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【番外編】伊吹 side
7.
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どうにかして彼女の心を自分の方に向けたくて、次の手を打つ。
恋人同士の演技を身につけるため、と称して、デートに誘った。
「取引先からテーマパークのチケットをもらったから」と、もっともらしい嘘を吐いて。
いや、全てが嘘なわけではない。チケットをもらったのは、本当だ。
取引先からもらった、と言うところも。
ただ、その出所は『叔父の会社の取引先』で、『叔父からチケットを渡された』というのが真相だ。
どうやって彼女を繋ぎ止めるかと言うことばかり気にかけている俺を見かねて、叔父が「結麻さんをちゃんとデートに誘いなさい」と言ってチケットをくれたのだ。
叔父は今では自他共に認めるかなりの愛妻家だが、元はあの人もプレイボーイだったから、そう言う所は叔父の方が心得ている。
デート当日は、とても楽しく時間が過ぎていった。
手を繋いで歩くのを恥ずかしがる結麻さんはとても可愛くて、何度も抱き締めそうになるのを我慢しなければならなかった。
日が暮れると、ここはイルミネーションで煌めく。
それを観覧車から見るカップルが多いらしい。
二人きりのゴンドラの中、眼下には色とりどりの光が広がっている。
最初は「わぁ、本当に綺麗ですね」と、眼下に広がる美しい光景に感心しきりだった彼女が、いつしか無言になり、次第に肩をふるわせ始めたのが分かった。
「結麻さん……?」
薄暗い中でも、彼女が泣いていることは明らかだった。
声を掛けると、「あまりにも綺麗だから……」と答えたけれど、とてもそんな涙には見えない。
何か、彼女を怖がらせるようなことをしてしまっただろうか……?
不安になったが、彼女が繋いだ俺の手を振りほどく素振りはない。
なんでもないです、と自らの手でギュッと涙を拭う姿に、思わず心が締め付けられる。
もしかすると、彼女の過去と何か関係してるのではないか、と思ってしまったからだ。
まさか、このとき彼女が俺のことで心を痛めていたとは、思いもしない。
俺と従妹の理奈との関係を誤解して流した涙だと知っていれば、この時、抱き締めてあげたのに……。
好きだ、愛してる、と愛を囁いて、抱き締めたのに……。
――あのとき結麻さんの様子がおかしかったから、出来る限り優しく接して、ずっと一緒にいてあげたかったのだが……残念ながらデートの翌日は、取引先との会食が以前からセッティングされていた。
会社の役員としての責務は全うしなければならないから、会食を断ることは出来ない。
料亭や高級レストランでの会食よりも、結麻さんの手作りの夕飯の方が俺にとってはご馳走で、その通り言葉にすると、結麻さんは苦笑いをしていた。
「あれは、信じてない顔だったな……」
「……どうかされましたか?」
会食へ向かう車の中、秘書の笹原が俺の独り言に首を傾げる。
「……いや、なんでもない」
とりあえず、会食が終わってもう一件、となるのをどうやって抜けるかを考えることが先決だ。
俺は社用車の後部座席に身を沈め、何か良い案がないかと思案した――。
恋人同士の演技を身につけるため、と称して、デートに誘った。
「取引先からテーマパークのチケットをもらったから」と、もっともらしい嘘を吐いて。
いや、全てが嘘なわけではない。チケットをもらったのは、本当だ。
取引先からもらった、と言うところも。
ただ、その出所は『叔父の会社の取引先』で、『叔父からチケットを渡された』というのが真相だ。
どうやって彼女を繋ぎ止めるかと言うことばかり気にかけている俺を見かねて、叔父が「結麻さんをちゃんとデートに誘いなさい」と言ってチケットをくれたのだ。
叔父は今では自他共に認めるかなりの愛妻家だが、元はあの人もプレイボーイだったから、そう言う所は叔父の方が心得ている。
デート当日は、とても楽しく時間が過ぎていった。
手を繋いで歩くのを恥ずかしがる結麻さんはとても可愛くて、何度も抱き締めそうになるのを我慢しなければならなかった。
日が暮れると、ここはイルミネーションで煌めく。
それを観覧車から見るカップルが多いらしい。
二人きりのゴンドラの中、眼下には色とりどりの光が広がっている。
最初は「わぁ、本当に綺麗ですね」と、眼下に広がる美しい光景に感心しきりだった彼女が、いつしか無言になり、次第に肩をふるわせ始めたのが分かった。
「結麻さん……?」
薄暗い中でも、彼女が泣いていることは明らかだった。
声を掛けると、「あまりにも綺麗だから……」と答えたけれど、とてもそんな涙には見えない。
何か、彼女を怖がらせるようなことをしてしまっただろうか……?
不安になったが、彼女が繋いだ俺の手を振りほどく素振りはない。
なんでもないです、と自らの手でギュッと涙を拭う姿に、思わず心が締め付けられる。
もしかすると、彼女の過去と何か関係してるのではないか、と思ってしまったからだ。
まさか、このとき彼女が俺のことで心を痛めていたとは、思いもしない。
俺と従妹の理奈との関係を誤解して流した涙だと知っていれば、この時、抱き締めてあげたのに……。
好きだ、愛してる、と愛を囁いて、抱き締めたのに……。
――あのとき結麻さんの様子がおかしかったから、出来る限り優しく接して、ずっと一緒にいてあげたかったのだが……残念ながらデートの翌日は、取引先との会食が以前からセッティングされていた。
会社の役員としての責務は全うしなければならないから、会食を断ることは出来ない。
料亭や高級レストランでの会食よりも、結麻さんの手作りの夕飯の方が俺にとってはご馳走で、その通り言葉にすると、結麻さんは苦笑いをしていた。
「あれは、信じてない顔だったな……」
「……どうかされましたか?」
会食へ向かう車の中、秘書の笹原が俺の独り言に首を傾げる。
「……いや、なんでもない」
とりあえず、会食が終わってもう一件、となるのをどうやって抜けるかを考えることが先決だ。
俺は社用車の後部座席に身を沈め、何か良い案がないかと思案した――。
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