嘘は溺愛のはじまり

海棠桔梗

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【番外編】伊吹 side

13.

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 ――全てが片付いて、結麻さんもやっと落ち着いて眠れるようになったようだ。
 最初は恥ずかしがっていたけれど、最近では最初から俺に抱き締められて眠ることにも少しずつ慣れてきたたらしい。
 恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、嬉しそうな表情をしてくれるようになった。

「結麻さん、おやすみ」

 彼女のなめらかな額に、そっと口づける。
 すると、腕の中の彼女が俺の名を呼んだ。

「ん?」
「あの、……」

 おずおずと顔を上げた彼女の瞳と出会う。

「えっと……」
「うん?」

 俺が顔を覗き込むと、さっきより更に頬を赤く染めていた。

「あの、わたし……」
「なに? まだ、眠くない?」

 結麻さんは俺の言葉に、小さく頷く。

「あの、私、伊吹さんのことは……、こわくないです……」
「うん」
「あの……」

 結麻さんはそれ以上言葉を続けずに、俯いてしまった。
 顔は見えないけれど、耳が真っ赤に染まっているのが見える。

 俺が、彼女に触れたくて仕方がないのは、きっと普段から気づかれているはずだ。
 プロポーズしてからと言うもの、一緒にいる時は常にどこかに触れている。
 手を繋いだり、髪を梳いたり、頬を撫でたり、触れるだけのキスをしたり……。

 結麻さんが嫌がるならやめよう、と思いながら触れている。
 けれども、嫌がるそぶりはなく、時には恥ずかしがりながらも嬉しそうに頬を緩めているから、きっと少しは触れ合うのを楽しんでくれているのだ、とは思っていた。

 俺も健全な成人男性だから、好きな女性を前に、触れるだけでは足りないと思う時もある。
 けれど……。

「本当に、俺のこと、怖くない……?」
「……はい」
「触れても、大丈夫……?」

 さんざん触れておいて、今更の問いかけだが。

「はい、大丈夫です……」
「嫌だと思ったら、言って」
「……分かり、ました」

 優しく、彼女の額に口づける。
 彼女が、小さく息を吐くのが分かった。
 緊張しているのだろうか。

「キスは、嫌じゃない?」
「……はい」

 しっかりと答えを待ってから、彼女の唇に、触れるだけのキスをする。
 俺の気持ちが暴走しすぎてつい先日何度かそれ以上のキスをしてしまったけれど……怖がらせたくないから、なるべく触れるだけの軽いキスしかしないようにしていた。

 けれど、薄く開かれた彼女の唇を見てしまうと、もう、だめだった。

 怖がらせないように、とか、優しく、とか考えていられたのは、最初のうちだけだった。
 彼女の柔らかい唇、滑らかな絹のような肌、暖かい体温に触れてしまえば、たちまち理性など消え失せる。
 恥ずかしそうに両手で顔を隠そうとする腕を、俺は優しく掴んで引きはがした。

「結麻さん、顔、見せて。こっち、見て……」

 囁くと、困ったような表情で俺を見上げる彼女は、とても可愛くて、色っぽくて。
 ああ。
 きっと、いま嫌だと言われても、もう止めることが出来ない。

 ……泣かせたら、ごめん。
 ベッドの中以外では、一生大事にするし泣かせないって誓うから、どうか許して欲しい。
 いっぱいいっぱい愛すから、どうか、許して欲しい。



 嘘から始まった関係だけど、

 これからは本当の愛で包み込んで

 ずっと、きみを、しあわせにするから――。



~ 伊吹 side fin. ~
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