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【番外編】伊吹 side
12.
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それから数日後のことだ。
執務室の電話が鳴った。内線だ。
見覚えのない番号だが、直接かけてくる人間は数少ないうえに、心当たりがあった。
受話器を上げると、俺が声を出す前に、切羽詰まった声が耳に飛び込んでくる。
『奥瀬ですっ! 若月がっ、書庫に、閉じ込められたかも知れませんっ!』
「……どういうことだ!?」
奥瀬は走りながら電話をかけているのだろう、ところどころ声が飛ぶ。
『谷川、部長だと思います、気づいたらいなくて、総務で管理してる鍵も、一本無くてっ』
「……っ」
『いま、書庫に向かってます、出来れば専務も、お願い出来ますか!?』
言われなくても、向かうところだった。
飛び出すように執務室を出ると、笹原が「どうかされましたか?」と驚いていたが、悠長に返事をしている暇はない。
走りながら「結麻さんが書庫に閉じ込められたらしい!」と半ば叫ぶように言うと、背後から「野村さんに鍵をもらっていけ!」と笹原の声が飛んできた。
俺はそれに手を上げるだけで答え、先を急いだ。
野村さんに簡単に事情を話し、書庫へ向かう。
結麻さんのことが心配なのだろう、野村さんも俺の後を追ってきた。
書庫の前に着くと、俺より一足先に駆けつけていた奥瀬が総務部に保管してあったスペアキーで開錠をしたところだった。
奥瀬と俺はお互い無言で書庫へ飛び込む。
どこだ、どこにいる……!?
前を走る奥瀬の後を追う。途中、結麻さんが履いていたはずのパンプスが床に転がっていた。
くそっ! 許せない……!
結麻さんは……書庫の一番奥で、谷川に押し倒されていた。
奥瀬が谷川の服を乱暴に掴んで床に投げ倒す。
許せない、許せない……!
頭が沸騰しそうだった。
顔面蒼白になりながらも起き上がろうとする結麻さんを抱き起こしながら、先ほどこの目で目撃してしまった出来事が映像となって頭の中で再生される。
――谷川に押し倒された彼女は、上半身がほとんど下着姿になっていて……谷川に唇を奪われていた……。
くそっ!!
震える結麻さんをギュッと抱き締める。
間に合わなくて、ごめん。
……声には、ならない……。
ガタガタと震える結麻さんに俺のジャケットをかけ、再び抱き締める。
谷川が「この女が誘ってきたんだっ!!」と叫ぶと、その言葉を否定するように首を何度も横に振りながら……彼女は意識を手放した――。
俺は、谷川を、絶対に許さない――。
緊急役員会議を開き、今回の件を話し合い、あっという間に処分が決まる。
懲戒解雇――当然の処分だ。
手続きなどは他の者に任せ、急いで帰る準備をしているところで、携帯が鳴る。
楓からだった。
『もしもし、伊吹!?』
楓にしては、切羽詰まった声だ。
「どうかしたか? 悪いが、急ぎでないなら後で、」
『結麻ちゃんと、何かあった!?』
「……彼女が、どうかしたのか?」
『街で……ネットカフェの前で見かけて。家出みたいな荷物持ってるし、とりあえず声かけて、』
「いまどこにいる!?」
『和樹さんの店に連れて来てる。迎えに来れる?』
「すぐに行く!」
どうして、そうなった……!?
家まで送ったあと、大人しく寝ていると約束してくれたはずだ。
後のことは笹原と叔父にまかせて、俺は結麻さんの元へと急いだ。
――後で聞いたことだが、このときの電話は、楓からかかってきた。
結麻さんは、俺から楓にかけたと思ったらしい。
真相は……楓が、結麻さんの見ていない間に自らの携帯をタイマーで鳴らし、電話がかかってきたフリをして、店の裏で俺にかけてきた、と言うことだ。
彼女の目の前で俺に電話をすると逃げられると思ったから、らしい。
――ともあれ、結麻さんがどこかへ行ってしまう前に見つけることが出来て、本当に良かった。
理奈との関係もちゃんと説明して誤解を解いた。
これで何もかも、問題は解決した。
結麻さんは、自分が汚れた人間だと思っているらしいが、そんなわけがない。
最も多感な時期に彼女をそんな風に思わせた男が、心の底から憎かった。
そして、今回その考えを助長してしまった谷川も。
結麻さんが汚れているだなんて、そんなわけがない。優しくて、可憐で、とても素敵なひとだ。
心から、愛している。
俺の気持ちを、言葉で、態度で、俺の全てで、信じてもらえるように必死に努力するから。
だからどうか、どうか、俺を拒まないで欲しい……。
執務室の電話が鳴った。内線だ。
見覚えのない番号だが、直接かけてくる人間は数少ないうえに、心当たりがあった。
受話器を上げると、俺が声を出す前に、切羽詰まった声が耳に飛び込んでくる。
『奥瀬ですっ! 若月がっ、書庫に、閉じ込められたかも知れませんっ!』
「……どういうことだ!?」
奥瀬は走りながら電話をかけているのだろう、ところどころ声が飛ぶ。
『谷川、部長だと思います、気づいたらいなくて、総務で管理してる鍵も、一本無くてっ』
「……っ」
『いま、書庫に向かってます、出来れば専務も、お願い出来ますか!?』
言われなくても、向かうところだった。
飛び出すように執務室を出ると、笹原が「どうかされましたか?」と驚いていたが、悠長に返事をしている暇はない。
走りながら「結麻さんが書庫に閉じ込められたらしい!」と半ば叫ぶように言うと、背後から「野村さんに鍵をもらっていけ!」と笹原の声が飛んできた。
俺はそれに手を上げるだけで答え、先を急いだ。
野村さんに簡単に事情を話し、書庫へ向かう。
結麻さんのことが心配なのだろう、野村さんも俺の後を追ってきた。
書庫の前に着くと、俺より一足先に駆けつけていた奥瀬が総務部に保管してあったスペアキーで開錠をしたところだった。
奥瀬と俺はお互い無言で書庫へ飛び込む。
どこだ、どこにいる……!?
前を走る奥瀬の後を追う。途中、結麻さんが履いていたはずのパンプスが床に転がっていた。
くそっ! 許せない……!
結麻さんは……書庫の一番奥で、谷川に押し倒されていた。
奥瀬が谷川の服を乱暴に掴んで床に投げ倒す。
許せない、許せない……!
頭が沸騰しそうだった。
顔面蒼白になりながらも起き上がろうとする結麻さんを抱き起こしながら、先ほどこの目で目撃してしまった出来事が映像となって頭の中で再生される。
――谷川に押し倒された彼女は、上半身がほとんど下着姿になっていて……谷川に唇を奪われていた……。
くそっ!!
震える結麻さんをギュッと抱き締める。
間に合わなくて、ごめん。
……声には、ならない……。
ガタガタと震える結麻さんに俺のジャケットをかけ、再び抱き締める。
谷川が「この女が誘ってきたんだっ!!」と叫ぶと、その言葉を否定するように首を何度も横に振りながら……彼女は意識を手放した――。
俺は、谷川を、絶対に許さない――。
緊急役員会議を開き、今回の件を話し合い、あっという間に処分が決まる。
懲戒解雇――当然の処分だ。
手続きなどは他の者に任せ、急いで帰る準備をしているところで、携帯が鳴る。
楓からだった。
『もしもし、伊吹!?』
楓にしては、切羽詰まった声だ。
「どうかしたか? 悪いが、急ぎでないなら後で、」
『結麻ちゃんと、何かあった!?』
「……彼女が、どうかしたのか?」
『街で……ネットカフェの前で見かけて。家出みたいな荷物持ってるし、とりあえず声かけて、』
「いまどこにいる!?」
『和樹さんの店に連れて来てる。迎えに来れる?』
「すぐに行く!」
どうして、そうなった……!?
家まで送ったあと、大人しく寝ていると約束してくれたはずだ。
後のことは笹原と叔父にまかせて、俺は結麻さんの元へと急いだ。
――後で聞いたことだが、このときの電話は、楓からかかってきた。
結麻さんは、俺から楓にかけたと思ったらしい。
真相は……楓が、結麻さんの見ていない間に自らの携帯をタイマーで鳴らし、電話がかかってきたフリをして、店の裏で俺にかけてきた、と言うことだ。
彼女の目の前で俺に電話をすると逃げられると思ったから、らしい。
――ともあれ、結麻さんがどこかへ行ってしまう前に見つけることが出来て、本当に良かった。
理奈との関係もちゃんと説明して誤解を解いた。
これで何もかも、問題は解決した。
結麻さんは、自分が汚れた人間だと思っているらしいが、そんなわけがない。
最も多感な時期に彼女をそんな風に思わせた男が、心の底から憎かった。
そして、今回その考えを助長してしまった谷川も。
結麻さんが汚れているだなんて、そんなわけがない。優しくて、可憐で、とても素敵なひとだ。
心から、愛している。
俺の気持ちを、言葉で、態度で、俺の全てで、信じてもらえるように必死に努力するから。
だからどうか、どうか、俺を拒まないで欲しい……。
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