うん、そうだね」
二人きりのゴンドラの中、眼下には色とりどりの光が広がっていて――。
あまりの美しさと、伊吹さんと二人きりというシチュエーションに、なぜか熱いものが込み上げてきて……。
「……結麻さん?」
きっとこれから先、こんな事は起きないんだろうな。
私の人生の中で、誰か異性とこうやって二人きりにで過ごすことなんて、恐らくもう二度と起きたりしないだろう。
一生に一度の経験を、好きな人と――たとえ相手が私を好きではないとしても――出来た事は、とても貴重で、とても嬉しい経験だった。
気付けば、私の頬を涙が伝っていて……。
「結麻さん、どうしたの? 大丈夫?」
「あ……、ごめんなさい、なんでもないです、あまりにも綺麗だから……」
流れる涙のわけを、私はそう言って誤魔化した。
女の子らしくて可愛らしい涙の拭い方なんて、とうの昔に忘れてしまった。
伊吹さんと繋いでいない方の手で、涙を雑に拭う。
涙でぼやけるからますますイルミネーションが美しく感じるんだ、と自分に言い聞かせて。
涙が流れる本当の理由から、目を背けて。
「結麻さん……」
何か言いたげな伊吹さんの声を、遮断して。
こうなる事は覚悟していたはずなのに、やっぱりまだ、何一つ覚悟できていなかったのだと、今更気付いて……。
――そうやって、お仕事であるはずのデートは、涙で幕を閉じた…………。
日曜日なので、園内は家族連れやカップルで賑わっていた。
……私と伊吹さんも、端から見ればあんな風にカップルに見えるのかも知れない。
仕事だなんて思ってみても、繋がれた手から伝わる伊吹さんの手の温もりがどうしても気になってしまって、とても仕事と思い込む事なんて無理だった。
「……なんだか難しい顔をしてるけど、大丈夫? 気分でも悪いですか?」
「えっ? あ、いえ、違います、ごめんなさい大丈夫ですっ。ちょっと、色々考えちゃって……」
「いろいろ……? どうしたの?」
「えっと……」
まさか頭の中で考えていたことを口に出すわけにはいかず、苦笑いするしかなかった。
「大丈夫です、なんでもありません」
「ならいいけど……。今日はデートだから、楽しんで」
「はい」
……罪深い人だ。
デートであるはずなんてないのに。
だって、伊吹さんは――
「寒くない?」
「はい、大丈夫です」
「夜はイルミネーションも綺麗らしいよ」
「そうなんですか? 楽しみです」
――こうして始まった“お仕事デート”。
仕事だと頭では思いながらも、伊吹さんのさり気ない気遣いやちょっとした仕草にさえドキッとしたりキュンとしたりして、やっぱりどうしても仕事だなんて思えてなくて……。
ずっと手を繋いだまま、って言うのも、ドキドキの原因で……。
結局、終始ドキドキきゅんきゅんしっぱなしだった。
「イルミネーション、観覧車から見ると綺麗らしいよ」
伊吹さんに手を引かれ。
帰る間際、最後の最後に乗った観覧車から見たイルミネーションは、私きっと、一生忘れないと思う。
心から好きな人と何かを共有できると言う経験を、私は人生で初めて経験した。
「ほんと、綺麗ですね……」
「……うん、そうだね」
二人きりのゴンドラの中、眼下には色とりどりの光が広がっていて――。
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「……結麻さん?」
きっとこれから先、こんな事は起きないんだろうな。
私の人生の中で、誰か異性とこうやって二人きりにで過ごすことなんて、恐らくもう二度と起きたりしないだろう。
一生に一度の経験を、好きな人と――たとえ相手が私を好きではないとしても――出来た事は、とても貴重で、とても嬉しい経験だった。
気付けば、私の頬を涙が伝っていて……。
「結麻さん、どうしたの? 大丈夫?」
「あ……、ごめんなさい、なんでもないです、あまりにも綺麗だから……」
流れる涙のわけを、私はそう言って誤魔化した。
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伊吹さんと繋いでいない方の手で、涙を雑に拭う。
涙でぼやけるからますますイルミネーションが美しく感じるんだ、と自分に言い聞かせて。
涙が流れる本当の理由から、目を背けて。
「結麻さん……」
何か言いたげな伊吹さんの声を、遮断して。
こうなる事は覚悟していたはずなのに、やっぱりまだ、何一つ覚悟できていなかったのだと、今更気付いて……。
――そうやって、お仕事であるはずのデートは、涙で幕を閉じた…………。
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