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【番外編】伊吹 side
3.
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『伊吹くん、20代女性の出来るような仕事の枠、余ってない?』
和樹さんの電話は、いつも突拍子がない気がする。
彼女との出会いからほぼ一年近く経ったある日、めずらしく和樹さんから電話がかかってきたかと思えば、開口一番、求職の話を振られて……。
「……いきなり何ですか?」
『いや、失業した知人がいてね。ついでに住むところも無くなってしまうらしくて』
「……仕事は和樹さんのお店で面倒見ればいいんじゃないんですか?」
呆れつつそう返すと、和樹さんは『へえ? 良いんだ?』と、なんだか意味深な言葉を返してくる。
「……どう言う意味ですか?」
『結麻さんの働いていた印刷所、会社をたたむことになったらしいよ? ついでに住んでたアパートは取り壊しが決まったそうです』
「は!? どうしてそれを先に言ってくれないんですか!?」
『ははは。焦ってる伊吹くんの声が聞きたかったので』
――ふざけるな。
そう怒鳴ってやろうかと思ったけれど、そんなことを言っている場合ではなかった。
行きつけの店のマスターなんかに相談するぐらいだ、結麻さんはきっととても困っているんだろう。
仕事なら、いまちょうど秘書補佐を探しているところだ。叔父もそれを知っているから俺に声を掛けてきたのだと思う。
叔父の人を見る目は確かだから、彼女にこの仕事を任せることは恐らく全く問題は無いだろう。
あとは、住むところ、か……。
どこかのマンションの一室を紹介することもできるけれど、と思案する。
いや、それは俺が嫌だ。
女性のひとり暮らしとか、どんな危険があるとも知れない。
そんな危険な状況下に彼女を置くなんてことは、絶対に出来ない。
それに……出来ればもう少し近くに――俺の目の届く距離に居て欲しい……。
そんな自分勝手な考えしか頭に浮かばず、そしてそれだけを唯一の答えとしてしまう俺の頭は、少しおかしくなってしまっているのかも知れない。
多少強引ではあるけど、もし彼女が首を縦に振ってくれたなら……。
「和樹さん、お願いがあります」
俺は叔父に頼んで、彼女をカフェに呼び出して貰うことにした――。
*
――コーヒーとは、こんなにもただの苦い飲み物だっただろうか。
そんな風に思うなんて、初めての経験だった。
叔父から電話で相談を受けた翌日の夜、俺はまだ残されている仕事を中抜けしてカフェへと足を運んだ。
彼女へは叔父から連絡が行っているはずだ。
今日の彼女の仕事が何時に終わるかは分からないが、いつもなら夜8時すぎ頃に店に来ることは俺も既に承知済みだ。
今はまだ7時すぎ。彼女が来る時間まで、1時間以上ある。
早く来すぎたことを自覚しているが、もしすれ違いになってしまったらと思うと、早すぎると分かっているくせに、それでも気がせいてしまった。
叔父の和樹さんがからかうような視線をこちらに向けてくるが、無視を決める。
タブレットPCで明日からのスケジュール確認と、簡単な決裁書類に目を通して時間を潰す。
コーヒーを口に運ぶが、やはり苦くて不味い。
いや、叔父の淹れ方に問題があったわけではない、俺の心理的な問題だと理解はしている……。
苦い後味に眉をしかめながら秘書からの業務連絡に目を通していると、店の扉が開き、鈴のような優しく可愛らしい声が耳を掠めた。
和樹さんの電話は、いつも突拍子がない気がする。
彼女との出会いからほぼ一年近く経ったある日、めずらしく和樹さんから電話がかかってきたかと思えば、開口一番、求職の話を振られて……。
「……いきなり何ですか?」
『いや、失業した知人がいてね。ついでに住むところも無くなってしまうらしくて』
「……仕事は和樹さんのお店で面倒見ればいいんじゃないんですか?」
呆れつつそう返すと、和樹さんは『へえ? 良いんだ?』と、なんだか意味深な言葉を返してくる。
「……どう言う意味ですか?」
『結麻さんの働いていた印刷所、会社をたたむことになったらしいよ? ついでに住んでたアパートは取り壊しが決まったそうです』
「は!? どうしてそれを先に言ってくれないんですか!?」
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――ふざけるな。
そう怒鳴ってやろうかと思ったけれど、そんなことを言っている場合ではなかった。
行きつけの店のマスターなんかに相談するぐらいだ、結麻さんはきっととても困っているんだろう。
仕事なら、いまちょうど秘書補佐を探しているところだ。叔父もそれを知っているから俺に声を掛けてきたのだと思う。
叔父の人を見る目は確かだから、彼女にこの仕事を任せることは恐らく全く問題は無いだろう。
あとは、住むところ、か……。
どこかのマンションの一室を紹介することもできるけれど、と思案する。
いや、それは俺が嫌だ。
女性のひとり暮らしとか、どんな危険があるとも知れない。
そんな危険な状況下に彼女を置くなんてことは、絶対に出来ない。
それに……出来ればもう少し近くに――俺の目の届く距離に居て欲しい……。
そんな自分勝手な考えしか頭に浮かばず、そしてそれだけを唯一の答えとしてしまう俺の頭は、少しおかしくなってしまっているのかも知れない。
多少強引ではあるけど、もし彼女が首を縦に振ってくれたなら……。
「和樹さん、お願いがあります」
俺は叔父に頼んで、彼女をカフェに呼び出して貰うことにした――。
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――コーヒーとは、こんなにもただの苦い飲み物だっただろうか。
そんな風に思うなんて、初めての経験だった。
叔父から電話で相談を受けた翌日の夜、俺はまだ残されている仕事を中抜けしてカフェへと足を運んだ。
彼女へは叔父から連絡が行っているはずだ。
今日の彼女の仕事が何時に終わるかは分からないが、いつもなら夜8時すぎ頃に店に来ることは俺も既に承知済みだ。
今はまだ7時すぎ。彼女が来る時間まで、1時間以上ある。
早く来すぎたことを自覚しているが、もしすれ違いになってしまったらと思うと、早すぎると分かっているくせに、それでも気がせいてしまった。
叔父の和樹さんがからかうような視線をこちらに向けてくるが、無視を決める。
タブレットPCで明日からのスケジュール確認と、簡単な決裁書類に目を通して時間を潰す。
コーヒーを口に運ぶが、やはり苦くて不味い。
いや、叔父の淹れ方に問題があったわけではない、俺の心理的な問題だと理解はしている……。
苦い後味に眉をしかめながら秘書からの業務連絡に目を通していると、店の扉が開き、鈴のような優しく可愛らしい声が耳を掠めた。
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