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「ごちそうさま」
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お腹の中に入れば問題はない、食べる前に出来る限り元へと戻す作業を開始する。
しっかりと手を合わせて「いただきます」と口ずさんだあと、から揚げへと箸をのばす。がぶりとかじりついたところで、無粋な音が鳴り響いた。スマホの画面を確認すると、やっぱり孝治だ。
お行儀はよろしくないけれども咀嚼しながら通話ボタンを選択する。
「……はい」
もぐもぐしながらだからちゃんと“はい”と聞こえたかどうかは微妙だけど、出ただけありがたいと思って欲しい。
『亜矢!? やっと出た!』
なにその恨みがましそうな言いぐさ、むかつく。言葉にはせず、から揚げと一緒に飲み込む。
「……なに?」
『話がしたい。今からそっち行ってもいいか?』
「は……? いや、ダメに決まってるし」
そもそも朝の電話で“話すことは無い”と言ったはずだし、“来るな”とも言った。それをまるで聞いていなかったかのような振る舞いに、私は思わずイラッとしてしまった。
「孝治、あの子と結婚するんでしょ? 子供も生まれるんだし、元カノなんかに連絡を取ってるって知られたら怒られるよ?」
怒りを抑えてなるべく冷静に、優しさく相手を諫める。本当は罵りたいぐらいだけど、こんなことにカロリーを使いたくない、と、カロリーの塊であるから揚げを前にしながら考える。
カロリーは使うよりも摂取したいのよ、お腹空いてるから。
『……とにかく、会って話したいことがあってさ。仕事はもう落ち着いてるんだろ? て言うか、土日はどうせヒマなんだから、会って話するぐらいいいじゃん!』
「……」
“土日はどうせヒマ”という言葉が癪にさわり、私はムッとして眉間に皺を寄せた。確かにヒマだけど、それをあんたにとがめられる筋合いはないわよ。
持っていた箸をから揚げにグサリと突き刺す。
……いや、食べ物にあたるのは良くないな、ごめんね私のから揚げさん。
『な、今から行っていい?』
「……よくない」
『て言うか、もう部屋の前』
「……はぁ!?」
『開けて』
「やだっ」
『じゃあ叫ぶ』
ねえなんで!? なんでそうなるの!?
「待って! 分かったから、叫ばないでっ! 近所迷惑っ!」
『じゃあ開けて』
「分かったって言ってるじゃないっ。ちょっと待って、すぐ開けるからっ」
から揚げに突き刺したままのお箸を慌てて置いて、私は玄関へと走る。
お弁当、まだほんの少ししか手をつけていなかったのに……。げんなりしながら玄関の鍵を開けた。その音を聞いた孝治が、扉をバッと乱暴に開ける。
「ちょっ、やめてよっ、扉が壊れるっ……!」
「中、入れて」
「もう入ってるじゃん……」
入れて、と言いながらもう完全に玄関内へと入り込んでいて、本当にこの人の神経の図太さには呆れる。
まるで自分の家かのように靴を脱ぎ散らかして部屋へと上がり込む孝治の後ろ姿を見て、私は大きなため息をついた。諦めて私もその後を追う。
「……また弁当?」
「……悪い?」
「相変わらず料理出来ないのか」
「一か月やそこらで急に出来るようになるんだったら苦労しないわよ……」
「まあそうだよな」
ははは、と馬鹿にしたように笑う孝治に、心底イラッとする。
元からそう言うタイプではあったけど、別れてからそう言う所がどうしても鼻につくと言うか、気に入らないと思ってしまう。
しっかりと手を合わせて「いただきます」と口ずさんだあと、から揚げへと箸をのばす。がぶりとかじりついたところで、無粋な音が鳴り響いた。スマホの画面を確認すると、やっぱり孝治だ。
お行儀はよろしくないけれども咀嚼しながら通話ボタンを選択する。
「……はい」
もぐもぐしながらだからちゃんと“はい”と聞こえたかどうかは微妙だけど、出ただけありがたいと思って欲しい。
『亜矢!? やっと出た!』
なにその恨みがましそうな言いぐさ、むかつく。言葉にはせず、から揚げと一緒に飲み込む。
「……なに?」
『話がしたい。今からそっち行ってもいいか?』
「は……? いや、ダメに決まってるし」
そもそも朝の電話で“話すことは無い”と言ったはずだし、“来るな”とも言った。それをまるで聞いていなかったかのような振る舞いに、私は思わずイラッとしてしまった。
「孝治、あの子と結婚するんでしょ? 子供も生まれるんだし、元カノなんかに連絡を取ってるって知られたら怒られるよ?」
怒りを抑えてなるべく冷静に、優しさく相手を諫める。本当は罵りたいぐらいだけど、こんなことにカロリーを使いたくない、と、カロリーの塊であるから揚げを前にしながら考える。
カロリーは使うよりも摂取したいのよ、お腹空いてるから。
『……とにかく、会って話したいことがあってさ。仕事はもう落ち着いてるんだろ? て言うか、土日はどうせヒマなんだから、会って話するぐらいいいじゃん!』
「……」
“土日はどうせヒマ”という言葉が癪にさわり、私はムッとして眉間に皺を寄せた。確かにヒマだけど、それをあんたにとがめられる筋合いはないわよ。
持っていた箸をから揚げにグサリと突き刺す。
……いや、食べ物にあたるのは良くないな、ごめんね私のから揚げさん。
『な、今から行っていい?』
「……よくない」
『て言うか、もう部屋の前』
「……はぁ!?」
『開けて』
「やだっ」
『じゃあ叫ぶ』
ねえなんで!? なんでそうなるの!?
「待って! 分かったから、叫ばないでっ! 近所迷惑っ!」
『じゃあ開けて』
「分かったって言ってるじゃないっ。ちょっと待って、すぐ開けるからっ」
から揚げに突き刺したままのお箸を慌てて置いて、私は玄関へと走る。
お弁当、まだほんの少ししか手をつけていなかったのに……。げんなりしながら玄関の鍵を開けた。その音を聞いた孝治が、扉をバッと乱暴に開ける。
「ちょっ、やめてよっ、扉が壊れるっ……!」
「中、入れて」
「もう入ってるじゃん……」
入れて、と言いながらもう完全に玄関内へと入り込んでいて、本当にこの人の神経の図太さには呆れる。
まるで自分の家かのように靴を脱ぎ散らかして部屋へと上がり込む孝治の後ろ姿を見て、私は大きなため息をついた。諦めて私もその後を追う。
「……また弁当?」
「……悪い?」
「相変わらず料理出来ないのか」
「一か月やそこらで急に出来るようになるんだったら苦労しないわよ……」
「まあそうだよな」
ははは、と馬鹿にしたように笑う孝治に、心底イラッとする。
元からそう言うタイプではあったけど、別れてからそう言う所がどうしても鼻につくと言うか、気に入らないと思ってしまう。
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